2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧

辻村深月『水底フェスタ』(文藝春秋)レビュー

水底フェスタ作者: 辻村深月出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2011/08/24メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 14回この商品を含むブログ (103件) を見る この作者が偉いと思うのは、作家的進展のやり方を、作風の転換によってでなく、作風の幅を拡げるかた…

安萬純一『ガラスのターゲット』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ 「(…)それはともかく、タヌキの生態というのも謎に包まれている。これほど人間の生活圏に近いところで生きているのに、その暮らしぶりはほとんど判っていない。(…)」(p.263) ガラスのターゲット作者: 安萬純一出版社/メーカー: 東京創元社…

東野圭吾『マスカレード・ホテル』(集英社)レビュー

マスカレード・ホテル作者: 東野圭吾出版社/メーカー: 集英社発売日: 2011/09/09メディア: ハードカバー購入: 4人 クリック: 100回この商品を含むブログ (106件) を見る 職人作家の面目躍如。話の間の持たせ方なんて、連ドラを見てるようですよ。「ホテル」…

真藤順丈『畦と銃』(講談社)レビュー

畦と銃作者: 真藤順丈出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/07/06メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (3件) を見る 農業を暴力的世界へ解体・構築すると、こんな感じに。バナキュラーな語り口の採用が、この活劇小説を過剰にパロディ性を被…

城平京『虚構推理 鋼人七瀬』(講談社ノベルズ)レビュー

虚構推理 鋼人七瀬 (講談社ノベルス)作者: 城平京出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/05/10メディア: 新書購入: 7人 クリック: 125回この商品を含むブログ (54件) を見る キャラクター小説としてのアプローチと、趣向における縛りの強さ、両者があいまって…

麻見和史『石の繭 警視庁捜査一課十一係』(講談社ノベルズ)レビュー

石の繭 警視庁捜査一課十一係 (講談社ノベルス)作者: 麻見和史出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/05/10メディア: 新書 クリック: 5回この商品を含むブログ (4件) を見る タイトルがガチの警察小説を匂わせているが、内容はむしろ従来型の警察小説とは一線…

倉野憲比古『墓地裏の家』(文藝春秋)レビュー

墓地裏の家作者: 倉野憲比古出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2011/07メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (1件) を見る サイコロジーとゴシック・ホラーの融合。心理学的言及が胡散臭さを埋めては撒き散らす、両義的な役割を果たす。本格…

似鳥鶏『まもなく電車が出現します』(創元推理文庫)レビュー

まもなく電車が出現します (創元推理文庫)作者: 似鳥鶏出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2011/05/29メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 37回この商品を含むブログ (42件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッシ…

遠藤武文『パワードスーツ』(講談社)レビュー

パワードスーツ作者: 遠藤武文出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/08/05メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 7回この商品を含むブログ (5件) を見る うわー。受賞後第一作はシラけただけだったけれども、その次のこれは、シュールなクダらなさに悶…

玖村まゆみ『完盗オンサイト』(講談社)レビュー

完盗オンサイト作者: 玖村まゆみ出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/08/09メディア: 単行本 クリック: 15回この商品を含むブログ (20件) を見る 今までの乱歩賞にない作風なので、受賞は当然だと思うけれども、選評読んで、ウエストレイク調のものを期待し…

川瀬七緒『よろずのことに気をつけよ』(講談社)レビュー

よろずのことに気をつけよ作者: 川瀬七緒出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/08/09メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 19回この商品を含むブログ (20件) を見る 伝奇ミステリ。主人公があまり学者っぽくないのはご愛嬌。話運びは上手いのだが、こういう…

貴志祐介『鍵のかかった部屋』(角川書店)レビュー

本日のエピグラフ 「(…)しかし、あまりにも論理一辺倒の思考には弱点もあるんです」/(…)/「いったん犯人が発想した地点に立つことができれば、後から思考の筋道を辿っていくのも容易だということです。(…)」(「鍵のかかった部屋」p.152) 鍵のかかった部屋…

麻耶雄嵩『メルカトルかく語りき』(講談社ノベルス)レビュー

本日のエピグラフ 「さあね。創造するのは犯人の役目だ。私はそれを楽しみながら腑分けするのが趣味だからね」(「死人を起こす」p.42) メルカトルかく語りき (講談社ノベルス)作者: 麻耶雄嵩出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/05/10メディア: 新書購入: 6…

今野敏『化合』(講談社)レビュー

化合作者: 今野敏出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/07/08メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (8件) を見る 時代は二十年前のバブル退潮期、刑事vs検事の構図で、当時の科学捜査の実情を踏まえて、刑事が検察主導の冤罪潰しに奔走する異…

近藤史恵『サヴァイヴ』(新潮社)レビュー

サヴァイヴ作者: 近藤史恵出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/06メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 16回この商品を含むブログ (59件) を見る 『サクリファイス』『エデン』に続く第三弾は、スピンオフ連作だが、完全にスポーツ小説ですね。作者のソリッ…