2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧

門井慶喜『天才までの距離』(文藝春秋)レビュー

天才までの距離作者: 門井慶喜出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2009/12/05メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 3回この商品を含むブログ (10件) を見る 3年ぶりですか。内容の濃いシリーズなのにさびしく感じなかったのは、作者がコンスタントに作品を発…

桂修司『死者の裏切り』(宝島社)レビュー

死者の裏切り作者: 桂修司出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2009/11/06メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る タイトルの訴求力がイマイチだけれども、サスペンスの常道を押さえて読ませる。特に探偵の人物造型がいい。結末もカタ…

田中啓文『あんだら先生とジャンジャラ探偵団 』(理論社)レビュー

あんだら先生とジャンジャラ探偵団作者: 田中啓文出版社/メーカー: 理論社発売日: 2009/11/01メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (3件) を見る 親しみのある場所をこういうふうに書けることこそ、文化的な強みなんだろうなあ、と思う。冗談…

香菜里屋が、店じまいです……

北森鴻さん48歳(きたもり・こう<本名・新道研治=しんどう・けんじ>ミステリー作家)25日、心不全のため死去。葬儀は26日午前11時、山口県宇部市中野開作403のやすらぎ会館。喪主は父利夫(としお)さん。 山口市在住。95年「狂乱廿四孝」で…

有栖川有栖『本格ミステリの王国』(講談社)レビュー

本格ミステリの王国作者: 有栖川有栖出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/12/08メディア: 単行本 クリック: 13回この商品を含むブログ (16件) を見る 有栖川が“本格”ジャンルにおけるパースペクティブを示したエッセー集として読める。だから、笠井潔批判に…

滝田務雄『田舎の刑事の闘病記』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ 「わかりましたか、このようにお巡りさんの仕事はいろいろな意味で大変なのです」(「田舎の刑事の冬休みの絵日記」P249より) 田舎の刑事の闘病記 (ミステリ・フロンティア)作者: 滝田務雄出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2009/11/2…

大門剛明『罪火』(角川書店)レビュー

罪火作者: 大門剛明出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2009/12/22メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログ (3件) を見る どんでん返しは見事に決まるけれども、主人公らの述懐に筆を費やしすぎる感あり。コトバで語…

辻真先 霞流一 井上夢人 山口雅也 白峰良介 黒崎緑 折原一 芦辺拓『探偵Xからの挑戦状! 』(小学館文庫)レビュー

探偵Xからの挑戦状! (小学館文庫)作者: 辻真先出版社/メーカー: 小学館発売日: 2009/10/06メディア: 文庫 クリック: 6回この商品を含むブログ (14件) を見る テレビは未見、純粋に推理クイズ競作集として愉しみました。けれども、折原、芦辺のは、推理クイズ…

本格ミステリ作家クラブ・編『本格ミステリ09 』(講談社ノベルス) レビュー

本格ミステリ09 二〇〇九年本格短編ベスト・セレクション (講談社ノベルス)作者: 本格ミステリ作家クラブ出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/06/05メディア: 新書 クリック: 15回この商品を含むブログ (21件) を見る いくぜ。「しらみつぶしの時計」おあと…

日本推理作家協会・編『ザ・ベストミステリーズ2009』(講談社)レビュー

ザ・ベストミステリーズ2009 (推理小説年鑑)作者: 日本推理作家協会出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/07/09メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (3件) を見る いくぜ。「熱帯夜」おあとがよろしいようで/「渋い夢」推協賞向けにはこの…

円城塔『烏有此譚』(講談社)レビュー

烏有此譚作者: 円城塔出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/12/16メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 47回この商品を含むブログ (34件) を見る 「穴」のはなし。見えないものが、見えるようになるために、コトバの「灰」は積もり続ける。そのとき、「小説…

三津田信三『水魑の如き沈むもの』(原書房)レビュー

本日のエピグラフ 「連続殺人が起こって何人も殺された後で、ようやく事件を解決しておきながら、実は最初から犯人が分かってたとほざく名探偵より、正直に分からんと言うあんたの方が、よっぽど信用できるけ」/「ただ、分からないよりは、分かっている方が…

松井今朝子『円朝の女』(文藝春秋)レビュー

円朝の女作者: 松井今朝子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2009/11/12メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログ (9件) を見る 練達の筆致は、円朝をめぐる女たちの濃やかで一筋縄でいかぬ感情をとらえるほか、時代の推移につきまとう何か浮かな…

荻原浩『ひまわり事件』(文藝春秋)レビュー

ひまわり事件作者: 荻原浩出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2009/11/13メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (12件) を見る うーん、クライマックスはよめてしまうかな。老人ホーム問題などの社会派的要素をコメディタッチで読ませてしまう…

舞城王太郎『ビッチマグネット』(新潮社)レビュー

ビッチマグネット作者: 舞城王太郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2009/11/27メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 388回この商品を含むブログ (115件) を見る ある種のブラコン小説、的展開を微妙な匙加減でスルーしていくのが、この作者っぽいじゃないで…

湯浅誠『岩盤を穿(うが)つ 』(文藝春秋)レビュー

岩盤を穿(うが)つ作者: 湯浅誠出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2009/11/11メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 150回この商品を含むブログ (13件) を見る この版元から、著者の本が出ること自体、寿がれることです。『諸君!』廃刊(休刊だっけ)以後である…

小島正樹『武家屋敷の殺人 』(講談社ノベルス)レビュー

本日のエピグラフ (…)すっかり冷たくなった亡骸を、じっと見つめる。(…)私は笑おうとしている。けれどほかに、なにができるというのだろう。(P221より) 武家屋敷の殺人 (講談社ノベルス)作者: 小島正樹出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/11/06メディ…

鯨統一郎『山内一豊の妻の推理帖』(光文社カッパ・ノベルス) レビュー

山内一豊の妻の推理帖 (カッパ・ノベルス)作者: 鯨統一郎出版社/メーカー: 光文社発売日: 2009/11/19メディア: 新書この商品を含むブログ (2件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル38 あら。…

“恋愛”が書かれるということ

昨年は斉藤環の文芸批評が二冊刊行された。精神分析的観点から批評理論の確立を目論んだ『関係の化学としての文学』は、中上健次論はさすがにスリリングなのだけれども、総じて、ある理論モデルからトップダウン式に作品が解析されていくのが、どうにも退屈…