いのちの知

 
   いい本読んだ。いまエコロジカルな批評的感度を探らせたら、著者がいちばんなんだろうな、と思う。生態系のなかの人間のポジションは、まさに「生態系」というネーミングによって、自然の諸現象を系列化してしまう主体であるがゆえに、自然の内部にいるようで外在化し、外部にいるようで内在的自意識を持たざるを得ない。要するにこれが知の限界、すなわち言葉の限界である。これを突破するには、言葉からコトバへと、コミュニケーション能力を拡張しなければならない。アモルファスな「いのち」の再認識する旅へと、読者をいざなう佳品。