2007-06-01から1ヶ月間の記事一覧

貫井徳郎『夜想』(文藝春秋)レビュー

夜想作者: 貫井徳郎出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2007/05メディア: 単行本 クリック: 47回この商品を含むブログ (51件) を見る 力作。宮部みゆき的テーマを、いかにもこの作者らしい手法でアプローチしてみせた。サブストーリーが単なるギミックに終わ…

近藤史恵『ふたつめの月』(文藝春秋)レビュー

ふたつめの月作者: 近藤史恵出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2007/05メディア: 単行本 クリック: 8回この商品を含むブログ (42件) を見る 『賢者はベンチで思索する』の続編。だんだんと、若竹七海っぽくなってきているような。ミステリ的な結構は、より心…

島田裕巳『中沢新一批判、あるいは宗教的テロリズムについて』(亜紀書房)レビュー

中沢新一批判、あるいは宗教的テロリズムについて作者: 島田裕巳出版社/メーカー: 亜紀書房発売日: 2007/04/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 43回この商品を含むブログ (40件) を見る あれから時は一巡りして、そして現在、中沢せんせーは伊藤整文学…

原武史『滝山コミューン 一九七四』(講談社)レビュー

本日のエピグラフ (前略)「団塊の世代」に当たる片山とは異なり、三浦は集団主義の怖さを身をもって知っていた。/(中略)もし三浦の世代がこのような戦時体制下の体験を片山の世代に正しく伝えることに成功していたら、「滝山コミューン」はなかったかもしれ…

三土修平『頭を冷やすための靖国論』 小島毅『靖国史観』(ちくま新書)レビュー

本日のエピグラフ 明治の「文明開化」とは、西洋化であるとともに朱子学化でもあったのだ。(小島『靖国史観』P155より) 頭を冷やすための靖国論 (ちくま新書)作者: 三土修平出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2007/01メディア: 新書購入: 1人 クリック: …

祐光正『浅草色つき不良少年団』(文藝春秋)レビュー

本日のエピグラフ しかし、今度は「弔う」ということはどんなことなのかということが分からない。/(中略)/その人がこの世に確かに生きていたのだと憶えていて、そんな街や、そんな時代があったのだと憶えていて、出来うる限り、世に伝えることじゃねえのか…

天野節子『氷の華』(幻冬舎)レビュー

氷の華作者: 天野節子出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2007/03メディア: 単行本 クリック: 12回この商品を含むブログ (20件) を見る ミステリアス7 アクロバット8 サスペンス8 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル38 この時代に夏樹静子っぽい…

桐野夏生『メタボラ』(朝日新聞社)レビュー

メタボラ作者: 桐野夏生出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 2007/05/08メディア: 単行本 クリック: 14回この商品を含むブログ (79件) を見る 作者の小説的主題は、エコノミーの論理に還元されぬ“自由”のありようの追求にあるのだろう。エコノミーの論理、と…

保科昌彦『生還者』(新潮社)レビュー

生還者作者: 保科昌彦出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/04/01メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (17件) を見る 心理サスペンスとして出色の出来映え。極限状況の演出が巧妙で、これは“恐怖”に臨場感がある。“生還者”につきまとう“罪悪…

いしいしんじ『みずうみ』(河出書房新社)レビュー

みずうみ作者: いしいしんじ出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2007/03/16メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 9回この商品を含むブログ (67件) を見る 水、というもはや文学的ガジェットと化した感のある表象から、作者は流動的なイメージを汲み出し、…

養老孟司 内田樹『逆立ち日本論』(新潮選書)レビュー

逆立ち日本論 (新潮選書)作者: 養老孟司,内田樹出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/05/24メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 19回この商品を含むブログ (59件) を見る 「二人の風狂」による「“高級”漫才」。ふたりとも“逆説”の大家だけれども、養老が狷…

関岡英之 和田秀樹『「改革」にダマされるな!』(PHP)レビュー

「改革」にダマされるな! 私たちの医療、安全、教育はこうなる作者: 関岡英之,和田秀樹出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2007/04/12メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 2人 クリック: 3回この商品を含むブログ (7件) を見る 平成「構造改革」批判の決…

2007年上半期本格ミステリベスト5

ああ、気づけばもう梅雨入りしておるではないですか。2007年度上半期(2006年11月〜2007年4月)の〆からずいぶん経ってしもた。またまた、読み残しが多々あれど、という恒例のエクスキューズを付すことになりますが、ワタクシメの私的ベスト5を開陳する次…

柄刀一『空から見た殺人プラン』(祥伝社ノン・ノベル)レビュー

空から見た殺人プラン (ノン・ノベル)作者: 柄刀一出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2007/02/09メディア: 新書 クリック: 2回この商品を含むブログ (22件) を見る ミステリアス8 アクロバット9 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション7 トータル38…

佐藤亜紀『ミノタウロス』(講談社)レビュー

ミノタウロス作者: 佐藤亜紀出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/05/11メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 110回この商品を含むブログ (133件) を見る 『バトル・ロワイアル』のヒット以降、小説・漫画を問わず、不条理というか無意味な“殺しあい”を描い…

第7回「本格ミステリ大賞」発表記念座談会に行ってまいりました

6月10日に行われた件のイベントに行ってきたわけですが、さて何か感想を記そうと思っても、細かいところまで思い出せないです。予想以上にポーっとなっていたみたい。巽昌章氏がツカミに「論理の蜘蛛の巣の中の人です」と言ったのには、ニヤリとした。――で、…

永井するみ『カカオ80%の夏』(理論社)レビュー

カカオ80%の夏 (ミステリーYA!)作者: 永井するみ出版社/メーカー: 理論社発売日: 2007/04/01メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (48件) を見る 作者の力量からいってリーダビリティは保証されているけれども、それよりも、先行世代に対する…

柳広司『漱石先生の事件簿 猫の巻』(理論社)レビュー

漱石先生の事件簿―猫の巻 (ミステリーYA!)作者: 柳広司出版社/メーカー: 理論社発売日: 2007/04/01メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (36件) を見る ミステリアス7 アクロバット8 サスペンス6 アレゴリカル7 インプレッション9 トー…

荻原浩『千年樹』(集英社)レビュー

千年樹作者: 荻原浩出版社/メーカー: 集英社発売日: 2007/03/26メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (24件) を見る …………うーん、今回のは、作者の関心と、こちとらの興味がすれ違ってしまった。寓話的作為が、完全に予測の範囲内。安心して…

海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』(宝島社)レビュー

ジェネラル・ルージュの凱旋作者: 海堂尊出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2007/04/07メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 87回この商品を含むブログ (261件) を見る ほんっっっっっとに、小説が上手いよなあ。テレビドラマ的なキャラクターの約め方を成立さ…

西川美和『ゆれる』(ポプラ社)レビュー

ゆれる作者: 西川美和出版社/メーカー: ポプラ社発売日: 2006/06メディア: 単行本 クリック: 29回この商品を含むブログ (119件) を見る ひとつの“事件”が“決裁”されるまでの道程を、ナラティヴに定位して描いた意欲作。文章技巧にやや不用意なところがあるの…

柳広司『百万のマルコ』(創元推理文庫)レビュー

本日のエピグラフ 「しかしなんですね。つまり連中は、(中略)名前まで改めてしまったわけですね。(中略)いかにも神の栄光に浴さない異教徒、未開人の考えそうなことだ」/「“最初に言葉ありき”。(中略)そう教えているのは、ほかならぬ主御自身のお言葉、つま…

深水黎一郎『ウルチモ・トロッコ 犯人はあなただ!』(講談社ノベルズ)レビュー

ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ ! (講談社ノベルス)作者: 深水黎一郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/04/06メディア: 新書 クリック: 10回この商品を含むブログ (91件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレ…