ノンフィクション

岡本裕一朗 『哲学の世界へようこそ。: 答えのない時代を生きるための思考法』(ポプラ社)レビュー

哲学の世界へようこそ。: 答えのない時代を生きるための思考法作者:裕一朗, 岡本発売日: 2019/11/14メディア: 単行本 高校生・大学生用のテキストという扱いであれば、こんなものかなあ、とも思うけれども。最初のコピペの話でアタマにでっかく「❔」の文字が…

永江朗『私は本屋が好きでした──あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏』(太郎次郎社エディタス )レビュー

私は本屋が好きでした──あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏作者:永江朗出版社/メーカー: 太郎次郎社エディタス発売日: 2019/11/25メディア: 単行本(ソフトカバー) この国に敷かれる独特というか異様な書籍販売制度である再販委託制――返品支払い付…

大野正人『失敗図鑑 すごい人ほどダメだった!』(文響社 )レビュー

失敗図鑑 すごい人ほどダメだった!作者:大野 正人出版社/メーカー: 文響社発売日: 2018/04/27メディア: 単行本(ソフトカバー) 夜明け前が一番昏い状況がずーっと続いているポンニチで、年明けに読んでなぐさめになるかなあ。ひとえにレイアウトのおかげで…

堀内進之介『善意という暴力』(幻冬舎新書)レビュー

善意という暴力 (幻冬舎新書)作者:堀内 進之介出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2019/09/26メディア: 新書 アマゾンのレビューは辛いけど、社会批評としては、テクノロジカルな現在に対して抱かざるを得ないモヤモヤ感を、コンパクトに、文章で剔抉した印象で…

小須田健 『哲学の解剖図鑑』(エクスナレッジ)

哲学の解剖図鑑作者: 小須田健出版社/メーカー: エクスナレッジ発売日: 2019/10/09メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 久しぶりに思想カタログ本に手を出したけれども、まずは愉しめた。キーワードの選択や取り上げる思想家の選定は熟慮された気配…

藤井青銅『「日本の伝統」という幻想』( 柏書房)

「日本の伝統」という幻想作者: 藤井青銅出版社/メーカー: 柏書房発売日: 2018/11/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 前作『「日本の伝統」の正体』の続編的体裁で、世にはびこる「伝統ビジネス」と「伝統マウンティング」の真実を抉り出…

クリス松村『「誰にも書けない」アイドル論』 (小学館新書)

「誰にも書けない」アイドル論 (小学館新書 213)作者: クリス松村出版社/メーカー: 小学館発売日: 2014/08/01メディア: 新書この商品を含むブログ (3件) を見る アイドル関連の本だと、近年の名著だなあ、とつくづく。アイドル「冬の時代」前の80年代アイ…

大塚英志『感情天皇論 』 (ちくま新書)レビュー

感情天皇論 (ちくま新書)作者: 大塚英志出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2019/04/05メディア: 新書この商品を含むブログを見る 著者の久々の文芸批評ということで、なかなかの手応え、はある。平成天皇をめぐる文学者たちの屈託を剔出する手際は、著者独自…

武田砂鉄 最果タヒほか『平成遺産』(淡交社)レビュー

平成遺産作者: 武田砂鉄,最果タヒ,みうらじゅん,ブレイディみかこ,栗原康,田房永子,川添愛,川島小鳥出版社/メーカー: 淡交社発売日: 2019/02/19メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る リベラル左派系論者を中心にした「平成」をめぐる…

大塚英志『大政翼賛会のメディアミックス 「翼賛一家」と参加するファシズム』(平凡社)レビュー

大政翼賛会のメディアミックス:「翼賛一家」と参加するファシズム作者: 大塚英志出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2018/12/11メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る 久々に読む大塚英志のサブカル批評・研究本だが、この「メデ…

芦辺拓『少年少女のためのミステリー超入門 』(岩崎書店)レビュー

少年少女のためのミステリー超入門作者: 芦辺拓出版社/メーカー: 岩崎書店発売日: 2018/11/09メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る いいっすねえ。芦辺拓くらいになるとミステリ愛好家を超えて、ミステリ文化伝承者といったような格…

『新潮45 2018年10月号 』 (新潮社)レビュー

新潮45 2018年10月号出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2018/09/18メディア: 雑誌この商品を含むブログ (4件) を見る 廃刊じゃなかった休刊決まってご愁傷様。まあ呆れたっていうかね。品位に欠けたエッセーを掲載せざるを得ないほど、汲々としていたっていう…

『このミステリーがすごい! 2018年版』 (宝島社) レビュー

このミステリーがすごい! 2018年版作者: 『このミステリーがすごい!』編集部出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2017/12/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 今年はあのゾンビミステリーの年ではなく、陳浩基『13・67』の年でしょ、やっ…

柄谷行人『憲法の無意識』 (岩波新書) レビュー

憲法の無意識 (岩波新書)作者: 柄谷行人出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2016/04/21メディア: 新書この商品を含むブログ (13件) を見る 柄谷さんの本を久しぶりに読んだけれども、おおむね当たっていると思うんですよ。精神分析的アプローチは、巨視的な政…

菅野完『日本会議の研究』 (扶桑社新書) レビュー

日本会議の研究 (扶桑社新書)作者: 菅野完出版社/メーカー: 扶桑社発売日: 2016/04/30メディア: 新書この商品を含むブログ (53件) を見る 参議院選挙まえに、読んでおきたい本だよねえ。日本会議という宗教右派と右派系各種団体のアソシエーションが、現政権…

岡本裕一朗『フランス現代思想史 - 構造主義からデリダ以後へ 』 (中公新書) レビュー

フランス現代思想史 - 構造主義からデリダ以後へ (中公新書)作者: 岡本裕一朗出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2015/01/23メディア: 新書この商品を含むブログ (24件) を見る 中公新書でフランクフルターの来歴を閲したと思ったら、今度はフランスの「…

村井俊治『地震は必ず予測できる! 』 (集英社新書) レビュー

地震は必ず予測できる! (集英社新書)作者: 村井俊治出版社/メーカー: 集英社発売日: 2015/01/16メディア: 新書この商品を含むブログ (4件) を見る いやあ、ここまで説得的だったとは。最初、著者の開発した地震「予測」の方法を週刊誌で見たとき、半信半疑だ…

角岡伸彦 西岡研介 ほか 『百田尚樹『殉愛』の真実 』 (宝島社)レビュー

百田尚樹『殉愛』の真実作者: 角岡伸彦,西岡研介,家鋪渡,宝島「殉愛騒動」取材班出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2015/02/23メディア: 単行本この商品を含むブログ (17件) を見る 読んだ読んだ。まあ、近年稀に見るスキャンダル・ノンフィクションだろうね。…

細見和之『フランクフルト学派 -ホルクハイマー、アドルノから21世紀の「批判理論」へ 』 (中公新書) レビュー

フランクフルト学派 -ホルクハイマー、アドルノから21世紀の「批判理論」へ (中公新書)作者: 細見和之出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2014/10/24メディア: 新書この商品を含むブログ (22件) を見る 思ってみれば、「フランクフルト学派」の入門書って…

早野龍五 糸井重里『知ろうとすること。 』 (新潮文庫)レビュー

知ろうとすること。 (新潮文庫)作者: 早野龍五,糸井重里出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2014/09/27メディア: 文庫この商品を含むブログ (32件) を見る ぼくは、じぶんが参考にする意見としては、「よりスキャンダラスでないほう」を選びます。「より脅かし…

大屋雄裕『自由か、さもなくば幸福か? 二一世紀の〈あり得べき社会〉を問う』(筑摩選書)レビュー

自由か、さもなくば幸福か?: 二一世紀の〈あり得べき社会〉を問う (筑摩選書)作者: 大屋雄裕出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2014/03/12メディア: 単行本この商品を含むブログ (47件) を見る 前作『自由とは何か』から七年、続編ともいうべき著作がやっと…

坪内祐三『昭和の子供だ君たちも』(新潮社)レビュー

昭和の子供だ君たちも作者: 坪内祐三出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2014/01/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (11件) を見る 著者にしては、意気軒昂な「世代論」宣言である。終戦(敗戦)や日共の路線転換など、時代を画する象徴的な“出来事”をいか…

佐藤健志『僕たちは戦後史を知らない――日本の「敗戦」は4回繰り返された』(祥伝社)レビュー

僕たちは戦後史を知らない――日本の「敗戦」は4回繰り返された作者: 佐藤健志出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2013/12/04メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (4件) を見る ついこの前までは、この国を言い様のない逼塞感が覆っていたよう…

加藤典洋 高橋源一郎 『吉本隆明がぼくたちに遺したもの 』(岩波書店)レビュー

吉本隆明がぼくたちに遺したもの作者: 加藤典洋,高橋源一郎出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2013/05/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る 高橋は詩作家としての像から、吉本思想にアプローチして、加藤は思想家としての像から、それをす…

大澤真幸『生権力の思想 事件から読み解く現代社会の転換』(ちくま新書)レビュー

生権力の思想―事件から読み解く現代社会の転換 (ちくま新書)作者: 大澤真幸出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2013/02/01メディア: 新書購入: 1人 クリック: 11回この商品を含むブログ (23件) を見る 著者の3・11後のリアクションには、かなり失望したの…

一ノ瀬正樹『放射能問題に立ち向かう哲学』(筑摩選書)レビュー

放射能問題に立ち向かう哲学 (筑摩選書)作者: 一ノ瀬正樹出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2013/01/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 561回この商品を含むブログ (9件) を見る 3・11は、紛れもなく戦後日本の未曾有の大災害だった。短期的には、広…

浅羽通明『時間ループ物語論』(洋泉社)レビュー

時間ループ物語論作者: 浅羽通明出版社/メーカー: 洋泉社発売日: 2012/10/25メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 4人 クリック: 152回この商品を含むブログ (32件) を見る 一読、たぶん現在における保守側の批評の最も洗練されたもののひとつに数えられ上…

吉本隆明『吉本隆明が最後に遺した三十万字〈上巻〉「吉本隆明、自著を語る」』(ロッキングオン)レビュー

吉本隆明が最後に遺した三十万字〈上巻〉「吉本隆明、自著を語る」作者: 吉本隆明出版社/メーカー: ロッキングオン発売日: 2012/12/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 22回この商品を含むブログ (7件) を見る 渋谷陽一インタビューによる『SIGHT』連載…

ブランコ・ミラノヴィッチ『不平等について―― 経済学と統計が語る26の話』(みすず書房)レビュー

不平等について―― 経済学と統計が語る26の話作者: ブランコ・ミラノヴィッチ,村上彩出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2012/11/23メディア: 単行本 クリック: 8回この商品を含むブログ (11件) を見る 世界の「不平等」を考察するのに、著者は三つのパース…

野崎六助『山田風太郎・降臨 忍法帖と明治伝奇小説以前』(青弓社)レビュー

山田風太郎・降臨―忍法帖と明治伝奇小説以前作者: 野崎六助出版社/メーカー: 青弓社発売日: 2012/07メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (2件) を見る 大著『日本探偵小説論』の姉妹編と言ってもいいだろう。前著では、植民地主義…