2013-01-01から1年間の記事一覧

喜多喜久『化学探偵Mr.キュリー』(中公文庫)レビュー

化学探偵Mr.キュリー (中公文庫)作者: 喜多喜久出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2013/07/23メディア: 文庫この商品を含むブログ (17件) を見る 第二話が個人的にツボ。理系ミステリーとしての処理の仕方が、あそびの部分を持たせているようで、口当た…

蓮見恭子『拝啓17歳の私』(角川春樹事務所)レビュー

拝啓17歳の私(わたし)作者: 蓮見恭子出版社/メーカー: 角川春樹事務所発売日: 2013/06/15メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 連作短編形式の青春ミステリー。個々の話にギミックが効かせてあり愉しめるけれども、物語の焦点が揺らいだ感はあるかも…

菅原和也『CUT』(角川書店)レビュー

CUT (単行本)作者: 菅原和也出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2013/08/31メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 横溝賞受賞後第一作は、大満足の出来。サイコ・スリラーというより、エクストリーム系とでも言ったほうがいいと思うけれども、エグさを…

柚月裕子『検事の死命』(宝島社)レビュー

検事の死命 (「このミス」大賞シリーズ)作者: 柚月裕子出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2013/09/05メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る 司法小説の重厚さをアピールするには、現実の司法制度の疲労と腐敗を追及したノンフィクションのほうが…

小島達矢『ジューン・プライド』(文藝春秋)レビュー

ジューン・プライド作者: 小島達矢出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/10/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 素直に愉しめたのだけれども、あともうひとつ何かを欲張ってほしい、とは思うのだけれども。もっと、決定的な“奇蹟”を見た…

東川篤哉『探偵部への挑戦状 - 放課後はミステリーとともに2』(実業之日本社)レビュー

探偵部への挑戦状 - 放課後はミステリーとともに2作者: 東川篤哉出版社/メーカー: 実業之日本社発売日: 2013/10/26メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (8件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス8 アレゴリカル7 インプレ…

貫井徳郎『北天の馬たち』(角川書店)レビュー

北天の馬たち (単行本)作者: 貫井徳郎出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2013/10/19メディア: 単行本この商品を含むブログを見る この作品を読んで、作者がやりたかったことというか、裡に持っている主題性が、腑に落ちた感じがした。たぶん、“義”という意識…

辻真先『戯作・誕生殺人事件』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ (…)お誕生おめでとう!(…) (p.309) 戯作・誕生殺人事件作者: 辻真先出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2013/09/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る ミステリアス9 アクロバット9 サスペンス8 アレゴリカル9 インプ…

2013年11月版

ベストテン投票締め切り間近に刊行された二作。『三秒間』は、クライマックスに向けてきっちり盛り上がるところがよろしく、派手に一発やってくれているスリラーの鑑のごとき作品。グレイマン三作目で、ワタクシ的にやっとノレたけれども、アクションの連鎖…

大沢在昌『海と月の迷路』(毎日新聞社)レビュー

海と月の迷路作者: 大沢在昌出版社/メーカー: 毎日新聞社発売日: 2013/09/18メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る いや版元のPR文が中途半端でソンしているよなあ。もっと小説の内容は重厚だ。もちろん、作者の語り口のソリッドさは相変わら…

似鳥鶏『ダチョウは軽車両に該当します』 (文春文庫)レビュー

ダチョウは軽車両に該当します (文春文庫)作者: 似鳥鶏出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/06/07メディア: 文庫この商品を含むブログ (20件) を見る 作者の今年出した文庫オリジナル三冊のうち、学園シリーズ、パティシエ探偵の連作ものよりも、こっちの…

松尾由美『わたしのリミット』(東京創元社)レビュー

わたしのリミット作者: 松尾由美出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2013/09/28メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 日常の謎系のドラマを、成長小説的範型からややずらしたところに設定する意識が、作者にはあるのだろう。カタルシスは、存在する…

門井慶喜『こちら警視庁美術犯罪捜査班』(光文社)レビュー

こちら警視庁美術犯罪捜査班作者: 門井慶喜出版社/メーカー: 光文社発売日: 2013/10/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 作者のホームグラウンドで、軽快に話が進んでいくので、心地よい。コンゲーム的要素の入っている小説は、…

周木律『双孔堂の殺人 ~Double Torus~ 』(講談社ノベルス)レビュー

双孔堂の殺人 ~Double Torus~ (講談社ノベルス)作者: 周木律出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/08/07メディア: 新書この商品を含むブログ (11件) を見る 第二作目。なるほど、そうきましたか。特殊構造物にトリックを仕掛けるときの雰囲気作りに、知的装…

丸山天寿『死美女の誘惑 蓮飯店あやかし事件簿 』(講談社ノベルス)レビュー

本日のエピグラフ 「でも、それはどうでも良いことではありませんか。あの方はこの世でも、次の世でも女性の味方のようですから」(「第一話 死美女の誘惑」p.64) 死美女の誘惑 蓮飯店あやかし事件簿 (講談社ノベルス)作者: 丸山天寿出版社/メーカー: 講談社…

嶋戸悠祐『セカンドタウン』(講談社ノベルス)レビュー

セカンドタウン (講談社ノベルス)作者: 嶋戸悠祐出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/08/07メディア: 新書この商品を含むブログを見る 福ミスデビュー後第一作。ホラーと本格ミステリの、作者なりの融合点を探っている。カバー折り返しの作者の言葉を信じる…

吉田恭教『ネメシスの契約』(光文社)レビュー

本日のエピグラフ 「俺は判事なんてまっぴらだな。量刑が重ければ被告に恨まれ、軽ければ被害者側に恨まれる。(…)」(p.129) ネメシスの契約作者: 吉田恭教出版社/メーカー: 光文社発売日: 2013/07/18メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る ミス…

長沢樹『上石神井さよならレボリューション』(集英社)レビュー

上石神井さよならレボリューション作者: 長沢樹出版社/メーカー: 集英社発売日: 2013/09/05メディア: 単行本この商品を含むブログ (17件) を見る ミステリアス8 アクロバット9 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション7 トータル38 前二作のとは…

島田荘司『星籠の海 上・下』(講談社)レビュー

星籠の海 上作者: 島田荘司出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/10/04メディア: 単行本この商品を含むブログ (13件) を見る星籠の海 下作者: 島田荘司出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/10/04メディア: 単行本この商品を含むブログ (12件) を見る 「御手…

麻耶雄嵩『貴族探偵対女探偵』(集英社)レビュー

本日のエピグラフ 「では、私が依頼すればいいわけか。それなら君の名分もたつしな」/(…)/「どういう意味? あなたは探偵なんでしょ。探偵が探偵に依頼するなんて聞いたことがないわ」(「むべ山風を」p.132) 貴族探偵対女探偵 (貴族探偵)作者: 麻耶雄嵩出…

愛川晶『十一月に死んだ悪魔』(文藝春秋)レビュー

十一月に死んだ悪魔作者: 愛川晶出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/09/25メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 本格ミステリー風味のサイコ・スリラーの快(?)作。他社で落語ミステリを出しながら、文春ではこういういかがわしいものを刊…

池田久輝『晩夏光』(角川春樹事務所)レビュー

晩夏光作者: 池田久輝出版社/メーカー: 角川春樹事務所発売日: 2013/10/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る 今年のニューカマーで評判が良かったようなので、ひもといたけれども、うん、いい感じ。話の進め方が手際よくて、必要以上にねち…

三沢陽一『致死量未満の殺人』(早川書房)レビュー

致死量未満の殺人作者: 三沢陽一出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2013/10/25メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見る ミステリアス8 アクロバット9 サスペンス7 アレゴリカル8 インプレッション7 トータル39 今年のクリスティー賞は、…

2013年10月版

ディーヴァーの知的アクロバットのショーケース『ポーカー』の私的ベスト3は、「生まれついての悪人」「一事不再理」「36・6度」。ひたすら、おいしいったら、ありゃしない。キングのは、ソフトカバーでよかった。分厚い本で腱鞘炎にならずにすんだ。カ…

市川哲也『名探偵の証明』(東京創元社)レビュー

名探偵の証明作者: 市川哲也出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2013/10/12メディア: 単行本この商品を含むブログ (16件) を見る 今年の鮎哲賞受賞作を、異色作と見るか、パロディと見るか。もしくは、私立探偵小説とのキメラかも。小説技巧は実際に安定し…

大倉崇裕『問題物件』(光文社)レビュー

本日のエピグラフ 「部屋なぞ、好きなだけ見られるさ。外界と部屋を分けているのは、薄い扉一枚だ。そんなもの、俺が蹴破って……」(「誰もいない部屋」p.273) 問題物件作者: 大倉崇裕出版社/メーカー: 光文社発売日: 2013/08/13メディア: 単行本(ソフトカ…

古野まほろ『パダム・パダム Eの悲劇'80』(光文社)レビュー

パダム・パダム Eの悲劇'80作者: 古野まほろ出版社/メーカー: 光文社発売日: 2013/06/19メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス8 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル39 『セーラー服と黙…

東野圭吾『祈りの幕が下りる時』(講談社)レビュー

祈りの幕が下りる時作者: 東野圭吾出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/09/13メディア: 単行本この商品を含むブログ (40件) を見る 各紙誌の書評では、松本清張が引き合いに出されているようだ。むべなるかな、と思えど、作者には遊びが許されなくなってき…

芦辺拓『時の審廷』(講談社)レビュー

時の審廷作者: 芦辺拓出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/09/26メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (5件) を見る 作者のトリックメーカーとしての意識と鋭利な社会批判が交合した作品は、『時』シリーズ前二作のほかにもあるけれども、…

「人生の余白を舞って黒ガラス鶴をまねたる白羽織かな」(「変調二人羽織」より)

「戻り川心中」「恋文」などで知られる直木賞作家の連城三紀彦(れんじょう・みきひこ、本名加藤甚吾〈かとう・じんご〉)さんが19日、胃がんのため名古屋市内の病院で死去した。65歳だった。葬儀は近親者で営んだ。 愛知県出身。早稲田大在学中から小説…