2017-01-01から1年間の記事一覧

深木章子『消人屋敷の殺人』(新潮社)レビュー

消人屋敷の殺人作者: 深木章子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2017/10/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る オレ的真打である作者の新作は、ギミックを全面的に凝らした快作にして怪作。舞台設定と趣向に凝り過ぎて空回り全開の若手のもの…

白河三兎『他に好きな人がいるから』(祥伝社)レビュー

他に好きな人がいるから作者: 白河三兎出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2017/10/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 独自の作風、というより、どうも作者のセンスが奈辺を目指してるのか、今一つ掴みにくい感じがある。ある種のモラトリア…

愛川晶 『手がかりは「平林」  神田紅梅亭寄席物帳』(原書房)レビュー

手がかりは「平林」: 神田紅梅亭寄席物帳 (ミステリー・リーグ)作者: 愛川晶出版社/メーカー: 原書房発売日: 2017/09/27メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 復活後第二冊目も中編二作だが、一筋縄ではいかぬ芸人の界隈で物騒な出来事を起こさせて、…

岡田秀文『白霧学舎 探偵小説倶楽部 』(光文社)レビュー

白霧学舎 探偵小説倶楽部作者: 岡田秀文出版社/メーカー: 光文社発売日: 2017/10/17メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る ああ、これはミステリーランドで読みたかったなあ。ていうか、ジュブナイル向けで刊行すればよかった…

吉田恭教『化身の哭く森 』(講談社)レビュー

化身の哭く森作者: 吉田恭教出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/07/13メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る かなり大胆な設定というかエグい真相が待ち受ける伝奇ミステリを物してる作者の最新作は、新キャラの探偵がいい味出してる。大風呂…

今村昌弘 『屍人荘の殺人 』(東京創元社)レビュー

屍人荘の殺人作者: 今村昌弘出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2017/10/12メディア: 単行本この商品を含むブログ (25件) を見る 乱歩賞、横溝賞ともに正賞なし、の新人賞不作の年を埋め合わすような持ち重りのある作品ではないが、B級ホラーの世界で本格…

佐藤究『Ank: a mirroring ape 』(講談社)レビュー

Ank: a mirroring ape作者: 佐藤究出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/08/23メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 乱歩賞受賞第一作は、『ジェノサイド』よりも数段オモロイ、バイオロジカル・サスペンス。まあ、こういう小説は個人的にツボ…

彩坂美月『金木犀と彼女の時間』(東京創元社)レビュー

金木犀と彼女の時間 (ミステリ・フロンティア)作者: 彩坂美月出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2017/09/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る ラノベというより古き佳きヤングアダルト小説の質感を湛えたような出来。タイムリープ状況を…

辻堂ゆめ『悪女の品格』(東京創元社)レビュー

悪女の品格 (ミステリ・フロンティア)作者: 辻堂ゆめ出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2017/07/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る タイトルから抱いていた印象からは、ハデな話ではなかった。まあこういうタイトルにしなきゃしょうが…

相沢沙呼『マツリカ・マトリョシカ』(KADOKAWA)レビュー

マツリカ・マトリョシカ作者: 相沢沙呼出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2017/08/25メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 四年ぶりのシリーズ第三弾。読み始めて早々、主人公のちょいキモなヘタレ加減を思い出し、結構このシリーズインパクト…

市川憂人『ブルーローズは眠らない』(東京創元社)レビュー

ブルーローズは眠らない作者: 市川憂人出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2017/09/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見る 鮎川賞受賞第一作。エレガントでよろしいです。ネタをてんこ盛らずに、ある方向性に凝集させたぶん、語り口に余裕…

早坂吝『ドローン探偵と世界の終わりの館 』(文藝春秋)レビュー

ドローン探偵と世界の終わりの館作者: 早坂吝出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2017/07/12メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る ははは。まあ後腐れのないイッパツネタの爽快感というかね。作者みたいな作風には、説教臭くなってほしくないん…

歌野晶午『ディレクターズ・カット』(幻冬舎)レビュー

ディレクターズ・カット作者: 歌野晶午出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2017/09/07メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る いかにも作者らしいギミックを凝らせた一気読みサスペンスだけれども、物語の瘴気と凶気を愉しむ前に、語り口の取っつき…

水沢秋生『俺たちはそれを奇跡と呼ぶのかもしれない』(光文社)レビュー

俺たちはそれを奇跡と呼ぶのかもしれない作者: 水沢秋生出版社/メーカー: 光文社発売日: 2017/07/19メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 初見の作者。主人公の意識が、不可解な事件の当事者たちの身体に次々と転移していくという設…

大門剛明『婚活探偵』(双葉社)レビュー

婚活探偵作者: 大門剛明出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2017/06/21メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 社会派ミステリのホープである作者が、ハードボイルドパロディのユーモア小説に挑んだ。作者がこういう路線でもけっこうイケ…

阿津川辰海『名探偵は嘘をつかない 』(光文社)レビュー

名探偵は嘘をつかない作者: 阿津川辰海出版社/メーカー: 光文社発売日: 2017/06/16メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (7件) を見る カッパノベルスはほとんど開店休業状態なのに、カッパワンからカッパツーですか。ちゃんと売ってあげて…

浅ノ宮遼『片翼の折鶴 』(東京創元社)レビュー

片翼の折鶴 (ミステリ・フロンティア)作者: 浅ノ宮遼出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2016/11/30メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 医療ミステリ連作集のデビュー作。収録順は中ほどになるは新人賞受賞作は、逆説の切れ味が見事に決まった傑作…

道尾秀介 『満月の泥枕』(毎日新聞出版)レビュー

満月の泥枕作者: 道尾秀介出版社/メーカー: 毎日新聞出版発売日: 2017/06/08メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る むむむ、作者はなんだ、もしかして伊集院静とかそういう方向性で行こうとしてるのかなあ。いや小説が上手いから、スルスル読め…

鳥飼 否宇『紅城奇譚』(講談社)レビュー

紅城奇譚作者: 鳥飼否宇出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/07/13メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 作者がこの時代を舞台にするとはいかがなものかと思ったけれども、山田風太郎的伝奇テイストを飛び越えて、小栗虫太郎的異界エキゾチズ…

川瀬 七緒『フォークロアの鍵』(講談社)レビュー

フォークロアの鍵作者: 川瀬七緒出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/05/17メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (5件) を見る 作者の伝奇ミステリ的展開を期待しているわけだが、新作はなんと介護民俗学を正面に見据えたものだった。認知…

山田正紀『ここから先は何もない』(河出書房新社)レビュー

ここから先は何もない作者: 山田正紀出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2017/06/20メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (3件) を見る 名作『星を継ぐもの』のウィークポイントはナニだったのか、本作を読んで合点したが、ここから新た…

東川篤哉『探偵さえいなければ』(光文社)レビュー

探偵さえいなければ作者: 東川篤哉出版社/メーカー: 光文社発売日: 2017/06/16メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (7件) を見る ザッツ「本籍地」な烏賊川市シリーズ、あらゐけいいちのカバー絵も過不足ない待望の新作集は、探偵小説的カ…

山本巧次『開化鐵道探偵』(東京創元社)レビュー

開化鐵道探偵 (ミステリ・フロンティア)作者: 山本巧次出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2017/05/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る このひとはこのミス大賞出身なのね。文庫デビューだとついノーマークになるけれども、本作は近代初…

大倉崇裕『クジャクを愛した容疑者 警視庁いきもの係 』(講談社)レビュー

クジャクを愛した容疑者 警視庁いきもの係作者: 大倉崇裕出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/06/14メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (4件) を見る サブタイがTV化にあたり、警視庁総務部動植物管理係から警視庁いきもの係へとメジ…

深水黎一郎 『ストラディヴァリウスを上手に盗む方法』(河出書房新社)レビュー

ストラディヴァリウスを上手に盗む方法作者: 深水黎一郎出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2017/05/17メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る バラエティに富んだ短編集、といわなきゃならんか。表題作の中編は、堂々としたトリック本格で、…

貫井徳郎『宿命と真実の炎』(幻冬舎)レビュー

宿命と真実の炎作者: 貫井徳郎出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2017/05/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る ええわええわええですわ。アタマから尾っぽの先まで、ナットクの展開ですわ。凡百のケーサツ小説を突き離す作者のたくらみは、今…

岩木一麻『がん消滅の罠 完全寛解の謎』(宝島社)レビュー

【2017年・第15回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作】 がん消滅の罠 完全寛解の謎 (『このミス』大賞シリーズ)作者: 岩木一麻出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2017/01/12メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見る 最近のこのミス大賞は…

佐藤正午『月の満ち欠け』(岩波書店)レビュー

月の満ち欠け作者: 佐藤正午出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2017/04/06メディア: 単行本この商品を含むブログ (27件) を見る そりゃ小説上手い人が、時空間を意のままに転換させて、ドラマツルギーの構築性に傾注してるんだから、そのスリリングさにクラ…

水生大海 『だからあなたは殺される』(光文社)レビュー

だからあなたは殺される作者: 水生大海出版社/メーカー: 光文社発売日: 2017/02/16メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (4件) を見る 冒頭、この作者はわざわざケーサツ小説に手を染めなくていいのに、と思ったが、あれよあれよという間に…

似鳥 鶏『彼女の色に届くまで』(KADOKAWA)レビュー

彼女の色に届くまで作者: 似鳥鶏出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2017/03/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る 連作短編形式の長編で、個々のハナシで行使されるギミックとロジックのキレはよろしいし、最後のまとめ方もそういうふうな具…