『暗い越流』若竹七海(受賞作)
短い紙幅のなかで物語にツイストをきかせて、読み手を意想外の方向に引っ張っていくストーリーテリングはさすが抜群。ただ才が先走って、展開の強引さが鼻につくところもあり。
『父の葬式』 天祢涼
連作短編形式の長編作品のうちの一編を、独立した短編として扱うのは、反対。
『青い絹の人形』 岸田るり子
長編用のプロットを短編に流用したのかと思わせるほど、筆致が忙しない。叙述トリックも余計。
『宗像くんと万年筆事件』 中田永一
淡い感動を与えてくれるけれども、既視感のある物語という印象を今一つ拭えなかった。
『青葉の盤』 宮内悠介
興味深い題材がすべてだけれども、一気に小説世界に引き込まれた。文体も硬質な方向性をねらって、イヤミな感じはしない。
【評価】『青葉の盤』に〇、『暗い越流』『宗像くんと万年筆事件』に△。