2007-11-01から1ヶ月間の記事一覧

門井慶喜『人形の部屋』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ 十八世紀後半のイギリスにはじまるこの工業化、都市化への激しい傾倒は、合理的思考に決定的な勝利を与え、事実上、アレゴリーの息の根をとめた。アレゴリーは死んだのだ。(「お花当番」P127より) 人形の部屋 (ミステリ・フロンティア)…

山口芳宏『雲上都市の大冒険』(東京創元社)レビュー

雲上都市の大冒険作者: 山口芳宏出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2007/10メディア: 単行本 クリック: 24回この商品を含むブログ (29件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル38 愉しいです…

坂木司『ホテルジューシー』(角川書店)レビュー

ホテルジューシー作者: 坂木司出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2007/09メディア: 単行本 クリック: 13回この商品を含むブログ (58件) を見る 『シンデレラティース』と立体的に楽しめる姉妹編。謎解き要素はスパイス程度。それよりも、宮崎誉子を読んだあ…

早川さん家のリニューアル

『ミステリマガジン』がリニューアルされた、そうです。 [rakuten:book:12623432:detail] …………「リニューアル」の前の号ってのは、なんというか、ある種の緊張感もしくは殺伐とした感じがどことはなしに漂ってくるもんですが、そういったもんが先月号はあん…

宮崎誉子『三日月』(講談社)レビュー

三日月作者: 宮崎誉子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/10/11メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (7件) を見る 労働、是教養也。OJT体制が完全に崩壊した時代で、若年層がいかに試行錯誤していくか、このテーマに“ポップ”な文体が妙…

吾郷眞一『労働CSR入門』(講談社現代新書)レビュー

労働CSR入門 (講談社現代新書)作者: 吾郷眞一出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/08/17メディア: 新書 クリック: 2回この商品を含むブログ (10件) を見る CSR=企業の社会的責任。この「労働」版、ということは、要するに労働(者)における人権問題、具…

霞流一『夕陽はかえる』(早川書房)レビュー

本日のエピグラフ しかし、気質の人間より、殺し屋の命は安いからな。(中略)ならば、単価の安いチップなら、数を積み上げなきゃならないってこと、そういう道理なんだろうさ(P509より) [rakuten:book:12320402:detail] ミステリアス8 アクロバット8 サ…

真保裕一『追伸』(文藝春秋)レビュー

追伸作者: 真保裕一出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2007/09メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (19件) を見る 往復書簡の形式のミステリーなら先行作があまたあるものの、それらを意識しているのかどうかは、微妙。おそらく作者の意識と…

有栖川有栖『女王国の城』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ 世界のすべては今の私につながっている、という幼稚で誇大な妄想。本格ミステリは、それと戯れてみせる(P419より) 女王国の城 (創元クライム・クラブ)作者: 有栖川有栖出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2007/09メディア: 単行本購入…

荻上チキ『ウェブ炎上』(ちくま新書)レビュー

ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性 (ちくま新書)作者: 荻上チキ出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2007/10/01メディア: 新書購入: 18人 クリック: 298回この商品を含むブログ (169件) を見る 「インターネット上での集団行動に対するリテラシーは、今後ま…

米澤穂信『遠まわりする雛』(角川書店)レビュー

本日のエピグラフ 「それで、答えられる目処はたっているのか」/(中略)/「もう少しなんだ、もう少し……。言葉にならないだけなんだ」(「手作りチョコレート事件」P298より) 遠まわりする雛作者: 米澤穂信出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2007/10メデ…

佐々木譲『警官の血 上・下』(新潮社)レビュー

警官の血 上巻作者: 佐々木譲出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/09/26メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 22回この商品を含むブログ (86件) を見る[rakuten:book:12207352:detail] 近年の日本ミステリ界は、まさに警察小説ルネッサンスというべき状況で…

森見登美彦『有頂天家族』(幻冬舎)レビュー

有頂天家族作者: 森見登美彦出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2007/09/25メディア: 単行本購入: 29人 クリック: 857回この商品を含むブログ (373件) を見る あまりにも愉しく読めた小説には、その作者が楽しく書いたであろうことを、祈りたくなってくる。本作…