2013-02-01から1ヶ月間の記事一覧

佐々木譲『人質』(角川春樹事務所)レビュー

人質作者: 佐々木譲出版社/メーカー: 角川春樹事務所発売日: 2012/12/17メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 警察小説が、組織小説もしくは反組織小説、あるいは情報小説としてしか価値を持たないのなら、早晩廃れるのは確実なわけです。本作…

伊坂幸太郎『残り全部バケーション』(集英社)レビュー

残り全部バケーション作者: 伊坂幸太郎出版社/メーカー: 集英社発売日: 2012/12/05メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 15回この商品を含むブログ (52件) を見る 快調ですね。作者の一筋縄でいかないモラリッシュな側面がシニカルなユーモアをささえる、こ…

米澤穂信『リカーシブル』(新潮社)レビュー

リカーシブル作者: 米澤穂信出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2013/01/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 13回この商品を含むブログ (36件) を見る 異世界構築というより、作者が従来の作風からやや脱しようとする意識が、小説に緊張感をもたらしている…

今野敏『欠落』(講談社)レビュー

欠落作者: 今野敏出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/01/09メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (4件) を見る 相変わらず面白いですよ。導入部が無骨な語り口ながら、話の展開にドライブをかけるのが上手いことうまいこと。サスペンスがラ…

篠田節子『ブラックボックス』(朝日新聞出版)レビュー

ブラックボックス作者: 篠田節子出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2013/01/04メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (10件) を見る 「ブラックボックス」というのは、即ちザ・システムということでもある。ハイテクファームと下層労働者…

浅羽通明『時間ループ物語論』(洋泉社)レビュー

時間ループ物語論作者: 浅羽通明出版社/メーカー: 洋泉社発売日: 2012/10/25メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 4人 クリック: 152回この商品を含むブログ (32件) を見る 一読、たぶん現在における保守側の批評の最も洗練されたもののひとつに数えられ上…

吉本隆明『吉本隆明が最後に遺した三十万字〈上巻〉「吉本隆明、自著を語る」』(ロッキングオン)レビュー

吉本隆明が最後に遺した三十万字〈上巻〉「吉本隆明、自著を語る」作者: 吉本隆明出版社/メーカー: ロッキングオン発売日: 2012/12/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 22回この商品を含むブログ (7件) を見る 渋谷陽一インタビューによる『SIGHT』連載…

三津田信三『のぞきめ』(角川書店)レビュー

のぞきめ作者: 三津田信三出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2012/11/30メディア: 単行本 クリック: 10回この商品を含むブログ (13件) を見る 作者の代表作への言及がちらっとあることから、読者は多少身構えるだろう。作者の物…

歌野晶午『コモリと子守り』(光文社)レビュー

本日のエピグラフ 「もう手遅れかもしれない。けど、まだ間に合うと信じて、希望を捨てず、こっちに引き戻さないと。それができるのは近くにいる人間だけ。近くというのは、物理的な距離ではない」(p.186) コモリと子守り作者: 歌野晶午出版社/メーカー: 光…

2013年1月版

『喪失』は、読者を引き付けるイベントやガジェットを次々と投入してくる印象があり、エドガー賞受賞も頷けるけれども、小説の吸引力が増すのは後半からかな。『白鳥泥棒』は、大部の作品ながら、翻訳文がこなれていて上質なので、臆せず読み進めてほしい。…