作者名ハ行

平石貴樹『立待岬の鷗が見ていた』(光文社)レビュー

立待岬の鷗が見ていた作者:貴樹, 平石発売日: 2020/07/17メディア: 単行本(ソフトカバー) このシリーズ前作はちょっと取っつき悪くてダメだったけれども、本作はツボった。作中作的な扱いのミステリー作家の小説のプロットは愉しめたし、いい具合に手が込…

深水黎一郎 『詩人の恋』(KADOKAWA)レビュー

詩人の恋作者:深水 黎一郎発売日: 2020/09/30メディア: 単行本 面白かったけれども、この名曲の絵解きにこういう物語構成は必要だったかは、ちょっと。絵解きの内容をもっと体現するような物語があっても、というか。作者にはある程度のシニカルな趣を期待し…

方丈貴恵『時空旅行者の砂時計 』(東京創元社)レビュー

時空旅行者の砂時計作者:方丈 貴恵出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/10/11メディア: 単行本 令和元年の鮎哲賞。SF的設定をトリックに直結させて開き直っている印象なのが心地よい。ただやっぱり小説作りは生硬な感じだな。ロマンティックに終わら…

深木章子『極上の罠をあなたに』(KADOKAWA)レビュー

極上の罠をあなたに作者:深木 章子出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2019/09/30メディア: 単行本 作者が初めて挑むピカレスクロマンだが、当然一筋縄ではいかない。ウラ社会のカラクリが、便利屋を狂言回しに、輻輳するギミックとして読者に提示されるが、…

東川篤哉『伊勢佐木町探偵ブルース』(祥伝社)レビュー

伊勢佐木町探偵ブルース作者: 東川篤哉出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2019/08/08メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る ハードボイルドまであともう一歩どころか千里の径庭があるとは思うが、堂々たるユーモアミステリーであること…

東川篤哉『ハッピーアワーは終わらない: かがやき荘西荻探偵局』(新潮社)レビュー

ハッピーアワーは終わらない: かがやき荘西荻探偵局作者: 東川篤哉出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2019/06/19メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る コンスタントにユーモアミステリを発表してくれるありがたさ。結果的に短編多作で…

藤崎翔『指名手配作家』(双葉社)レビュー

指名手配作家作者: 藤崎翔出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2019/04/17メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る ハイスミス的皮肉な展開が主軸だけれども、シリアスな傾斜を見せるより、主人公たちの欺瞞が、小市民的な空気感を漂わせて…

ビートたけし『フランス座』(文藝春秋)レビュー

フランス座作者: ビートたけし出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2018/12/12メディア: 単行本この商品を含むブログを見る デビュー以前のころを描く自伝的小説。まあ、たけしの抱くニヒリズムのかたちがほんのり見える。思うに、“父”の役割を代行した感のあ…

堀内公太郎『タイトルはそこにある』(東京創元社)レビュー

タイトルはそこにある (ミステリ・フロンティア)作者: 堀内公太郎出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/05/31メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る どうもキワモノめいたタイトルの作品ばかり刊行しているようで興味が湧かなかったが、創…

降田天『すみれ屋敷の罪人』(宝島社)レビュー

すみれ屋敷の罪人 (『このミス』大賞シリーズ)作者: 降田天出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2018/12/07メディア: 単行本この商品を含むブログを見る デビュー作はつまらなそうな梗概だったのでスルーしたけれども、いつのまにか短編で推協賞を受賞したという…

原 りょう『それまでの明日』(早川書房)レビュー

それまでの明日作者: 原りょう出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/02/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (15件) を見る なんだか今になってもなお、作者にはチャンドラーの亡霊がつきまとっているのだなあ、とPR文をみて切なくなった。寡作なだ…

林 泰広『分かったで済むなら、名探偵はいらない 』(光文社)レビュー

分かったで済むなら、名探偵はいらない作者: 林泰広出版社/メーカー: 光文社発売日: 2017/12/14メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (3件) を見る 東川篤哉、石持浅海と同期の作者の、まあとにかく再デビューとでもいうべき作品。 凝らし…

樋口有介『平凡な革命家の食卓』(祥伝社)レビュー

平凡な革命家の食卓作者: 樋口有介出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2018/04/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る ケーサツ小説を作者らしくシニカルに料理すれば、こんな感じになる、という期待値は裏切らない。作者らしい軽妙さと裏腹の不…

深水黎一郎 『虚像のアラベスク』(KADOKAWA)レビュー

虚像のアラベスク作者: 深水黎一郎出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2018/03/02メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 作者のスノビズム的アプローチが、絢爛さと叙情を湛えたものになるか、それとも虚像のハレーションが炸裂する道程を露わに…

はやみねかおる『奇譚ルーム』(光文社)レビュー

奇譚ルーム作者: はやみねかおる,しきみ出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2018/03/15メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 一応PRにはヤングアダルト向けとあるのだが、一般向けの体裁でも良かったのではないかな。直観的に物語の方向…

早坂吝『ドローン探偵と世界の終わりの館 』(文藝春秋)レビュー

ドローン探偵と世界の終わりの館作者: 早坂吝出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2017/07/12メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る ははは。まあ後腐れのないイッパツネタの爽快感というかね。作者みたいな作風には、説教臭くなってほしくないん…

東川篤哉『探偵さえいなければ』(光文社)レビュー

探偵さえいなければ作者: 東川篤哉出版社/メーカー: 光文社発売日: 2017/06/16メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (7件) を見る ザッツ「本籍地」な烏賊川市シリーズ、あらゐけいいちのカバー絵も過不足ない待望の新作集は、探偵小説的カ…

深水黎一郎 『ストラディヴァリウスを上手に盗む方法』(河出書房新社)レビュー

ストラディヴァリウスを上手に盗む方法作者: 深水黎一郎出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2017/05/17メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る バラエティに富んだ短編集、といわなきゃならんか。表題作の中編は、堂々としたトリック本格で、…

藤田宜永『探偵・竹花 女神』(光文社)レビュー

探偵・竹花 女神作者: 藤田宜永出版社/メーカー: 光文社発売日: 2016/02/18メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る 作者に対して思うのは、枯れた境地とは無縁な素振りを目指したいのかも、ということで、本作にしても、もっとタイトに仕上げる…

樋口有介『少女の時間』(東京創元社)レビュー

少女の時間 (創元クライム・クラブ)作者: 樋口有介出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2016/01/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 草平シリーズ最新作だけれども、『カノマホ』の頃と、いささかも語り口がズレてないよねえ。懐かしさを…

深緑野分『戦場のコックたち』(東京創元社)レビュー

戦場のコックたち作者: 深緑野分出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2015/08/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (28件) を見る 今年のベストテンで高評価を得た力作で、連作短編系ミステリーの袋小路を、全面的に暴力性が覆う世界に埋め込むことで、…

初野晴『惑星カロン』(KADOKAWA)レビュー

惑星カロン作者: 初野晴出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2015/09/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (12件) を見る アニメ化の決まったこのシリーズだけれども、実は作者にとってまだ大団円に向けて遅延させたい意識があるのかな、とも。作…

藤崎翔『私情対談』(KADOKAWA)レビュー

私情対談作者: 藤崎翔出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2015/06/27メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 横溝賞受賞後第一作は、期待に応えたと思う。対談記事と連作短編形式の合わせ技は、予断を許さぬサスペンスを十分醸成している。ブラ…

深水黎一郎『ミステリー・アリーナ』(原書房)レビュー

ミステリー・アリーナ (ミステリー・リーグ)作者: 深水黎一郎出版社/メーカー: 原書房発売日: 2015/06/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (11件) を見る なんか、ミステリーの“作者”が、自分以外のあらゆるアクターに対して、悪態をついているような小…

藤田宜永『探偵・竹花  帰り来ぬ青春』(双葉社)レビュー

探偵・竹花 帰り来ぬ青春作者: 藤田宜永出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2015/01/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 今回の竹花は、ハイカラな香りがしてよいです。このシリーズは、ハードボイルドの様式美を追求する関心よりも、主人公…

本城雅人『誉れ高き勇敢なブルーよ』(東京創元社)レビュー

誉れ高き勇敢なブルーよ作者: 本城雅人出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2014/10/14メディア: 単行本この商品を含むブログを見る サッカーというスポーツ・ビジネスの内幕を、タイムリミットの範型を採用して、スリラー仕立てで描いた。門外漢にもページ…

本城雅人『サイレントステップ』(新潮社)レビュー

サイレントステップ作者: 本城雅人出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2014/07/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る 作者が競馬界を舞台にするのは二度目だけれども、本作は主人公の騎手の内面と、彼が抱える状況の進展が、絡まりあって予断を…

法条遥『忘却のレーテ』(新潮社)レビュー

忘却のレーテ作者: 法条遥出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2014/07/22メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 特異な設定、あるガジェットをギミックの始点においた、SF的ニュアンス漂うサイコ・スリラー。終盤で畳みかけられるロジックに、意表を突…

東川篤哉『純喫茶「一服堂」の四季』(講談社)レビュー

純喫茶「一服堂」の四季作者: 東川篤哉出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/10/09メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (10件) を見る あれ、もしや講談社から上梓するのは初めてなのかしらん。メフィストを意識したようなバカトリックが…

深水黎一郎『大癋見(おおべしみ)警部の事件簿』(光文社)レビュー

大癋見(おおべしみ)警部の事件簿作者: 深水黎一郎出版社/メーカー: 光文社発売日: 2014/09/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る 21世紀本格のハナシが、面白かった。ネタのイジリ方における身の窶し方に余裕があるのかヤ…