作者名マ行

深木章子『欺瞞の殺意』(原書房)レビュー

欺瞞の殺意 (ミステリー・リーグ)作者:章子, 深木発売日: 2020/02/15メディア: 単行本 本格ミステリファンのための殺人、とでもいうべきか。こういうプロットだったら、いっそのこと、ふたりとも推理作家にしちゃえばよかったのに。いや女の方だけでいいか。…

森谷明子『涼子点景1964』(双葉社)レビュー

涼子点景1964作者:森谷 明子発売日: 2020/01/21メディア: 単行本(ソフトカバー) ヒロインが一種の道化役となるような短編連作かと思いきや、物語の構成にギミックを仕掛けるというのでなく、当時の階級社会の齟齬と蹉跌を、真正面から描きたかったのだなあ…

町屋良平『1R1分34秒』(新潮社)レビュー

第160回芥川賞受賞 1R1分34秒作者: 町屋良平出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2019/01/25メディア: 単行本この商品を含むブログを見る なんかボクシングのお話なのに、売れない演劇青年の独白を読んでるみたいだったよ。でも身体レベルでの逼塞感が、じわじわ…

三津田信三『白魔の塔』(文藝春秋)レビュー

白魔の塔作者: 三津田信三出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2019/04/12メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 作者の語り口にするすると引き込まれる。怪談の語り部としてもはや揺るがない地位にあると思うが、虚仮威しではない平明な叙述で、そこに…

松嶋智左『貌のない貌 梓凪子の捜査報告書 』(講談社)レビュー

貌のない貌 梓凪子の捜査報告書作者: 松嶋智左出版社/メーカー: 講談社発売日: 2019/03/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 福ミス受賞後第一作で、主人公の前職の警察官時代を描く。新米刑事の奮闘をストレートに描いているので、受賞作よりもア…

道尾秀介『スケルトン・キー』(KADOKAWA)レビュー

スケルトン・キー作者: 道尾秀介出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2018/07/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 作者の作品群の中では、もっとも伊坂幸太郎的な小説世界に、寓話的に接近した印象。従来の作者の小説の手ざわりは活きている…

松嶋智左 『虚の聖域 梓凪子の調査報告書 』(講談社)レビュー

虚の聖域 梓凪子の調査報告書作者: 松嶋智左出版社/メーカー: 講談社発売日: 2018/05/17メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 今年の福ミス受賞作は快作だ(イヤな話だけれども)。PI小説のオーソドキシーに則って手堅く仕上げている印象が…

深木章子『消えた断章 』(光文社)レビュー

消えた断章作者: 深木章子出版社/メーカー: 光文社発売日: 2018/03/15メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る 退職刑事&仁木兄妹的な設定で、ロスマク的テーマにアプローチしたような凝った物語だが、本格ミステリ的プロットは…

三津田信三『碆霊の如き祀るもの 』(原書房)レビュー

碆霊の如き祀るもの (ミステリー・リーグ)作者: 三津田信三出版社/メーカー: 原書房発売日: 2018/06/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 三年ぶりのシリーズ新作もまた、何ともいかがわしい設定が目を見張る。読者の鼻っ面を取って引きず…

道尾秀介『風神の手』(朝日新聞出版)レビュー

風神の手作者: 道尾秀介出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2018/01/04メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る ミステリー的興味よりも、作者の物語作家としての構築性を堪能するつもりで読んだ方が、期待を裏切られないと思う。語り口は悠揚…

麻耶雄嵩『友達以上探偵未満』(KADOKAWA)レビュー

友達以上探偵未満作者: 麻耶雄嵩出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2018/03/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 若い本格の書き手たちが、ラノベ方面に媚を売りつつアイロニカルなギミック構築に力を入れてるの見て、マジメ感漂うほど少な…

深木章子『消人屋敷の殺人』(新潮社)レビュー

消人屋敷の殺人作者: 深木章子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2017/10/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る オレ的真打である作者の新作は、ギミックを全面的に凝らした快作にして怪作。舞台設定と趣向に凝り過ぎて空回り全開の若手のもの…

水沢秋生『俺たちはそれを奇跡と呼ぶのかもしれない』(光文社)レビュー

俺たちはそれを奇跡と呼ぶのかもしれない作者: 水沢秋生出版社/メーカー: 光文社発売日: 2017/07/19メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 初見の作者。主人公の意識が、不可解な事件の当事者たちの身体に次々と転移していくという設…

道尾秀介 『満月の泥枕』(毎日新聞出版)レビュー

満月の泥枕作者: 道尾秀介出版社/メーカー: 毎日新聞出版発売日: 2017/06/08メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る むむむ、作者はなんだ、もしかして伊集院静とかそういう方向性で行こうとしてるのかなあ。いや小説が上手いから、スルスル読め…

水生大海 『だからあなたは殺される』(光文社)レビュー

だからあなたは殺される作者: 水生大海出版社/メーカー: 光文社発売日: 2017/02/16メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (4件) を見る 冒頭、この作者はわざわざケーサツ小説に手を染めなくていいのに、と思ったが、あれよあれよという間に…

深木章子『猫には推理がよく似合う 』(KADOKAWA)レビュー

猫には推理がよく似合う作者: 深木章子出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2016/09/02メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 技巧派の作者の濃やかさと大胆不敵さを味わえるが、まあなんともチャーミングな感じに仕上げたものである。…

三津田信三『黒面の狐 』(文藝春秋)レビュー

黒面の狐作者: 三津田信三出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2016/09/13メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 作者の新シリーズか、今までの本のなかで出てきたキャラのスピンアウトか判断つかないが、作者のミステリ的アプローチの濃密さを堪…

道尾秀介『スタフ staph』(文藝春秋)レビュー

スタフ staph作者: 道尾秀介出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2016/07/13メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 作者の得意とする群像劇だが、今回の手触りは前作のような湿った感じはせず、やや楽しく読めるか。皮をむくように真相が詳らかに…

松本英哉『僕のアバターが斬殺ったのか』(光文社)レビュー

僕のアバターが斬殺ったのか作者: 松本英哉出版社/メーカー: 光文社発売日: 2016/05/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 今年の福ミス優秀作。SNSゲームによる仮想と現実の二重空間で起きた殺人と、その探偵行の顛末。主人公…

松村涼哉『ただ、それだけでよかったんです』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)レビュー

ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)作者: 松村涼哉,竹岡美穂出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス発売日: 2016/02/10メディア: 文庫この商品を含むブログ (16件) を見る 某電撃大賞を受賞して一部のネット界隈で騒がれた作品だけれ…

深木章子『ミネルヴァの報復』(原書房)レビュー

ミネルヴァの報復 (ミステリー・リーグ)作者: 深木章子出版社/メーカー: 原書房発売日: 2015/08/17メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 作者の新キャラクターの第二弾だが、予断を許さぬ展開がサスペンスを醸し出すとともに、重層的なギミッ…

深木章子『交換殺人はいかが? じいじと樹来(じゅらい)とミステリー』(光文社)レビュー

交換殺人はいかが? じいじと樹来(じゅらい)とミステリー作者: 深木章子出版社/メーカー: 光文社発売日: 2015/06/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (6件) を見る いやー、何というか、このホンモノ感。“本格”を読んだって感じさせ…

門前典之『首なし男と踊る生首』(原書房)レビュー

本日のエピグラフ 死刑が絞首刑と変わったにもかかわらず、斬首を続け、しかも日本刀でなく、本来きこりが使う斧というものを用いて首を切り落とすとは、犯罪者とはいえ礼に失するというものだった。(p.31) 首なし男と踊る生首 (ミステリー・リーグ)作者: 門…

村崎友『夕暮れ密室』(KADOKAWA)レビュー

夕暮れ密室作者: 村崎友,五十嵐大介出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2015/02/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 学園ミステリの“古典”といえば、現在の時点でいえば、やっぱり東野圭吾のデビュー作『放課後』になるのではない…

麻耶雄嵩『あぶない叔父さん』(新潮社)レビュー

あぶない叔父さん作者: 麻耶雄嵩出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2015/04/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る ミステリアス8 アクロバット9 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル39 二度目の本ミス大賞が決まった…

真梨幸子『5人のジュンコ』(徳間書店)レビュー

5人のジュンコ作者: 真梨幸子出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2014/12/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 現代の悪女ものは、ミステリアスな存在性を印象付けるというより、アモルファスな悪意が醸し出す強烈さで勝負しているようだ。…

道尾秀介『透明カメレオン』(KADOKAWA)レビュー

透明カメレオン作者: 道尾秀介出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2015/01/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (11件) を見る 作者の作風を十全に展開した味があるが、実は新たな領域に歩を進めたような感じを持った。作者がミステリアスなもの…

麻耶雄嵩『化石少女』(徳間書店)レビュー

本日のエピグラフ 「(…)俺は探偵の手伝いをすると云ったんです。犯人から推理を逆算するなんて、もはや探偵ではありません。(…)」(「第五章 幽霊クラブ」p.281) 化石少女 (文芸書)作者: 麻耶雄嵩出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2014/11/12メディア: 単行…

深木章子『敗者の告白 弁護士睦木怜の事件簿』(KADOKAWA)レビュー

敗者の告白 弁護士睦木怜の事件簿作者: 深木章子出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2014/10/25メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 作者の原点回帰的な小説作法だが、かえって、物語の異質な感触が露わになった気がする。即ち、この…

三沢陽一『アガサ・クリスティー賞殺人事件』(早川書房)レビュー

アガサ・クリスティー賞殺人事件作者: 三沢陽一出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2014/09/25メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル38 受賞後第一作…