2009-04-01から1ヶ月間の記事一覧

太田忠司『男爵最後の事件』(祥伝社ノン・ノベル)レビュー

男爵最後の事件 (ノン・ノベル 858)作者: 太田忠司出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2009/02/05メディア: 新書購入: 1人 この商品を含むブログ (9件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション7 トータル37 シ…

米澤穂信『秋期限定栗きんとん事件 上・下』(創元推理文庫)レビュー

本日のエピグラフ 「甘い衣の上に衣をまとって、何枚も重ね着していって。そうしていくうちにね、栗そのものも、いつかキャンディーみたいに甘くなってしまう。(…)上辺が本性にすり替わる。手段はいつか目的になる。(…)」(上 P170より) 秋期限定栗きんと…

小路幸也『ブロードアレイ・ミュージアム』(文藝春秋)レビュー

ブロードアレイ・ミュージアム作者: 小路幸也出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2009/03メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る 疑似家族的空気の醸成の仕方はこの作者ならではの気安さに満ちている。いかにも、といった感じのトラブルシュート…

中村啓『霊眼』(宝島社)レビュー

霊眼作者: 中村啓出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2009/03/06メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (11件) を見る 「第三の眼」が出てきて、おおっとなったんですけれども、物語をあらぬ方向に運んでいく手腕は確かなもの。今回のこ…

結城充考『プラ・バロック』(光文社)レビュー

プラ・バロック作者: 結城充考出版社/メーカー: 光文社発売日: 2009/03/24メディア: 単行本 クリック: 16回この商品を含むブログ (23件) を見る ちょっと大味、かな。ビジュアルに遡及する“像”の数々が先にあり、それらに適合する“物語”を用意したかなという…

小笠原慧『タロットの迷宮』(文藝春秋)レビュー

タロットの迷宮作者: 小笠原慧出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2009/03メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログ (7件) を見る サイコ・スリラーと近未来小説の枠組みで、触法精神障害者問題をテーマに据える。タロットカードの扱いがアレゴリ…

松本寛大『玻璃の家』(講談社)レビュー

本日のエピグラフ 黄色い街灯が冷えた敷石に彼の影を映していた。ああこれは僕の顔だとコーディは思った。黒く塗りつぶされた影は、鏡を見るよりもはっきりと彼自身だと知覚できるものだった。(P275より) 玻璃の家作者: 松本寛大出版社/メーカー: 講談社…

吉田真樹『平田篤胤――霊魂のゆくえ』(講談社)レビュー

平田篤胤――霊魂のゆくえ (再発見 日本の哲学)作者: 吉田真樹出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/01/30メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (6件) を見る 神道界におけるいわゆる平田派の思想が、国家神道のバックボーンを提供し…

溝口睦子『アマテラスの誕生』(岩波新書)レビュー

アマテラスの誕生―古代王権の源流を探る (岩波新書)作者: 溝口睦子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2009/01/20メディア: 新書購入: 5人 クリック: 45回この商品を含むブログ (27件) を見る 日本において国家神=皇祖神として奉じられたアマテラス。もとも…

いしいひさいち『ツーショットワールド 日本顔面崩壊』(講談社)レビュー

ツーショットワールド 日本顔面崩壊 (講談社漫画文庫 い)作者: いしいひさいち出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/04/10メディア: 文庫 クリック: 14回この商品を含むブログ (4件) を見る 恒例の『大問題』’09年版の前に、いしいひさいちファン、のみな…

朝倉かすみ『ロコモーション』(光文社)レビュー

ロコモーション作者: 朝倉かすみ出版社/メーカー: 光文社発売日: 2009/01/21メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (12件) を見る 自分探し、とはまったく真逆の、“自分”というものが自身に回帰してくる悲喜劇。現実をいきる人々の生の基底に…

万城目学『プリンセス・トヨトミ』(文藝春秋)レビュー

プリンセス・トヨトミ作者: 万城目学出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2009/02/26メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 229回この商品を含むブログ (262件) を見る 見事なもんです。愉しくなければ小説じゃない、という作者の信念が伝わってきますもん。キ…

佐野洋『ミステリーとの半世紀』(小学館)レビュー

ミステリーとの半世紀作者: 佐野洋出版社/メーカー: 小学館発売日: 2009/02/21メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログ (3件) を見る 『推理日記』と重複しているところもあるけれども、昭和三十年代から五十年代にかけての、戦後日本ミステリ文…

大崎梢『スノーフレーク』(角川書店)レビュー

スノーフレーク作者: 大崎梢出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング発売日: 2009/02/27メディア: 単行本 クリック: 15回この商品を含むブログ (32件) を見る ミステリアス8 アクロバット7 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル…

餅は餅屋、本は本屋……

という結果になったかどうか、ベストテン総体を見て判断するしかないと思いますが、売れてる本や評判になっている本を、より売ろうとするのは、経営戦略的に一定の合理性はあるように思われますので、とりあえずは、この路線で行ってもかまわないように、思…

小森健太朗『英文学の地下水脈―古典ミステリ研究 黒岩涙香翻案原典からクイーンまで 』(東京創元社)レビュー

英文学の地下水脈―古典ミステリ研究 黒岩涙香翻案原典からクイーンまで (Key library)作者: 小森健太朗出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2009/02/28メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログ (6件) を見る 探偵小説史をめぐる捨象された流れ、…

鏑木蓮『思い出探偵』 (PHP)レビュー

思い出探偵作者: 鏑木蓮出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2009/02/14メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (5件) を見る いい小説ですよ。作者の持ち味である市井小説的雰囲気を前面に出して、サスペンスも適度に織り交ぜつつ、過去をめぐ…

吉来駿作『レッド・デッド・ライン』(幻冬舎)レビュー

レッド・デッド・ライン作者: 吉来駿作出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2009/02/01メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (5件) を見る 始まりは軽いノリなのですが、話が進むつれスプラッター風味の物騒な展開に。「赤い糸」に象徴される“運…