2013-05-01から1ヶ月間の記事一覧

大澤真幸『生権力の思想 事件から読み解く現代社会の転換』(ちくま新書)レビュー

生権力の思想―事件から読み解く現代社会の転換 (ちくま新書)作者: 大澤真幸出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2013/02/01メディア: 新書購入: 1人 クリック: 11回この商品を含むブログ (23件) を見る 著者の3・11後のリアクションには、かなり失望したの…

川瀬七緒『シンクロニシティ 法医昆虫学捜査官』(講談社)レビュー

シンクロニシティ 法医昆虫学捜査官作者: 川瀬七緒出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/04/19メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (12件) を見る シリーズ第二弾。伝奇ミステリ色が強まっているのをみると、こちらの方が作者の本来のフィ…

霞流一『落日のコンドル』(早川書房)レビュー

本日のエピグラフ 「ああ、殺し屋稼業のプライドと技量と、そして賞金の絡み合った迷路だな、戦いのパズルか」/「ああ、パズル・ロワイヤルだよ」(p.154) 落日のコンドル (ミステリワールド)作者: 霞流一出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2013/04/24メディ…

山田正紀『復活するはわれにあり』(双葉社)レビュー

復活するはわれにあり作者: 山田正紀出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2013/04/17メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 敬服。オールラウンドプレーヤーたる作者の、復活どころか本領発揮の痛快作。極限状況下のアクションスリラーに超現実的な…

大門剛明『海のイカロス』(光文社)レビュー

海のイカロス作者: 大門剛明出版社/メーカー: 光文社発売日: 2013/04/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る 次世代エネルギーを題材にした倒叙型本格。プリミティブなドラマ性が、幾重にも仕組まれた完全犯罪のトラップによ…

碇卯人『杉下右京の密室』(朝日新聞出版)レビュー

杉下右京の密室作者: 碇卯人出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2013/03/07メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (5件) を見る 碇名義最新作。特殊ケースの密室である一話目と、特殊状況ケースの密室である二話目のコントラストが、効いて…

東野圭吾『夢幻花(むげんばな) 』(PHP研究所)レビュー

夢幻花(むげんばな)作者: 東野圭吾出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2013/04/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (29件) を見る 十年近く前の埋もれていた作品が甦ったかたちだけれども、この作者の話の進め方、小説の構築性のあり方…

笹本稜平『突破口 組織犯罪対策部マネロン室』(幻冬舎)レビュー

突破口 組織犯罪対策部マネロン室作者: 笹本稜平出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2013/02/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 登場人物の設定に十字架を背負わせているけれども、物語は割合ストレートに進む。政治経済のフィクサーが絡む…

大倉崇裕『福家警部補の報告』(東京創元社)レビュー

福家警部補の報告 (創元クライム・クラブ)作者: 大倉崇裕出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2013/02/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (17件) を見る 第三集は、シリーズの方向性に深みを持たせた格好になった。倒叙もののオーソドックスな面白さを…

門井慶喜『ホテル・コンシェルジュ』(文藝春秋)レビュー

ホテル・コンシェルジュ作者: 門井慶喜出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/02メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 作者が新しい題材を選んだのかと思いきや、探偵役をそのようにしたもので、短編集全体としてみれば、作者の初期作品に近…

2013年4月版

ウォルターズのは、評判通りの傑作。女性作家の性差は、パニック小説を書くときに露骨に表れると前々から思っていたけれども、ますます確信が深くなった。『雪の女』は、フィンランド発、社会の諸相を串刺しにするスタンスをオーソドックスに受け継ぎながら…

深木章子『螺旋の底』(原書房)レビュー

本日のエピグラフ 実際の話、(…)人間は昔から死者の遺骸の上に生者の生活を築いてきた。人々が笑顔で洗礼を受け、結婚式を挙げる教会というもの自体が、実は聖なる墓場なのだ。(p.27) 螺旋の底 (ミステリー・リーグ)作者: 深木章子出版社/メーカー: 原書房発…

石持浅海『カード・ウォッチャー』(角川春樹事務所)レビュー

カード・ウォッチャー作者: 石持浅海出版社/メーカー: 角川春樹事務所発売日: 2013/03/13メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る 化学メーカーの研究所を見舞った、一日の悲喜劇。作者の会社ミステリーの新境地であるけれども、「カード・ウォッ…

深水黎一郎『美人薄命』(双葉社)レビュー

美人薄命作者: 深水黎一郎出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2013/03/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 切ない話。じんわりとくるよね。稗史なるものに対する作者の感度が、ミステリーの構造と、小説的アプローチに反映されて、こんなにス…