2014-01-01から1年間の記事一覧

本城雅人『誉れ高き勇敢なブルーよ』(東京創元社)レビュー

誉れ高き勇敢なブルーよ作者: 本城雅人出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2014/10/14メディア: 単行本この商品を含むブログを見る サッカーというスポーツ・ビジネスの内幕を、タイムリミットの範型を採用して、スリラー仕立てで描いた。門外漢にもページ…

本城雅人『サイレントステップ』(新潮社)レビュー

サイレントステップ作者: 本城雅人出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2014/07/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る 作者が競馬界を舞台にするのは二度目だけれども、本作は主人公の騎手の内面と、彼が抱える状況の進展が、絡まりあって予断を…

深木章子『敗者の告白 弁護士睦木怜の事件簿』(KADOKAWA)レビュー

敗者の告白 弁護士睦木怜の事件簿作者: 深木章子出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2014/10/25メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 作者の原点回帰的な小説作法だが、かえって、物語の異質な感触が露わになった気がする。即ち、この…

鏑木蓮『イーハトーブ探偵 ながれたりげにながれたり: 賢治の推理手帳I 』(光文社文庫)レビュー

本日のエピグラフ その顔を見ると、学問というものはどこまでいっても果てがない。そんなことを教えたいのかもしれないと思う。(「ながれたりげにながれたり」p.16) イーハトーブ探偵 ながれたりげにながれたり: 賢治の推理手帳I (光文社文庫)作者: 鏑木蓮出…

法条遥『忘却のレーテ』(新潮社)レビュー

忘却のレーテ作者: 法条遥出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2014/07/22メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 特異な設定、あるガジェットをギミックの始点においた、SF的ニュアンス漂うサイコ・スリラー。終盤で畳みかけられるロジックに、意表を突…

遠藤武文『フラッシュモブ  警察庁情報分析支援第二室』(光文社)レビュー

" title="フラッシュモブ 警察庁情報分析支援第二室">フラッシュモブ 警察庁情報分析支援第二室作者: 遠藤武文出版社/メーカー: 光文社発売日: 2014/07/18メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る シリーズ第二集。なのだが、作者の専門を活かし…

2014年11月版

『沈黙』は、話運びがよかった。思った以上に、話に起伏があって、文芸チックな味わいを醸し出しつつも、読者をきっちり翻弄してくれる。もうそろそろ日本の作家も、こういう次元のものを物してもいいよね。『夜明』みたいな主題性のものは、興を覚えるわけ…

東川篤哉『純喫茶「一服堂」の四季』(講談社)レビュー

純喫茶「一服堂」の四季作者: 東川篤哉出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/10/09メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (10件) を見る あれ、もしや講談社から上梓するのは初めてなのかしらん。メフィストを意識したようなバカトリックが…

有栖川有栖『怪しい店』(KADOKAWA)レビュー

怪しい店作者: 有栖川有栖出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2014/10/31メディア: 単行本この商品を含むブログ (12件) を見る あとがきにあるように、コンセプチュアルな短編集だが、ワクに引っ張られずに、本格ミステリの粋を凝らした安心かつ持ち…

河合莞爾『ダンデライオン』(KADOKAWA)レビュー

ダンデライオン作者: 河合莞爾出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2014/10/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス8 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル39 このシリーズは安定…

三沢陽一『アガサ・クリスティー賞殺人事件』(早川書房)レビュー

アガサ・クリスティー賞殺人事件作者: 三沢陽一出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2014/09/25メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル38 受賞後第一作…

島田荘司『幻肢』(文藝春秋)レビュー

幻肢作者: 島田荘司出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2014/08/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る この作者の読者としては、満足する小説でした。改めて思うのは、小説の構築性における、プロットと各シチュエーション、物語と各表象の絡…

石持浅海『相互確証破壊』(文藝春秋)レビュー

相互確証破壊作者: 石持浅海出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2014/07/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 性愛もしくは性倒錯的シークエンスの効果が、ミスディレクションやグロテスクさや、視覚的な訴求性に重きを置いて、情愛の表象化…

市川哲也『名探偵の証明  密室館殺人事件』(東京創元社)レビュー

名探偵の証明 密室館殺人事件作者: 市川哲也出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2014/11/12メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る ミステリアス8 アクロバット9 サスペンス8 アレゴリカル7 インプレッション7 トータル39 受賞後第一作…

歌野晶午『ずっとあなたが好きでした』(文藝春秋)レビュー

ずっとあなたが好きでした作者: 歌野晶午出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2014/10/14メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見る いかにも作者らしい、ケレン味と成熟味とシュールさが拮抗して、ミステリ職人としての匠のワザを満喫できる。ただ…

霞流一『フライプレイ!  監棺館殺人事件 』(原書房)レビュー

フライプレイ!: 監棺館殺人事件 (ミステリー・リーグ)作者: 霞流一出版社/メーカー: 原書房発売日: 2014/10/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 探偵小説的スノビズムを突き詰めれば、こんなカタチに帰結するのは、ジャンルの宿命か、この…

柄刀一『密室の神話』(文藝春秋)レビュー

本日のエピグラフ 「(…)実際は、身近なたった一人の死のほうが、世界の終わりに近いものをもたらしたりしないだろうか。率直に言って、見知らぬ数千人よりも、一人の死のほうが、その個人にとっての世界を変える。粉砕する。(…)」(p.276) 密室の神話作者: 柄…

中山七里『テミスの剣』(文藝春秋)レビュー

テミスの剣作者: 中山七里出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2014/10/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 作者の、現実の事件をモデルにしたと思しき物語を読んだとき、その題材を扱う手つきに、正直、違和感を覚えてきた。不謹慎とかいう…

内山純『Bハナブサへようこそ』(東京創元社)レビュー

Bハナブサへようこそ作者: 内山純出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2014/10/12メディア: 単行本この商品を含むブログを見る ミステリアス8 アクロバット9 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル39 今年の鮎川賞受賞作は、ほとんど…

天祢涼『都知事探偵・漆原翔太郎  セシューズ・ハイ』(講談社)レビュー

本日のエピグラフ 「(…)答は簡単。みなさん、基本的にはすべて政治家にお任せだからです。(…)結果、地方自治体の首長は長期政権を実現できるのです。要は、情けない総理を辞めさせようと奮闘する国会議員の方が、みなさんよりはるかに気骨があるわけですよ。…

獅子宮敏彦『アジアン・ミステリー』(南雲堂)レビュー

本日のエピグラフ 「(…)本格マニアなら、勿論、シャーロック・ホームズは読んでいるんだろう?」/(…)/「全部は読んでいません。有名なものだけです」/(…)/「なにしろ、あの時代のイギリスは苦手でして――」(p.37) アジアン・ミステリー (本格ミステリー・…

若月香『屋上と、犬と、ぼくたちと』 (光文社)レビュー

屋上と、犬と、ぼくたちと作者: 若月香出版社/メーカー: 光文社発売日: 2014/09/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る 福ミス優秀作の二冊目。小説は軽妙な仕上がりで、意表を突く展開も堂に入った感がある。サスペンスの醸…

明利英司『旧校舎は茜色の迷宮』 (講談社ノベルス)レビュー

旧校舎は茜色の迷宮 (講談社ノベルス)作者: 明利英司出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/08/07メディア: 新書この商品を含むブログ (7件) を見る 今年の福ミス候補作は、受賞作以外はすべて優秀作として世に出ることになったが、その一冊目。青春ミステリ…

植田文博『経眼窩式』(原書房)レビュー

経眼窩式作者: 植田文博出版社/メーカー: 原書房発売日: 2014/05/15メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 今年の福ミス受賞作は、21世紀本格ならぬ21世紀社会派とでもいうべきか。というより、タイトルの漢字四文字が醸し出すブキミ感を、…

天祢涼『もう教祖しかない! 』(双葉社)レビュー

もう教祖しかない!作者: 天祢涼出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2014/07/16メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 宗教ビジネスを扱った作品は数多あるけれども、本作はエコノミーの一形態として、それを認めよ、と主張をあからさまに…

長岡弘樹『群青のタンデム』(角川春樹事務所)レビュー

群青のタンデム作者: 長岡弘樹出版社/メーカー: 角川春樹事務所発売日: 2014/09/13メディア: 単行本この商品を含むブログ (11件) を見る 警察小説にビルドゥングスロマン的要素を持たせた意欲作。連作として、各話、短編巧者ぶりを見せつけるが、語り口がこ…

2014年10月版

今月はぜんぶハヤミスだ。『プリムローズ』は、いやはや、超ツボですよ。この作者は、時代的に(現在的に)信用できる、とラストまで読んで直観した。『瘢痕』は、オーソドックスなPI小説を愉しめた、ということで。このひとは、職人的作家として期待できそ…

深水黎一郎『大癋見(おおべしみ)警部の事件簿』(光文社)レビュー

大癋見(おおべしみ)警部の事件簿作者: 深水黎一郎出版社/メーカー: 光文社発売日: 2014/09/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る 21世紀本格のハナシが、面白かった。ネタのイジリ方における身の窶し方に余裕があるのかヤ…

藤崎翔『神様の裏の顔』(KADOKAWA)レビュー

神様の裏の顔作者: 藤崎翔出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2014/09/26メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 今年の横溝賞受賞作だけれども、私は支持するね。というか、こういう作品を顕彰するところに、横溝賞の、乱歩賞に対するカウンタ…

真保裕一『ダブル・フォールト』(集英社)レビュー

ダブル・フォールト作者: 真保裕一出版社/メーカー: 集英社発売日: 2014/10/03メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る リーガル・サスペンスだけれども、語り口がいい。主人公の人物造形に飄々としたニュアンスを保たせて、彼に意想外の状況に遭…