2013-08-01から1ヶ月間の記事一覧

我孫子武丸『狼と兎のゲーム』(講談社)レビュー

狼と兎のゲーム作者: 我孫子武丸出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/07/25メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (7件) を見る あとがきにもある通り、キング的スリラーを作者のテイストで描いて、やるせない印象を残す結末まで、きっちり…

竹吉優輔『襲名犯』(講談社)レビュー

襲名犯作者: 竹吉優輔出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/08/06メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見る 何年か前に、某誌の評論家座談会で、出席者のひとりが、乱歩賞の常連投稿者がついに受賞したことに対して、受賞してもらわないとあとが…

伊与原新『ルカの方舟』(講談社)レビュー

ルカの方舟作者: 伊与原新出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/06/07メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (4件) を見る あれ。もしかしたらSFミステリだった? 作者が横溝賞を受賞したときに、乱歩賞候補作に残っていた作品を改稿した…

真梨幸子『鸚鵡楼の惨劇』(小学館)レビュー

鸚鵡楼の惨劇作者: 真梨幸子出版社/メーカー: 小学館発売日: 2013/07/23メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る サイコ・スリラーだけれども、作者が求められているのは、こんな感じなのかしらん。アモラルなガジェットを、あくまでB級感の領域…

友井羊『ボランティアバスで行こう!』(宝島社)レビュー

ボランティアバスで行こう!作者: 友井羊出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2013/04/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る デビュー後第一作は、連作短編集で、効かせたギミックが、主題性とカタルシスに直結して、いい感じ。それぞれの人生の…

芦辺拓『奇譚を売る店』(光文社)レビュー

奇譚を売る店作者: 芦辺拓出版社/メーカー: 光文社発売日: 2013/07/18メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る かくも救いがたき因業を、迷うことなく(?)ホラーに仕立てるのは、才覚資質というよりも、度胸と風格ということなのかも。奇譚に捧げ…

伊坂幸太郎『死神の浮力』(文藝春秋)レビュー

死神の浮力作者: 伊坂幸太郎出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/07/30メディア: ハードカバーこの商品を含むブログ (49件) を見る 浮かぶものと沈むもの。いや、浮かべるものが、沈めさせることができるのだろう。作者が、不条理な暴力性を何度も主題に…

松井今朝子『壺中の回廊』(集英社)レビュー

壺中の回廊作者: 松井今朝子出版社/メーカー: 集英社発売日: 2013/06/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 小説の上手さは、濃やかな描写もさることながら、それがテンポというか、言葉配りの調子を整えることに基礎づけられており、読んで…

逢坂剛『バックストリート』(毎日新聞社)レビュー

バックストリート作者: 逢坂剛出版社/メーカー: 毎日新聞社発売日: 2013/06/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る お懐かしや岡坂神策シリーズ最新作。分厚いけれども、快速で一気読みできる。作者の教養を見せつけられながらも、小説の内実…

周木律『眼球堂の殺人 〜The Book〜 』(講談社ノベルス)レビュー

本日のエピグラフ 「(…)神でさえも、ただ書き写すことしかできなかったものが、ザ・ブックなのさ。だから君も、神の実在はともかく、ザ・ブックの実在だけは、是非とも信じたほうが良い。いや、信じろ」(p.15) 眼球堂の殺人 ~The Book~ (講談社ノベルス)作者…

竹内真『図書室のキリギリス』(双葉社)レビュー

図書室のキリギリス作者: 竹内真出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2013/06/19メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (11件) を見る いやー、涙がちょちょぎれるほど、懐かしい本のタイトルが。マガーク少年探偵団は、くるねえ。ブッキッシュ…

加納朋子『はるひのの、はる』(幻冬舎)レビュー

はるひのの、はる作者: 加納朋子出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2013/06/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (19件) を見る 作者の完全復調を期待させる連作短編集。シリーズとしては第三作目だけれども、インターバルを置いたのが、作中の体感的なリ…

貫井徳郎『ドミノ倒し』(東京創元社)レビュー

ドミノ倒し作者: 貫井徳郎出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2013/06/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見る 軽ハードボイルドだけれども、もっとファース仕立てでもよかったかも。イノセントな共同体意識に囚われる道化となって、探偵の…

2013年7月版

キングの二分冊中編集は、『ドライバー』のほうが個人的にはいい。情念と衝動を走らせることの生々しい肯定と、過酷な喪の仕事をきっちりと描いた職人芸。『ピーナッツ』は、すぐそばにいる“他者”をめぐる愛憎と妄執の心理スリラー。小説の(脱)構築性とディ…

長岡弘樹『教場』(小学館)レビュー

教場作者: 長岡弘樹出版社/メーカー: 小学館発売日: 2013/06/19メディア: 単行本この商品を含むブログ (27件) を見る この作者の小説は、初期のものから読んでいて、特にデビュー短編集はバラエティがあって愉しめただけに、本書のように、いかにも無骨で渋…

今野敏『宰領 隠蔽捜査5』(新潮社)レビュー

宰領: 隠蔽捜査5作者: 今野敏出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2013/06/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見る 改めて、この主人公を一人称で書くことに、作者がどれほどの賭け金を払っているかに思いを致し、敬服してしまう。深慮と矜持が重…