作者名ナ行

法月綸太郎『赤い部屋異聞』(KADOKAWA)レビュー

赤い部屋異聞作者:法月 綸太郎発売日: 2019/12/04メディア: 単行本 のりりんのブッキッシュな自意識をアイロニーで活け締めにしたような感触を持つ。オマージュとはかくも求道的なものなのか、なんてな。オーラスの「迷探偵誕生」の愉しい隘路に嵌り込む前に…

西澤保彦『逢魔が刻 腕貫探偵リブート 』(実業之日本社)レビュー

逢魔が刻 腕貫探偵リブート作者:西澤 保彦発売日: 2019/12/20メディア: 単行本(ソフトカバー) 4年ぶりなの、もう。作者はいろいろシリーズもの持ってるからなあ。だーりんが出てくるのは掉尾を飾るお話だけだが、その前のサイコのお話、こういうのきっち…

貫井徳郎『罪と祈り』(実業之日本社)レビュー

罪と祈り作者:貫井 徳郎出版社/メーカー: 実業之日本社発売日: 2019/09/05メディア: 単行本 ますますゴダードっぽくなってきたような。過去と現在を往還する構成は、割合ストレートに物語は進むものの、時代状況の大いなる蹉跌に翻弄された人間たちの焦燥と…

西澤保彦『沈黙の目撃者』(徳間書店)レビュー

沈黙の目撃者 (文芸書)作者:西澤保彦出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2019/10/31メディア: 単行本 設定というのがガジェットレベルでとどまって、それの秘密が暴かれるような新たなプロットが用意されるわけではなかったのがちょい残念だけれども、収録作…

法月綸太郎『法月綸太郎の消息』(講談社)レビュー

法月綸太郎の消息作者: 法月綸太郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2019/09/12メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 冒頭のドイル渉猟はやや北村薫チックな小説的処理だけれども、掉尾を飾るクリスティー渉猟は完全にテクストクリティークの醍醐味を…

似鳥 鶏『育休刑事』(幻冬舎)レビュー

育休刑事作者: 似鳥鶏出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2019/05/23メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 相変わらず饒舌な文体なので、作品が新境地なのかどうかはちょいわからんです。意欲的な設定であることは確か。イクメンのディテールに凝るのは…

西澤保彦『夢の迷い路』(幻冬舎)レビュー

夢の迷い路作者: 西澤保彦出版社/メーカー: 光文社発売日: 2019/03/19メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る<br> いつのまにか始まった新シリーズ、いずれも一筋縄ではいかぬアクロバティックなロジックが冴えるが、作者のものとしてはそ…

中山七里『静おばあちゃんと要介護探偵』(文藝春秋)レビュー

静おばあちゃんと要介護探偵作者: 中山七里出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2018/11/28メディア: 単行本この商品を含むブログを見る<br> 社会派ミステリをマンガ的な勧善懲悪ドタバタ路線へと折衷させてみせたのは作者ならではという感じで、やや荒唐無稽なト…

似鳥 鶏『叙述トリック短編集』(講談社)レビュー

叙述トリック短編集作者: 似鳥鶏,石黒正数出版社/メーカー: 講談社発売日: 2018/09/20メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (4件) を見る ネタが過去の某怪作とややかぶったけれども、ただ作者のアイロニカルな作風をさらにアイロニカルに…

中山七里『悪徳の輪舞曲』(講談社)レビュー

悪徳の輪舞曲作者: 中山七里出版社/メーカー: 講談社発売日: 2018/03/15メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 御子柴サーガもここまでくれば、完結編も間近という感じがするけれども。己の断ち切ったつもりの絆という名の因縁が、悪意を孕むか…

長岡弘樹『にらみ 』(光文社)レビュー

にらみ作者: 長岡弘樹出版社/メーカー: 光文社発売日: 2018/03/15メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 短編ミステリの匠の道をひたすら歩んでいる感のある作者だが、本作品集は、読者の嗜好によって各短編の評価は分かれるだろう、という意味…

長岡弘樹『教場0 刑事指導官・風間公親』(小学館)レビュー

教場0: 刑事指導官・風間公親作者: 長岡弘樹出版社/メーカー: 小学館発売日: 2017/09/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 各話サブタイトルが刑事コロンボをもじっているけれど、探偵役と犯人役の丁々発止より、刑事職人小説としての持ち…

貫井徳郎『宿命と真実の炎』(幻冬舎)レビュー

宿命と真実の炎作者: 貫井徳郎出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2017/05/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る ええわええわええですわ。アタマから尾っぽの先まで、ナットクの展開ですわ。凡百のケーサツ小説を突き離す作者のたくらみは、今…

似鳥 鶏『彼女の色に届くまで』(KADOKAWA)レビュー

彼女の色に届くまで作者: 似鳥鶏出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2017/03/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る 連作短編形式の長編で、個々のハナシで行使されるギミックとロジックのキレはよろしいし、最後のまとめ方もそういうふうな具…

西澤保彦『悪魔を憐れむ』(幻冬舎)レビュー

悪魔を憐れむ作者: 西澤保彦出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2016/11/23メディア: 単行本この商品を含むブログ (11件) を見る 4年ぶりのタックシリーズ、間が開くと登場人物の関係性がわからなくなるのは、ちょっとツライものがあるけれども、作者独特の論…

貫井徳郎『壁の男』(文藝春秋)レビュー

壁の男作者: 貫井徳郎出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2016/10/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る うん、藤沢周平だね。でも、オイラは、あえてハードボイルドと呼びたいぞ。魂がソウルが、男のリリシズムを穿っているぞ。でもまあ、ピ…

中山七里『作家刑事毒島』(幻冬舎)レビュー

作家刑事毒島作者: 中山七里出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2016/08/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る この作者は、もっとコミカルなものを書いているかと思ったが、実はそれほどでもなかったか。たぶん、話の展開やキャラクターの造型…

七河迦南『わたしの隣の王国』(新潮社)レビュー

わたしの隣の王国作者: 七河迦南出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2016/09/21メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (6件) を見る 作者の4年ぶりの新作は、作者自身が愉しんで筆を進めた感がある。テーマパークで起きた変事の密室事件の推移…

長沢樹『St.ルーピーズ』(祥伝社)レビュー

St.ルーピーズ作者: 長沢樹出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2016/05/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 作者がこういう傾向の小説を書きたかったのは、わかるような気がする。作風のベクトルにミステリの結構が違和感がなく、ユカイに読…

中山七里『恩讐の鎮魂曲』(講談社)レビュー

恩讐の鎮魂曲作者: 中山七里出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/03/16メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る ほほほ、前作に引き続き、いいぞいいぞ。アンチヒーローが道化に陥る皮肉が、事件の真相解明のフェーズに合わせて、あからさまにな…

中山七里『ハーメルンの誘拐魔』(KADOKAWA)レビュー

ハーメルンの誘拐魔作者: 中山七里出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2016/01/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 誰が言ったかどんでん返しの帝王、でも本作は割合ストレートにお話が進み、サスペンスフル。社会派的テーマを真…

似鳥鶏『レジまでの推理 本屋さんの名探偵 』(光文社)レビュー

レジまでの推理 本屋さんの名探偵作者: 似鳥鶏出版社/メーカー: 光文社発売日: 2016/01/19メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (8件) を見る ん? タイトルに何か含みがあったか………いやでもまあ、専門職コージーとでもいうべき路線って、…

西澤保彦『帰ってきた腕貫探偵』(実業之日本社)レビュー

帰ってきた腕貫探偵作者: 西澤保彦出版社/メーカー: 実業之日本社発売日: 2016/01/07メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (3件) を見る 帰ってきた西澤流論理のアクロバット――とやりたいトコロだけれども、作者はコンスタントに新作を発表…

法月綸太郎『怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関』(講談社)レビュー

怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関作者: 法月綸太郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/07/09メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (9件) を見る ノリリンは、こういう方向性でしばらくいくの? SF的ガジェットで、作者の何がはぐらか…

中山七里『ヒポクラテスの誓い』(祥伝社)レビュー

ヒポクラテスの誓い作者: 中山七里出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2015/05/14メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る たとえば柄刀一の知的好奇心がアモルファスな破天荒さを感じさせるのに対して、この作者の知的興味は対象に接する深度から措…

西澤保彦『さよならは明日の約束』(光文社)レビュー

さよならは明日の約束作者: 西澤保彦出版社/メーカー: 光文社発売日: 2015/03/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (6件) を見る こういう雰囲気のも書けちゃう。しかも、作者の持ち味である論理のアクロバットの強かさはいささかも失わ…

中山七里『嗤う淑女』(実業之日本社)レビュー

嗤う淑女作者: 中山七里出版社/メーカー: 実業之日本社発売日: 2015/01/31メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (9件) を見る 会心作を発表し続ける作者も、現代の悪女ものに挑戦した。読者としては当然ギミック重視で攻める、とあらかじめ…

西川美和『永い言い訳』(文藝春秋)レビュー

永い言い訳作者: 西川美和出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2015/02/25メディア: 単行本この商品を含むブログ (24件) を見る 読み応えはある。ただ、作者の近年の作品にも言えるけれども、小説構築の手法の探求が、技巧のレベルに留まっていて、かえってカ…

貫井徳郎『我が心の底の光』(双葉社)レビュー

我が心の底の光作者: 貫井徳郎出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2015/01/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る クライム・ノベルである。が、そこは作者のこと、犯罪の昏いリアリティを演出しながら、従来の犯罪小説のある種のイメージを裏切…

中山七里『テミスの剣』(文藝春秋)レビュー

テミスの剣作者: 中山七里出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2014/10/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 作者の、現実の事件をモデルにしたと思しき物語を読んだとき、その題材を扱う手つきに、正直、違和感を覚えてきた。不謹慎とかいう…