2008-09-01から1ヶ月間の記事一覧

恩田陸『きのうの世界』(講談社)レビュー

きのうの世界作者: 恩田陸出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/09/04メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 23回この商品を含むブログ (118件) を見る 恩田流のアンチ・ミステリとして愉しんだ。作者ほど、ミステリアスなものに対して、センシティブな感性を…

柳広司『ジョーカーゲーム』(角川書店)レビュー

本日のエピグラフ 結局のところ、優れたスパイとは、己以外のすべてを捨て去り、愛する者を裏切ってもなお、たった一人で平気で生きて行ける者たちのことなのだ。(「xx(ダブルクロス)」P250より) ジョーカー・ゲーム作者: 柳広司出版社/メーカー: 角川…

洋泉社ムック編集部『アキバ通り魔事件をどう読むか!?』(洋泉社MOOK)レビュー

アキバ通り魔事件をどう読むか!? (洋泉社MOOK)作者: 洋泉社ムック編集部出版社/メーカー: 洋泉社発売日: 2008/07/29メディア: ムック購入: 7人 クリック: 158回この商品を含むブログ (33件) を見る 収録論文のどれに賛意・共感を寄せるかで、当然自らの立ち…

日本推理作家協会編『推理小説年鑑 ザ・ベストミステリーズ2008』(講談社)レビュー

ザ・ベストミステリーズ2008作者: 日本推理作家協会出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/07/10メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (5件) を見る いくぜ。「傍聞き」プロット運びのセンスの良さで、他の候補作より頭ひとつ抜けたのだろう/…

末浦広海『訣別の森』(講談社)レビュー

訣別の森作者: 末浦広海出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/08/07メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 7回この商品を含むブログ (12件) を見る 西村寿行的世界に徹しきれなかったのが、難といえばそうかしらん。でも、その原因が、乱歩賞であるがゆえに、…

翔田寛『誘拐児』(講談社)レビュー

誘拐児作者: 翔田寛出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/08/07メディア: 単行本 クリック: 8回この商品を含むブログ (25件) を見る ミステリアス8 アクロバット7 サスペンス8 アレゴリカル7 インプレッション7 トータル37 推協賞候補の経歴を持つ作…

西澤保彦『夢は枯れ野をかけめぐる』(中央公論新社)レビュー

夢は枯れ野をかけめぐる作者: 西澤保彦出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2008/08メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 3回この商品を含むブログ (18件) を見る “日常の謎”系の作品としても、そして作者のものとしても、異色作だろう。昨年の『収穫祭』…

黒史郎『100KBを追いかけろ』(講談社)レビュー

100KB[キロババア]を追いかけろ作者: 黒史郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/07/11メディア: 単行本 クリック: 9回この商品を含むブログ (4件) を見る もっとイカモノかとも思ったけれども、適度にウェットに物語は疾走します。ページタナーとしての作…

橋本努『経済倫理=あなたは、なに主義?』(講談社選書メチエ)レビュー

経済倫理=あなたは、なに主義? (講談社選書メチエ)作者: 橋本努出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/08/08メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 50回この商品を含むブログ (28件) を見る ネオコン、ネオリベ、コミュニタリアニズム、リバタリアニズムに従来…

高井忍『漂流巌流島』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ 「ドラマってのは、人間さまの生き方やら社会の出来事やらをデフォルメして描くもんだからな。限られた時間と予算の枠組み内で面白おかしく」(「慟哭新撰組」P203より) 漂流巌流島 (ミステリ・フロンティア)作者: 高井忍出版社/メーカ…

W・A・フレッケンシュタイン F・シーハン『グリーンスパンの正体 2つのバブルを生み出した男』(エクスナレッジ)レビュー

本日のエピグラフ グリーンスパンは世界最大の株式バブル後の苦境にあえぐアメリカを、世界最大の不動産バブルで救済した。この2つのバブルの組み合わせは、アメリカ(そして世界)がそれまで目にしたことのなかった規模の投機熱、そして負債増大の代名詞にな…

伊園旬『ソリューション・ゲーム』(宝島社)

ソリューション・ゲーム 日常業務の謎 「このミス大賞」シリーズ)作者: 伊園旬出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2008/07/03メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログ (8件) を見る 期待の第二作目は、快作。新世代のカイシャ小説。トラブルシュー…

北村薫『野球の国のアリス』(講談社)レビュー

野球の国のアリス (ミステリーランド)作者: 北村薫出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/08/07メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 15回この商品を含むブログ (51件) を見る らしい、っていえばらしい。てか、設定が設定だけに、あらぬ方向性のものを期待し…

舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日 上・下』(新潮社)レビュー

ディスコ探偵水曜日〈上〉作者: 舞城王太郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/07メディア: 単行本購入: 10人 クリック: 191回この商品を含むブログ (190件) を見るディスコ探偵水曜日〈下〉作者: 舞城王太郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/07メディ…

詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』(光文社)レビュー

本日のエピグラフ 「一応、ここから先の推理も考えてきたんですけど……聞いて貰えます?」/「どうせ妄想だろう」/「そいつを売ってんです。(…)」(P237より) 遠海事件作者: 詠坂雄二出版社/メーカー: 光文社発売日: 2008/07/18メディア: 単行本購入: 3人…

円堂都司昭『「謎」の解像度 ウェブ時代の本格ミステリ』(光文社)レビュー

「謎」の解像度作者: 円堂都司昭出版社/メーカー: 光文社発売日: 2008/04/22メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 54回この商品を含むブログ (28件) を見る 著者の新名義でのデビュー作である綾辻行人論から、清涼院流水論へ通じる論脈こそが、今現在のミス…

荻上チキ『ネットいじめ』(PHP新書)レビュー

ネットいじめ (PHP新書)作者: 荻上チキ出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2008/07/16メディア: 新書購入: 8人 クリック: 120回この商品を含むブログ (54件) を見る やっぱり、こういう本は、どこから出るのかが肝要なことだと思われ。でもなんだか、同じト…

斎藤環『文学の断層』(朝日新聞出版)レビュー

文学の断層 セカイ・震災・キャラクター作者: 斎藤環出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2008/07/04メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 52回この商品を含むブログ (27件) を見る 著者の文芸批評としては第二集目にあたるが、精神分析的タームが独自の批…

森福都『肉屏風の密室』(光文社)レビュー

本日のエピグラフ 「(…)私は『正道の剣』はあると思いますわ。ただし、私にとっての『正道の剣』は剣ではなく人でした。(…)」(「肉屏風の密室」P191より) 肉屏風の密室作者: 森福都出版社/メーカー: 光文社発売日: 2008/07/18メディア: 単行本 クリック:…

門前典之『浮遊封館』(原書房)レビュー

" title="浮遊封館">浮遊封館作者: 門前典之出版社/メーカー: 原書房発売日: 2008/07/23メディア: ハードカバー購入: 1人 クリック: 19回この商品を含むブログ (15件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション8…

松尾由美『人くい鬼モーリス』(理論社)レビュー

[rakuten:book:12957098:detail] 人をくったモンスターの設定がおもちろい。でも、物語は、ジュブナイルということをしっかり射程に収めて進んでいきます。淡い感動を読者にもたらしてくれるものの、小野不由美『くらのかみ』の座敷わらしとくらべると、モー…