作者名ア行

大山誠一郎『ワトソン力』(光文社)レビュー

ワトソン力作者:大山誠一郎発売日: 2020/09/16メディア: 単行本(ソフトカバー) 本格ミステリ大賞の候補作にはならなかったけれども、ギャグ設定のミステリファースとして、なかなかの冴えを見せる。最後の大団円的な話で、名探偵とは厄介な余剰物に過ぎな…

芦辺拓『鶴屋南北の殺人 』(原書房)レビュー

鶴屋南北の殺人 (ミステリー・リーグ)作者:拓, 芦辺発売日: 2020/06/17メディア: 単行本<br> 相も変らぬ語り口で安心できる、というか。ヒール役を躊躇なく戯画的に描くのはもはや“作風”っていうしかないのだろうなあ、と思いつつ。ひねりすぎて結末がよく分から…

市川憂人『揺籠のアディポクル』(講談社)レビュー

揺籠のアディポクル作者:市川 憂人発売日: 2020/10/14メディア: 単行本 いやあこの作者のストレートなサスペンスが読みたかった。期待にたがわぬ秀作。まあ当然ギミックは仕掛けられているけれども、主旋律は心理サスペンスだ。最後の幕切れも、泣かせるし。…

阿津川辰海『透明人間は密室に潜む』(光文社)レビュー

透明人間は密室に潜む作者:阿津川 辰海発売日: 2020/04/21メディア: 単行本(ソフトカバー) 本格ミステリベスト10で、トップをとった短編集。だけれども、ピンとこなかったなあ、どうも。表題作と3番目のお話はGJ。2番目のパロディは、まあオタクを描…

岡本学『アウア・エイジ(our age) 』(講談社)レビュー

アウア・エイジ(our age)作者:岡本 学発売日: 2020/07/31メディア: 単行本 たまたま読んだ芥川賞候補作、面白かった。言葉遊びからの発想だろうが、主題性がなんだか70年代っぽいニオイがして、なかなかオツなもので。実存的に低回する人生と、ミステリー…

青柳碧人『むかしむかしあるところに、死体がありました。』(双葉社)レビュー

むかしむかしあるところに、死体がありました。作者:青柳 碧人発売日: 2019/04/17メディア: 単行本(ソフトカバー) そりゃ面白く詠みましたけれども、紀伊国屋書店方面は大丈夫なのか(笑)。まあSFミステリっぽくなるよね、という期待通りの一寸法師と浦島…

石持浅海『殺し屋、続けてます。』(文藝春秋)レビュー

殺し屋、続けてます。作者:浅海, 石持発売日: 2019/10/23メディア: 単行本 ライバルの殺し屋が出てくるのには、どうにもトボけたニュアンスが出てきてるような気がするけれども。シチュエーションにツイストを利かせたのが都筑道夫っぽくなってる「死者を殺…

相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠』(講談社)レビュー

medium 霊媒探偵城塚翡翠作者:相沢 沙呼出版社/メーカー: 講談社発売日: 2019/09/12メディア: 単行本(ソフトカバー) 今年のいちばんに選出された作品だよ。これはナットクした。作者は細かなミスディレクションに、濃やかなロジックを積み重ねる作風だと思…

歌野晶午『間宵の母』(双葉社)レビュー

間宵の母作者:歌野 晶午出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2019/11/20メディア: 単行本 むははは。この作品が30周年記念作だったら、いかにもこの作者らしいじゃん。なんか最近この作者のものにはゴミゲスなキャラしか出てこない印象があって、この作品もそ…

安萬純一『滅びの掟――密室忍法帖』(南雲堂)レビュー

滅びの掟――密室忍法帖作者: 安萬純一出版社/メーカー: 南雲堂発売日: 2019/06/01メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 基本的にヘンなものを期待してたような気がする。読んでみたら、結構マトモだった。いや、忍法帖だからやっぱりヘンか。まあ奇人…

内村光良『ふたたび蝉の声』(小学館)レビュー

ふたたび蝉の声作者: 内村光良出版社/メーカー: 小学館発売日: 2019/03/01メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 内村光良は“小説”というものに対して、オーソドックスで堅牢な意識を持っている。太田光のようにソフィスティケートの端的な失敗に気づ…

上田岳弘『ニムロッド』(講談社)

第160回芥川賞受賞 ニムロッド作者: 上田岳弘出版社/メーカー: 講談社発売日: 2019/01/26メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 面白い面白い。まああらかじめ見積もった以上の物語的展開はなかったけれど、こういう時代の、ありうべき『全裸監督』み…

太田忠司『道化師の退場』(祥伝社)レビュー

道化師の退場作者: 太田忠司出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2019/07/11メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 途中までクリスティーっぽいって思ったんですよ。作者はナラティブのなかに伏線やら何やら仕込むの上手いってこともあるし。人間心理の襞…

芦原すなお『ハムレット殺人事件』(東京創元社)レビュー

ハムレット殺人事件 (創元クライム・クラブ)作者: 芦原すなお出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/03/11メディア: 単行本この商品を含むブログを見る まあ、ゆるーいミステリーだけれども、語り口のなめらかさと奇抜なナゾ設定で許せる。ひとを喰ったハ…

有栖川有栖『こうして誰もいなくなった』(KADOKAWA)レビュー

こうして誰もいなくなった作者: 有栖川有栖出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2019/03/06メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 作者はこれまでにもバラエティを重視した作品集を出してきたけれども、芸達者ぶりを示していたことはそうなのだが、むし…

伊藤たかみ『ぼくらのセイキマツ』(理論社)レビュー

ぼくらのセイキマツ作者: 伊藤たかみ出版社/メーカー: 理論社発売日: 2019/04/16メディア: 単行本この商品を含むブログを見る やっぱり凡百のコドモダマシ作家と違って、文章の息遣いの上手いこと巧いこと。ゆるやかに主人公たちを襲う焦燥感と停滞感。世間…

今村昌弘『魔眼の匣の殺人』(東京創元社)レビュー

魔眼の匣の殺人作者: 今村昌弘出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/02/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見る いやー、バカウケのデビュー作より、数段こっちのほうがいいっすよ。新本格の異世界路線の久々の特大ホームラン。まあ、〇〇殺人を…

鵜林伸也『ネクスト・ギグ』(東京創元社)レビュー

ネクスト・ギグ (ミステリ・フロンティア)作者: 鵜林伸也出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/10/31メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る昨年評判を得たデビュー作。サブカルをテーマにした作品は、総じて深く掘ったものになればなるほど…

青崎有吾『早朝始発の殺風景 』(集英社)レビュー

早朝始発の殺風景 (単行本)作者: 青崎有吾出版社/メーカー: 集英社発売日: 2019/01/04メディア: 単行本この商品を含むブログを見る オーソドックスな青春ミステリの佳品五編と、蛇足だったエピローグ。いやねえ、余計なもん付け足して判じ物にしなくてもねえ…

伊吹亜門 『刀と傘  明治京洛推理帖 』(東京創元社)レビュー

刀と傘 (明治京洛推理帖) (ミステリ・フロンティア)作者: 伊吹亜門出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/11/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 歴史ミステリーの異色作だが、文章はこなれていて読みやすく、歴史ものに縁遠い読者にも…

阿津川辰海『星詠師の記憶』(光文社)レビュー

星詠師の記憶作者: 阿津川辰海出版社/メーカー: 光文社発売日: 2018/10/17メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る<br> どうも若手の書く異世界系本格が苦手になってきている。異世界構築を本格ミステリ的興味でやるのはいいけれども…

岡崎琢磨『夏を取り戻す』(東京創元社)レビュー

夏を取り戻す (ミステリ・フロンティア)作者: 岡崎琢磨出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/09/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 作者の作品はあまり読んでないけれど、本作は作者のポテンシャルを示し得た、というのとはまた違う…

石持浅海『崖の上で踊る』(PHP研究所)レビュー

崖の上で踊る作者: 石持浅海出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2018/10/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 作者が執拗に描き続けるインナーサークルを、古典的な政治図式である敵/味方のロジックに蹂躙させてみせた怪作。謎解きが消去…

大倉崇裕『死神刑事』(幻冬舎)レビュー

死神刑事作者: 大倉崇裕出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2018/09/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る 面白く読める。設定の印象の強さとは裏腹に、個々の物語の展開はバラエティに富んでいて、作者の面目躍如といったところだが、器用に話…

我孫子武丸『凜の弦音』(光文社)レビュー

凜の弦音作者: 我孫子武丸出版社/メーカー: 光文社発売日: 2018/10/17メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る おお、こういうものも描くのね、と新鮮な感じ。日常の謎系の結構に成長小説がごく自然に絡まっているので、弓道に詳…

大山誠一郎『アリバイ崩し承ります』(実業之日本社)レビュー

アリバイ崩し承ります作者: 大山誠一郎出版社/メーカー: 実業之日本社発売日: 2018/09/07メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る 上質の推理コント集。アリバイ崩しテーマで全編統一しているが、バリエーションの拡がりには限界…

大倉崇裕『琴乃木山荘の不思議事件簿』(山と渓谷社)レビュー

琴乃木山荘の不思議事件簿作者: 大倉崇裕出版社/メーカー: 山と渓谷社発売日: 2018/06/16メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る 福家警部補が不完全燃焼気味だったのが、こっちで意外にも本格スピリットを満喫。山岳ミステリ短…

市川憂人『グラスバードは還らない』(東京創元社)レビュー

グラスバードは還らない作者: 市川憂人出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/09/12メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る やや狷介な雰囲気を漂わせる作風だが、重層的な構成の意表を突く展開、畳み掛けるような逆転劇が、息を吞むほどの出…

芦辺拓『帝都探偵大戦 』(東京創元社)レビュー

帝都探偵大戦 (創元クライム・クラブ)作者: 芦辺拓出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/08/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 論創ミステリ叢書のユーザーへのボーナスみたいなコンセプトだなあ。でも、いたずらに長いもんにならな…

大倉崇裕『福家警部補の考察』(東京創元社)レビュー

福家警部補の考察 (創元クライム・クラブ)作者: 大倉崇裕出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/05/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る シリーズ第五弾でもコロンボオマージュの空気感は相変わらずだが、どうにもワキ役が冴えないね。…