作者名ヤ行

米澤穂信『Iの悲劇』(文藝春秋)レビュー

Iの悲劇作者:米澤 穂信出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2019/09/26メディア: 単行本 バーベキューの話が一番面白かった。連作短編としてのオチは、さほどカタルシスを呼ばないのではないか。むしろ、ブラックユーモア調の体裁だったら、もっと目茶苦茶な終…

山田彩人『皆殺しの家』(南雲堂)レビュー

皆殺しの家 (本格ミステリー・ワールド・スペシャル)作者: 山田彩人出版社/メーカー: 南雲堂発売日: 2018/11/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る お久しぶりの作者で、無理矢理気味のあるトリックミステリ連作として愉しめるが、作者の持…

山本巧次『開化鐵道探偵 第一〇二列車の謎』(東京創元社)レビュー

開化鐵道探偵 第一〇二列車の謎 (ミステリ・フロンティア)作者: 山本巧次出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/12/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る シリーズ第二弾。脱線した貨車から千両箱が発見されるという惹きつけられる導入か…

米澤 穂信『本と鍵の季節 』(集英社)レビュー

本と鍵の季節 (単行本)作者: 米澤穂信出版社/メーカー: 集英社発売日: 2018/12/14メディア: 単行本この商品を含むブログを見る ホームズとワトソン的な権威主義的関係性から脱して、しかし純粋なバディものとも違う、男子高校生ふたりのいささかディスコミュ…

薬丸岳『刑事の怒り』(講談社)レビュー

刑事の怒り作者: 薬丸岳出版社/メーカー: 講談社発売日: 2018/02/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 推協賞受賞作はまとまりのよい作品だったが、作者の期待値からいえば、どうにも物足りないものだった。が、本作品集を通読してみて、受…

山口雅也『落語魅捨理全集 坊主の愉しみ 』(講談社)レビュー

落語魅捨理全集 坊主の愉しみ作者: 山口雅也出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/05/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 古典落語の本歌取りミステリとか諧謔ファースとか、そんなもんでなく、ただひたすらパンキッシュ。ナンセンスの意…

横関大『仮面の君に告ぐ 』(講談社)レビュー

仮面の君に告ぐ作者: 横関大出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/12/14メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る SF的設定が大して引っかかりもなく読み進められるのは、小説がうまいからかもしれないけれど、それより作者がギ…

吉田恭教『化身の哭く森 』(講談社)レビュー

化身の哭く森作者: 吉田恭教出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/07/13メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る かなり大胆な設定というかエグい真相が待ち受ける伝奇ミステリを物してる作者の最新作は、新キャラの探偵がいい味出してる。大風呂…

山田正紀『ここから先は何もない』(河出書房新社)レビュー

ここから先は何もない作者: 山田正紀出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2017/06/20メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (3件) を見る 名作『星を継ぐもの』のウィークポイントはナニだったのか、本作を読んで合点したが、ここから新た…

山本巧次『開化鐵道探偵』(東京創元社)レビュー

開化鐵道探偵 (ミステリ・フロンティア)作者: 山本巧次出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2017/05/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る このひとはこのミス大賞出身なのね。文庫デビューだとついノーマークになるけれども、本作は近代初…

吉田篤弘『ブランケット・ブルームの星型乗車券』(幻冬舎)レビュー

ブランケット・ブルームの星型乗車券作者: 吉田篤弘出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2017/03/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 「クラフト・エヴィング商會」の中の人の紡ぐ、遠い国で堀り起こされた、心が緩むたおやかな寓話の詰め合わ…

柚月裕子『慈雨』(集英社)レビュー

慈雨作者: 柚月裕子出版社/メーカー: 集英社発売日: 2016/10/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 作者の前作『孤狼の血』は単なる悪徳警官ものに終わらない力作で、推協賞受賞も頷ける作品だった。受賞第一作も、刑事のアイロニーを抉る作…

米澤穂信『いまさら翼といわれても』(KADOKAWA)レビュー

いまさら翼といわれても作者: 米澤穂信出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2016/11/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (35件) を見る 近年の作者の芸風にナットクしていたわけではないのだったが、しかし現在の日本ミステリの領域で、読者をもっとも納…

米澤穂信『真実の10メートル手前』(東京創元社)レビュー

真実の10メートル手前作者: 米澤穂信出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2015/12/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (33件) を見る 率直にいえば、作者の前作『王とサーカス』が年間ベストテンを制覇したのは、他に話題作がなかったという側面が強い…

薬丸岳『アノニマス・コール』(KADOKAWA)レビュー

アノニマス・コール作者: 薬丸岳出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2015/06/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る ストレートなサスペンスだが、設定はちょっとややこしい。トリッキーな演出を施して、クライマックスのカタルシス…

米澤穂信『王とサーカス』(東京創元社)レビュー

王とサーカス作者: 米澤穂信出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2015/07/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (40件) を見る 作者にとってのターニング・ポイントが、前年の短編集『満願』に結果的になったのは、自身にとって幸福な事態であったと思う…

薬丸岳『誓約』(幻冬舎)レビュー

誓約作者: 薬丸岳出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2015/03/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 作者の前作は、ヒューマニスティックなドラマ構築への関心を十分に見せつけた作品だったけれども、作者がそういう方向性に単純に行ってしまっ…

柳広司『ラスト・ワルツ』(KADOKAWA)レビュー

ラスト・ワルツ作者: 柳広司出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2015/01/16メディア: 単行本この商品を含むブログ (17件) を見る シリーズ待望の新作。このシリーズは、それこそ連城三紀彦の花葬シリーズの閾に近づいているのではないか。作者の追求…

矢作俊彦『フィルムノワール/黒色影片』(新潮社)レビュー

フィルムノワール/黒色影片作者: 矢作俊彦出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2014/11/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る ポンニチの小説的なるものが、大なり小なりラノベ的表象性に侵されていく現在、この作者は、まさしく反時代的存在と…

柳広司『ナイト&シャドウ』(講談社)レビュー

ナイト&シャドウ作者: 柳広司出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/07/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る あまりに推薦文を多く載っけると、却って鼻白まれるのではないかしらん。小説の間口が広い作者の新作は、SPを主人公にしたサス…

山下貴光『イン・ザ・レイン』(中央公論新社)レビュー

イン・ザ・レイン作者: 山下貴光出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2014/04/09メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 作者の前作『シャンプーが目に沁みる』もそうだけれども、小説の上手さ、安定感は抜群なのだが、物語にどこか予定調和的なニュ…

薬丸岳『刑事の約束』(講談社)レビュー

刑事の約束作者: 薬丸岳出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/04/16メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 夏目刑事ものの新作短編集。このシリーズでは、クック的なリリカルな小説世界に傾斜してきたようだ。「無縁」と「終の住処」にそれが顕…

詠坂雄二『亡霊ふたり』(東京創元社)レビュー

亡霊ふたり (ミステリ・フロンティア)作者: 詠坂雄二出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2013/12/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 作者のサーガ的連作の一作で、それまでのシニカルな世界に、フィジカルなアプローチを取り入れ交錯さ…

米澤穂信『満願』(新潮社)レビュー

本日のエピグラフ 「何か目隠しになるものは」/(…)/「いえ、これで目をつむっていただきましょう」/と言って、遠い棚の達磨に後ろを向かせた。(「満願」pp.310−311) 満願作者: 米澤穂信出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2014/03/20メディア: 単行本この商…

八木圭一『一千兆円の身代金』(宝島社)レビュー

一千兆円の身代金作者: 八木圭一出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2014/01/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る 今年度このミス大賞受賞のもう一作も、展開が派手なほう。ただ、作者の主題意識が、この物語のプロットを必要としていたかどう…

薬丸岳『その鏡は嘘をつく』(講談社)レビュー

その鏡は嘘をつく作者: 薬丸岳出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/12/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 作者の前作は、メロドラマに流れすぎて、物語のアナクロさが強調されていて、残念だったが、本作はシリーズ主人公のものというこ…

柚月裕子『検事の死命』(宝島社)レビュー

検事の死命 (「このミス」大賞シリーズ)作者: 柚月裕子出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2013/09/05メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る 司法小説の重厚さをアピールするには、現実の司法制度の疲労と腐敗を追及したノンフィクションのほうが…

吉田恭教『ネメシスの契約』(光文社)レビュー

本日のエピグラフ 「俺は判事なんてまっぴらだな。量刑が重ければ被告に恨まれ、軽ければ被害者側に恨まれる。(…)」(p.129) ネメシスの契約作者: 吉田恭教出版社/メーカー: 光文社発売日: 2013/07/18メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る ミス…

柳広司『楽園の蝶』(講談社)レビュー

楽園の蝶作者: 柳広司出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/06/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 満州・満映を舞台に張り巡らされる陰謀を描いているわりには、恬淡とした印象を抱かせる。作者であれば、もっと時代の空気を濃密に醸し出…

山田正紀『復活するはわれにあり』(双葉社)レビュー

復活するはわれにあり作者: 山田正紀出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2013/04/17メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 敬服。オールラウンドプレーヤーたる作者の、復活どころか本領発揮の痛快作。極限状況下のアクションスリラーに超現実的な…