『ザ・ベストミステリーズ2013』2013年 第66回 日本推理作家協会賞 短編部門  個人的選評

 

 

 


『暗い越流』若竹七海(受賞作) 
 短い紙幅のなかで物語にツイストをきかせて、読み手を意想外の方向に引っ張っていくストーリーテリングはさすが抜群。ただ才が先走って、展開の強引さが鼻につくところもあり。

『父の葬式』 天祢涼
 連作短編形式の長編作品のうちの一編を、独立した短編として扱うのは、反対。

『青い絹の人形』 岸田るり子
 長編用のプロットを短編に流用したのかと思わせるほど、筆致が忙しない。叙述トリックも余計。

『宗像くんと万年筆事件』 中田永一
 淡い感動を与えてくれるけれども、既視感のある物語という印象を今一つ拭えなかった。

『青葉の盤』 宮内悠介 
 興味深い題材がすべてだけれども、一気に小説世界に引き込まれた。文体も硬質な方向性をねらって、イヤミな感じはしない。


【評価】『青葉の盤』に〇、『暗い越流』『宗像くんと万年筆事件』に△。

 

http://mystery.or.jp/prize/detail/10661