高橋克彦『完四郎広目手控 文明怪化』(集英社)レビュー

本日のエピグラフ

 今の日本はこの前見た幻燈の絵のようなもの。(中略)中が空洞であっても、腐っていたとしても見た目には分からない。それを切って中身を見せてこそ幻燈の国ではなくなる。(「第十二話 幻燈国家」P311より)

文明怪化―完四郎広目手控

文明怪化―完四郎広目手控


 
ミステリアス8 
クロバット8 
サスペンス8 
アレゴリカル8 
インプレッション9 
トータル41  


 今回は作者が所蔵する「新聞錦絵」から想を得た*1、好評捕物シリーズの第四集。完四郎、ポウの『モルグ街の殺人』と邂逅するの巻、でもあります。「新聞」と探偵小説のかかわりを強烈に喚起させつつ、日本における初期モダニゼーションの過程をリアルタイムに追いかけるコンセプトは、明治期に入っていよいよ鋭さを増す。これから時代が下るにつれて、怪談などの非探偵小説的要素はどのように扱われるのかしらん。

*1:ていうか、「マリー・ロジェの謎」の魂を吹き込んだ、と評するべきなんでしょう。