ワンダーランドに卒アルはない? 

 
 これも柚木麻子の本と同じく、ブックガイドの体裁を取り繕った批評集。しかも、対象が児童文学でありながらも、普遍的な視野を確保しているのは、さすが。『秘密の花園』を「農系女子」の物語としたり、佐藤さとるのコロボックルものにSDGsに通じる先見性を見たり、ピーター・パンに大人の物語としての苦さを読んだり。『ゲド戦記』で締めたのはいかにもという感じはするけれども、時代を超える価値を見出すのを、いつまでも『アリス』のワンダーランドのナンセンスに代表されるわけにもいかんしなあ。