作者名カ行

城戸喜由『暗黒残酷監獄』(光文社)レビュー

暗黒残酷監獄作者:城戸 喜由発売日: 2020/02/19メディア: 単行本 賛否両論の受賞作、というんで、やや気合い入れて読んだりしたくなるが、基本的には脱力系ミステリにカテゴライズされるべきもの。オフビートでテンションやや低、といった感じの作品で、この…

小林泰三『ティンカー・ベル殺し』(東京創元社)レビュー

ティンカー・ベル殺し (創元クライム・クラブ)作者:小林 泰三発売日: 2020/06/30メディア: 単行本 陽気な健忘症の殺人鬼ピーターパンに翻弄される例の宇宙だけれども、現実世界の設定もさらにややこしいものになっていて、どれだけの人がついてこられるのか…

北野武『北野武第一短篇集  純、文学 』(河出書房新社)レビュー

北野武第一短篇集 純、文学作者:北野武発売日: 2019/10/18メディア: 単行本 まあ基本的に北野翁が小説書いてますますわけのわからなさを追求してくれれば満足っす。この本は、漫才と落語の延長線上にあるようなお話を集めたものだけれども、このナラティブの…

呉勝浩『スワン』(講談社)レビュー

スワン作者:呉 勝浩出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2019/10/31メディア: 単行本 力作だと思うが、空回り感もまた強い。冒頭のショッキングな殺戮の活写は伏線を仕込んだものとして必要、だというエクスキューズがだだ漏れで、これで読者の嗜虐的満足にア…

鯨統一郎『三つのアリバイ 女子大生 桜川東子の推理 』(光文社)レビュー

三つのアリバイ 女子大生 桜川東子の推理作者:鯨統一郎出版社/メーカー: 光文社発売日: 2019/11/19メディア: 単行本(ソフトカバー) とうとう終わってしまったこのシリーズ。最後は一応長編だけれども、まあ一連のシリーズの大団円だよね。まあもっと義賊っ…

鯨統一郎『テレビドラマよ永遠に 女子大生 桜川東子の推理 』(光文社)レビュー

テレビドラマよ永遠に 女子大生 桜川東子の推理作者:鯨 統一郎出版社/メーカー: 光文社発売日: 2019/10/22メディア: 単行本(ソフトカバー) うーん、シリーズ完結直前作、っていっても、このシリーズにグランドフィナーレを求めているわけではないんだけれ…

霞流一『パズラクション 』(原書房)レビュー

パズラクション (ミステリー・リーグ)作者: 霞流一出版社/メーカー: 原書房発売日: 2018/08/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る これぞ正真正銘のアンチミステリっていっていいものやら。作者の作風であるいかがわしさがキャラ造型レベル…

川澄浩平『探偵は教室にいない』(東京創元社)レビュー

探偵は教室にいない作者: 川澄浩平出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/10/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 前回のゾンビ小説が大ウケしたあとの今回なもんだから、マトモなだけじゃインパクト弱状態なところへ、中坊の日常の謎っ…

倉知淳『ドッペルゲンガーの銃』(文藝春秋)レビュー

ドッペルゲンガーの銃作者: 倉知淳出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2018/09/13メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 同じ版元の前の名探偵キャラ片桐大三郎と比べると、かえってインパクトが小さい、と思えるのは、やっぱり印象が薄いからか…

近藤史恵『わたしの本の空白は 』(角川春樹事務所)レビュー

わたしの本の空白は作者: 近藤史恵出版社/メーカー: 角川春樹事務所発売日: 2018/05/11メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (4件) を見る 記憶喪失モノの定番のストーリー展開を、ラブストーリーに重ね合わせるところまでは多くの書き手が…

小林泰三『ドロシイ殺し』(東京創元社)レビュー

ドロシイ殺し (創元クライム・クラブ)作者: 小林泰三出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/04/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る もうここまでくると、作者の目論見が奈辺にあるのか、凡人にはわかりにくくなるわけで。SFミステリ…

倉知淳『豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件 』(実業之日本社)レビュー

豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件作者: 倉知淳出版社/メーカー: 実業之日本社発売日: 2018/03/28メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (3件) を見る 前作『皇帝と拳銃と』より、作者の持ち味が凝縮されたような短編集だが、それだけ本…

近藤史恵『インフルエンス』(文藝春秋)レビュー

インフルエンス作者: 近藤史恵出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2017/11/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 作者らしい、というのと、作者でなくても、というのと、その中間の地点でカタルシスを得た気分。関係性の生々しさを剔出する手…

貴志 祐介『ミステリークロック 』(KADOKAWA)レビュー

ミステリークロック作者: 貴志祐介出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2017/10/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る まあ年一作の長編を楽しみにする作家はいくらかあれど、年一作の中短編を楽しみにされるのは、このシリーズぐらいしかない…

倉知淳『皇帝と拳銃と』(東京創元社)レビュー

皇帝と拳銃と作者: 倉知淳出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2017/11/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 前作『片桐大三郎とXYZの悲劇』のインパクトと巧緻さには及んでないが、作者の期待値を満足させてくれる出来かな。まあ、倒叙…

川瀬 七緒『フォークロアの鍵』(講談社)レビュー

フォークロアの鍵作者: 川瀬七緒出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/05/17メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (5件) を見る 作者の伝奇ミステリ的展開を期待しているわけだが、新作はなんと介護民俗学を正面に見据えたものだった。認知…

近藤史恵『マカロンはマカロン』(東京創元社)レビュー

マカロンはマカロン (創元クライム・クラブ)作者: 近藤史恵出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2016/12/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る 今年の推協賞を竹本健治が取り損ねてしまったが、まあホントにしょーもないと思うわなあ、推協…

北村薫『遠い唇』(KADOKAWA)レビュー

遠い唇作者: 北村薫出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2016/09/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る “名探偵”巫弓彦が再び読める一編を掉尾に、作者の語り口が、ユーモアやリリシズムに違和感なく変位していく諸相を鑑みることのできる短編…

鯨統一郎『女子大生桜川東子の推理 ベルサイユの秘密』(光文社)レビュー

女子大生桜川東子の推理 ベルサイユの秘密作者: 鯨統一郎出版社/メーカー: 光文社発売日: 2016/08/17メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る このシリーズにはついつい手が出てしまうなあ。今回はヅカっすか。でも、脱線の仕方…

鏑木蓮『炎罪』(講談社)レビュー

炎罪作者: 鏑木蓮出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/05/25メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 作者のデビュー十周年記念作というPRだが、読み応えはある。作者の作風から、サスペンス・スリラーといってもこういう味付けにな…

谺健二『ケムール・ミステリー 』(原書房)レビュー

ケムール・ミステリー (ミステリー・リーグ)作者: 谺健二出版社/メーカー: 原書房発売日: 2016/03/25メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る お久しぶりの作者の作品。奇想系ファボにとっては、十分愉しめる。実在の特撮アーティストの遺した幻…

小林泰三『クララ殺し』(東京創元社)レビュー

クララ殺し (創元クライム・クラブ)作者: 小林泰三出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2016/06/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見る 前作がああいう感じであるだけに、本作はこういう感じかな、と思ったりするわけだが、そうであるだけに…

近藤史恵『スティグマータ 』(新潮社)レビュー

スティグマータ作者: 近藤史恵出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2016/06/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る シリーズの新作だが、フィジカルなニュアンスはこの作者独特の手触りで、透明感を湛える一種シュールな領域へ昇華されていて、心…

呉 勝浩『蜃気楼の犬』(講談社)レビュー

蜃気楼の犬作者: 呉勝浩出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/05/31メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 刑事小説の連作短編集だが、冒頭の話と、まとめの話がサスペンスフルでよろしい。ただ、作者にとって、警察小説的行き方が、…

近藤史恵『モップの精は旅に出る』(実業之日本社)レビュー

モップの精は旅に出る作者: 近藤史恵出版社/メーカー: 実業之日本社発売日: 2016/04/15メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (3件) を見る シリーズ最終作ということだが、足掛け二十年近くやってたのか。作者の出世作でもないし、梨園もの…

倉知淳『片桐大三郎とXYZの悲劇』(文藝春秋)レビュー

片桐大三郎とXYZの悲劇作者: 倉知淳出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2015/09/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る どうもこの作者が、ユーモラスな作風にもかかわらず、狷介な印象を受けてしまうのは、やっぱり寡作なのがいけないのかし…

河合莞爾『救済のゲーム』(新潮社)レビュー

救済のゲーム作者: 河合莞爾出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2015/06/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 推薦文を寄せているのが本格プロパーの人ではないので、本格ファンには訴求していないのかもしれないが、物語性と構築性を兼ね備え…

呉勝浩『道徳の時間』(講談社)レビュー

道徳の時間作者: 呉勝浩出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/08/05メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 今年の乱歩賞は、選評を見る限り低調なようだったが、受賞作である本作は、個人的には満足する方。おそらくは、ミステリーとしてユニー…

神谷一心『たとえ、世界に背いても』(講談社)レビュー

たとえ、世界に背いても作者: 神谷一心出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/05/13メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る 今年の福ミスも一定の満足感を得られた。カタストロフィ・サスペンスとでもいうべきか、それとも、史上…

小島正樹『浜中刑事の妄想と檄運』(南雲堂)レビュー

浜中刑事の妄想と檄運 (本格ミステリー・ワールド・スペシャル)作者: 小島正樹出版社/メーカー: 南雲堂発売日: 2015/04/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る ミステリアス8 アクロバット9 サスペンス8 アレゴリカル7 インプレッション…