2007-07-01から1ヶ月間の記事一覧

山沢晴雄 日下三蔵・編『離れた家 山沢晴雄傑作集』(日本評論社)レビュー

本日のエピグラフ ……つまり、現実の世界にそれが実現される以前に「念の世界」に於ける運命の形成がある。(中略)だから近い将来に関しての予言は可能なんだ。(「神技」P190より) 離れた家―山沢晴雄傑作集 (日下三蔵セレクション)作者: 山沢晴雄,日下三蔵…

祭りのあと――第21回参議院議員通常選挙、総括――私的メモ

1、客観的に見て、小沢一郎が大人の風格を見せ付けた、というしかない。はっきりいうけれども、私は安倍晋三に、何の皮肉でもなく、心より同情する。この敗戦責任は、政治家・文化人・ジャーナリストなど問わず、すべての安倍の取り巻き連中が負うべきもの…

鯨統一郎『浦島太郎の真相』(光文社カッパノベルス)レビュー

浦島太郎の真相 恐ろしい八つの昔話 (カッパノベルス)作者: 鯨統一郎出版社/メーカー: 光文社発売日: 2007/05/19メディア: 新書 クリック: 16回この商品を含むブログ (34件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス6 アレゴリカル7 インプレッシ…

水沫流人『七面坂心中』(メディアファクトリー)レビュー

七面坂心中 (幽BOOKS)作者: 水沫流人出版社/メーカー: メディアファクトリー発売日: 2007/05/16メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 泥レスの人間リングのくだりがおもしろーい。エロスとタナトスとナンセンスを流麗な文体でかきまわした感じ…

黒史郎『夜は一緒に散歩しよ』(メディアファクトリー)レビュー

夜は一緒に散歩しよ (幽BOOKS)作者: 黒史郎出版社/メーカー: メディアファクトリー発売日: 2007/05/16メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 6回この商品を含むブログ (21件) を見る 展開に応じて、キャラクターの出し入れを大胆にやっているところが…

柴田よしき『小袖日記』(文藝春秋)レビュー

小袖日記作者: 柴田よしき出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2007/04/01メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (27件) を見る 猫が出てくるタイムスリップ(?)もの。いやでも、上手いよなあ。「葵」は泣ける泣ける。「明石」のラストは余韻た…

赤染晶子『うつつ・うつら』(文藝春秋)レビュー

うつつ・うつら作者: 赤染晶子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2007/05メディア: 単行本 クリック: 46回この商品を含むブログ (25件) を見る ふたりの逃げる女がいる。「初子さん」における美根子と表題作における鶴子。「初子さん」の時代設定は「昭和五…

円城塔『Self−Reference ENGINE』(早川書房) レビュー

Self‐Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)作者: 円城塔出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2007/05/01メディア: 単行本購入: 11人 クリック: 362回この商品を含むブログ (260件) を見る フロイトのお話が個人的ツボ。あとラス前のお話も。―…

内田樹『街場の中国論』(ミシマ社)レビュー

街場の中国論作者: 内田樹出版社/メーカー: ミシマ社発売日: 2007/06/02メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 43回この商品を含むブログ (48件) を見る ここでいう「中国」とは、いわゆる中華思想、華夷秩序の謂いである。サブタイトルは、「中華思想の精神…

青木淳悟『いい子は家で』(新潮社)レビュー

いい子は家で作者: 青木淳悟出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/05メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 14回この商品を含むブログ (40件) を見る 表題作は、主人公のお父ちゃんのメタモっぷりが夢に出てきそうな怪作。「ふるさと以外のことはしらない」「…

佐藤友哉『灰色のダイエットコカコーラ』(講談社)レビュー

灰色のダイエットコカコーラ作者: 佐藤友哉出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/06/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 63回この商品を含むブログ (118件) を見る 貴種流離譚的妄想の断念が成長小説の核となる。で、これが性の拒否でもあるのですね。暴…

江國香織『がらくた』(新潮社)レビュー

がらくた作者: 江國香織出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/05メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (84件) を見る 作者は独特なシニカルな感性から、現代における“純粋な関係”性を捉え直して、独自の地位を築いた。決して、“恋愛”オンリー…

第21回参議院議員通常選挙、各党公約チェック――私的メモ

というわけで、共同通信7/16配信記事「実現目指します! 各党公約」をもとに、あくまで私的かつ恣意的な整理を。べつに、以下の文章を読んで、投票の一助になるとも思えませんが。各項目は、当該記事に沿っています。 年金など社会保障 年金問題のみ 自…

桜庭一樹『青少年のための読書クラブ』(新潮社)レビュー

青年のための読書クラブ作者: 桜庭一樹出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/06メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 86回この商品を含むブログ (254件) を見る “桜の園”という女子ホモソーシャル(笑)の“せかい”に、生成するトリックスター+ファルマコンと…

鈴木謙介『するグローバリゼーション』(NTT出版) 『ウェブ社会の思想』(NHKブックス)レビュー

“反転”するグローバリゼーション作者: 鈴木謙介出版社/メーカー: NTT出版発売日: 2007/04メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 43回この商品を含むブログ (58件) を見るウェブ社会の思想 〈遍在する私〉をどう生きるか (NHKブックス)作者: 鈴木謙介出版社/メ…

平山夢明『ミサイルマン 平山夢明短編集』(光文社)レビュー

ミサイルマン―平山夢明短編集作者: 平山夢明出版社/メーカー: 光文社発売日: 2007/06/20メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 60回この商品を含むブログ (47件) を見る スプラッター要素をガジェットとして、多様なサブジャンルを横断する筆の捌きっぷりに、…

海野碧『水上のパッサカリア』(光文社)レビュー

水上のパッサカリア作者: 海野碧出版社/メーカー: 光文社発売日: 2007/03/20メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (42件) を見る 某評論家が、主人公のことを女性から見た男性像だと言っていたけれども、饒舌な文体が、韜晦と自己冷笑のレト…

新津きよみ『悪女の秘密』(光文社文庫)レビュー

本日のエピグラフ いきなり警察に行き、あんな動機(、、、、、)を述べても、誰も信じてくれるはずがない。(「彼女の一言」P221より) 悪女の秘密 (光文社文庫)作者: 新津きよみ出版社/メーカー: 光文社発売日: 2007/04/12メディア: 文庫 クリック: 2回…

小路幸也『シー・ラブズ・ユー』(集英社)レビュー

シー・ラブズ・ユー (2) (東京バンドワゴン)作者: 小路幸也出版社/メーカー: 集英社発売日: 2007/05/25メディア: 単行本 クリック: 14回この商品を含むブログ (62件) を見る 『東京バンドワゴン』続編は、“日常の謎”ネタがもーあからさまにギミックのレベル…

高田崇史『毒草師』(幻冬舎)レビュー

毒草師作者: 高田崇史出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2007/04メディア: 単行本 クリック: 8回この商品を含むブログ (34件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス8 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル39 新シリーズ。ネタ振りの仕方…

万城目学『鹿男あをによし』(幻冬舎)レビュー

鹿男あをによし作者: 万城目学出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2007/04メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 409回この商品を含むブログ (493件) を見る あっと、思ってみれば、この作品の感想をあげてなかった。構成にメリハリがきいて面白く、読みやすい。…

三田完『俳風三麗花』(文藝春秋)レビュー

俳風三麗花作者: 三田完出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2007/04メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (16件) を見る 昭和ファシズム直前の時期を背景とする市井小説。かっちりと仕上げたのは、それほどイヤミではないから、気持ちよく読め…

大森望 豊崎由美『2007年版 文学賞メッタ斬り! 受賞作はありません編』(PARCO)

文学賞メッタ斬り!〈2007年版〉受賞作はありません編作者: 大森望,豊崎由美出版社/メーカー: PARCO出版発売日: 2007/05/10メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 20回この商品を含むブログ (60件) を見る 芥川・直木賞の発表がある前に、本書をもいちどおさら…

第137回芥川・直木賞ブックメーカー

それでは、倍率ドン! 芥川賞候補作倍率 円城 塔「オブ・ザ・ベースボール」 ×7 川上未映子「わたくし率 イン 歯ー、または世界」 ×10 柴崎友香 「主題歌」 ×3 諏訪哲史「アサッテの人」 ×4 前田司郎 「グレート生活アドベンチャー」 ×5 松井雪子 「ア…

吉田修一『悪人』(朝日新聞社)レビュー

悪人作者: 吉田修一出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 2007/04/06メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 134回この商品を含むブログ (307件) を見る ドキュメントタッチの犯罪小説の結構をもっていても、作者らしい文体の持ち味は健在。事件当事者だけなく…

服部まゆみ『ラ・ロンド』(文藝春秋)レビュー

ラ・ロンド―恋愛小説作者: 服部まゆみ出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2007/05メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (14件) を見る “恋愛”をロゴスの戯れに還元する。ニヒリズムを担保するのは、過剰な演技で、“生”の真実は断片化するよう…

石持浅海『人柱はミイラと出会う』(新潮社)レビュー

本日のエピグラフ アメリカ出身のリリーさんには理解しづらいと思いますが、日本人は『いないことになっている』ものは目に入らないのです。網膜には映っていても、脳が認知しない。(「黒衣は議場から消える」P57より) 人柱はミイラと出会う作者: 石持浅…

加藤典洋『太宰と井伏』(講談社)レビュー

太宰と井伏――ふたつの戦後作者: 加藤典洋出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/04/24メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (7件) を見る 太宰と井伏、ときたら、二者間の確執を追った猪瀬直樹『ピカレスク 太宰治伝』というわけだけれども、…