大塚英志『感情天皇論 』 (ちくま新書)レビュー


感情天皇論 (ちくま新書)

感情天皇論 (ちくま新書)

 
 著者の久々の文芸批評ということで、なかなかの手応え、はある。平成天皇をめぐる文学者たちの屈託を剔出する手際は、著者独自の鮮やかさだ。が、「シン・ゴジラ」を扱い始めてからの後半から、なんだか著者の足場がグラグラに揺らいでいる感じがつきまとう。「感情天皇」をめぐる「物語」の断念を言上げするばかりに、「感情」化を克服する日本の「私」に言及が少なく、著者がポスト「感情天皇制」の指針を示し得たとは言えないだろう。