作者名サ行

斜線堂有紀 『楽園とは探偵の不在なり』(早川書房)レビュー

楽園とは探偵の不在なり作者:斜線堂 有紀発売日: 2020/08/20メディア: 単行本 絵解きの場面でややアンフェアな記述があるけれども、全体的に愉しく読めた。まあ、なんといっても、天使が遊泳するこのセカイで炸裂する超おバカトリックで悶絶できる感性がある…

櫻田智也『蝉かえる』(東京創元社)レビュー

蝉かえる (ミステリ・フロンティア)作者:櫻田 智也発売日: 2020/07/13メディア: 単行本<br> 2冊目で打ち止めっぽくなってる。別にわざわざ泡坂妻夫を引き合いに出さんでも、ねえ。一番最後の話が、作者の本質の部分を表しているのだと思うけれども、これとかそ…

下村敦史『絶声』(集英社)レビュー

絶声作者:下村 敦史発売日: 2019/08/05メディア: 単行本<br> やられたーホームランって感じだ。主人公の相続コンゲームの押しかけバディとなる借金取りは最初から出した方がいいし、そもそもブログという装置は必要なのかとも思うけれど、数ある不満も単純明快な…

島本理生『ファーストラヴ』(文藝春秋)レビュー

ファーストラヴ作者: 島本理生出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2018/05/31メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 若くして取り立てられた感のある作者だけれども、直木賞受賞するまでは例によって散々焦らされた。受賞作である本作は、確かに…

島田荘司『鳥居の密室  世界にただひとりのサンタクロース 』(新潮社)レビュー

鳥居の密室: 世界にただひとりのサンタクロース作者: 島田荘司出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2018/08/31メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 今年の御大からのクリスマスストーリーは、密室事件として帰結した、この社会の片隅の善意の行く…

下村敦史『黙過』(徳間書店)レビュー

黙過 (文芸書)作者: 下村敦史出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2018/04/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 貪欲なまでに作風の幅を拡げて、快進撃を続ける作者だが、本作もメディカル・サスペンスの意欲的な力作で、本業の医師たちが数…

櫻田智也『サーチライトと誘蛾灯 』(東京創元社)レビュー

サーチライトと誘蛾灯 (ミステリ・フロンティア)作者: 櫻田智也出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2017/11/13メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 泡坂妻夫エピゴーネンの衣装を纏っているようだが、むしろそこからはみ出たリリカルな部分…

白河三兎『他に好きな人がいるから』(祥伝社)レビュー

他に好きな人がいるから作者: 白河三兎出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2017/10/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 独自の作風、というより、どうも作者のセンスが奈辺を目指してるのか、今一つ掴みにくい感じがある。ある種のモラトリア…

佐藤究『Ank: a mirroring ape 』(講談社)レビュー

Ank: a mirroring ape作者: 佐藤究出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/08/23メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 乱歩賞受賞第一作は、『ジェノサイド』よりも数段オモロイ、バイオロジカル・サスペンス。まあ、こういう小説は個人的にツボ…

佐藤正午『月の満ち欠け』(岩波書店)レビュー

月の満ち欠け作者: 佐藤正午出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2017/04/06メディア: 単行本この商品を含むブログ (27件) を見る そりゃ小説上手い人が、時空間を意のままに転換させて、ドラマツルギーの構築性に傾注してるんだから、そのスリリングさにクラ…

下村敦史『告白の余白』(幻冬舎)レビュー

告白の余白作者: 下村敦史出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2016/11/23メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 作者に心理ミステリ的傾向があるのは特に近年の作品に顕著だが、本作はその路線を純化したといえるかも。スリリングではあるのだけれ…

柴田よしき『青光の街(ブルーライト・タウン) 』(早川書房)レビュー

青光の街(ブルーライト・タウン) (ハヤカワ・ミステリワールド)作者: 柴田よしき出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/10/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 作者のものを久しぶりに読んだが、いやあよかったね。やっぱり底力がある。…

下村敦史『失踪者』(講談社)レビュー

失踪者作者: 下村敦史出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/09/14メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 前作に引き続いて、山岳ミステリながら、フィジカルな要素のなかに心理的アプローチがミステリ的核心を占める。本作が山岳小説ファンの意…

佐藤究『QJKJQ』(講談社)レビュー

QJKJQ作者: 佐藤究出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/08/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る 本年の乱歩賞はよかったよー。純文学畑からの越境組ということもあって、妙な自意識を見せつけられるのではないかと思いきや、ギミック構築…

菅原和也『ブラッド・アンド・チョコレート 』(東京創元社)レビュー

ブラッド・アンド・チョコレート (ミステリ・フロンティア)作者: 菅原和也出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2016/04/21メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 作者の前作までの作風と比べると、見慣れた本格ミステリ感が漂いとっつきやすいが、後半…

島田荘司『屋上の道化たち 』(講談社)レビュー

屋上の道化たち作者: 島田荘司出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/04/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 記念すべきシリーズ50作目は、島田印の奇想本格というより、落語家島田亭の滑稽噺大独演会とでも言い表したい内容。ファース的…

下村敦史『真実の檻』(KADOKAWA)レビュー

真実の檻作者: 下村敦史出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2016/03/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 司法制度をめぐるサスペンスだが、話が直線的に進まないのは、もともと連作短編として構成されたからだという。物語の緩急…

白井智之『東京結合人間』(KADOKAWA)レビュー

東京結合人間作者: 白井智之出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2015/09/30メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 昨年の評判作で、かなりグロい設定がウリというバイアスがいつの間にかかけられてしまっているようだが、実際読めば、知的アク…

島田荘司『新しい十五匹のネズミのフライ ジョン・H・ワトソンの冒険 』(新潮社)レビュー

新しい十五匹のネズミのフライ: ジョン・H・ワトソンの冒険作者: 島田荘司出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2015/09/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る パスティーシュというより、島田印の19世紀英国小説が、小説をストレートに目指し…

下村敦史『生還者』(講談社)レビュー

生還者作者: 下村敦史出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/07/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (13件) を見る 山岳ミステリはツボではないので、どんなもんかと探るように読み始めたが、いやきっちりとミステリとしての構築性を堪能できて大満足。…

彩藤アザミ『サナキの森』(新潮社)レビュー

サナキの森作者: 彩藤アザミ出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2015/01/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル38 新潮ミステリー大賞初回の受賞作は…

周木律『アールダーの方舟』(新潮社)レビュー

アールダーの方舟作者: 周木律出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2014/12/18メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 作者の持っているカードが、小説の雰囲気作りに全面的に貢献したのだろう。PR文の「壮大な」前フリにしては、タイトにまとまっ…

下村敦史『叛徒』(講談社)レビュー

叛徒作者: 下村敦史出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/01/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 近年の乱歩賞受賞作のなかでも高評を得たデビュー作よりインターバルを短くして受賞後第一作が出たのが嬉しい。内容は警察小説というより、…

佐藤正午『鳩の撃退法  上・下 』(小学館)レビュー

鳩の撃退法 上作者: 佐藤正午出版社/メーカー: 小学館発売日: 2014/11/13メディア: 単行本この商品を含むブログ (17件) を見る鳩の撃退法 下作者: 佐藤正午出版社/メーカー: 小学館発売日: 2014/11/13メディア: 単行本この商品を含むブログ (15件) を見る メ…

島田荘司『幻肢』(文藝春秋)レビュー

幻肢作者: 島田荘司出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2014/08/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る この作者の読者としては、満足する小説でした。改めて思うのは、小説の構築性における、プロットと各シチュエーション、物語と各表象の絡…

獅子宮敏彦『アジアン・ミステリー』(南雲堂)レビュー

本日のエピグラフ 「(…)本格マニアなら、勿論、シャーロック・ホームズは読んでいるんだろう?」/(…)/「全部は読んでいません。有名なものだけです」/(…)/「なにしろ、あの時代のイギリスは苦手でして――」(p.37) アジアン・ミステリー (本格ミステリー・…

真保裕一『ダブル・フォールト』(集英社)レビュー

ダブル・フォールト作者: 真保裕一出版社/メーカー: 集英社発売日: 2014/10/03メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る リーガル・サスペンスだけれども、語り口がいい。主人公の人物造形に飄々としたニュアンスを保たせて、彼に意想外の状況に遭…

菅原和也『柩の中の狂騒』(KADOKAWA)レビュー

柩の中の狂騒 (単行本)作者: 菅原和也出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2014/08/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る ワタクシ的にはOK。クローズド・サークルテーマが、作者のやりたかったことと微妙に齟齬をきたしているのは…

下村敦史『闇に香る嘘』(講談社)レビュー

闇に香る嘘作者: 下村敦史出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/08/06メディア: 単行本この商品を含むブログ (24件) を見る 近年の乱歩賞受賞作の中では、出色の出来映え。有栖川有栖の評価通りの秀作だ。近年、乱歩賞をはじめとする公募新人賞の候補作に、…

翔田寛『探偵工女 富岡製糸場の密室』(講談社)レビュー

探偵工女 富岡製糸場の密室作者: 翔田寛出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/08/05メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る 作者がこういうのを書くのは、ナットク。できたら、連作短編集で読みたかったなあ、作者の初期作品を…