大塚英志『大政翼賛会のメディアミックス 「翼賛一家」と参加するファシズム』(平凡社)レビュー



 久々に読む大塚英志サブカル批評・研究本だが、この「メディアミックス」はサブカルではないのだった。大政翼賛会主導のメディアミックス企画だった「翼賛一家」。戦時全体主義たる「新体制」が仕掛けたメディアミックスは、近代日本人の共同体的意識の空虚を補填しながら、昭和初期のサブカル精神を蚕食していく。「翼賛一家」の痕跡は、帝国日本が崩壊してから、手塚治虫の「勝利の日まで」に突っ込まれた戦時全体主義の戯画的な影として、手塚マンガの主題性の誕生に到る前段に費やされることになる。