かおなし先祖

 
  浅羽通明の『星新一の思想』を読んでから、あわてて星新一作品を読み返している。何が既読で何を未読スルーしているのかも忘れている状態。星新一作品はショートショートしか面白くないとの先入観がなぜかあって、それで恐る恐る手に取った『おかしな先祖』が無類に面白かったんで、大反省。「心残り」「戸棚の男」の絶妙なオチ、「四で割って」の狂気、「オオカミそのほか」の滑稽、でも何より「倒れていた二人」「ふーん現象」の2022年の現在に十分通じる諷刺は、作者の賢者ぶりを示してあまりある。