ビートたけし『フランス座』(文藝春秋)レビュー


フランス座

フランス座


 デビュー以前のころを描く自伝的小説。まあ、たけしの抱くニヒリズムのかたちがほんのり見える。思うに、“父”の役割を代行した感のある母の抑圧から逃れるため、抑圧する能力のない“父”、空虚な“父”を追い求めて、浅草演芸界に身を沈めたのではないか、と。だから、彼の抱くニヒリズムは、“父”の不在による家族的関係性の不可能性を本質とするものではないか、と思う。