2013-07-01から1ヶ月間の記事一覧

西澤保彦『ぬいぐるみ警部の帰還』(東京創元社)レビュー

ぬいぐるみ警部の帰還作者: 西澤保彦出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2013/06/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル8 インプレッション8 トータル39 論理のアクロバットの…

田中啓文『シャーロック・ホームズたちの冒険』(東京創元社)レビュー

シャーロック・ホームズたちの冒険作者: 田中啓文出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2013/05/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る ミステリ・パロディにホラーを持ってこられるのは、強いよね。忠臣蔵のやつは、オチに感涙。八雲のやつは…

加藤典洋 高橋源一郎 『吉本隆明がぼくたちに遺したもの 』(岩波書店)レビュー

吉本隆明がぼくたちに遺したもの作者: 加藤典洋,高橋源一郎出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2013/05/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る 高橋は詩作家としての像から、吉本思想にアプローチして、加藤は思想家としての像から、それをす…

〈疎外〉社会の政治学

吉本隆明は、名著『カール・マルクス』において、「人間の自然にたいする関係が、すべて人間と人間化された自然(加工された自然)となるところでは、マルクスの〈自然〉哲学は改訂をひつようとしている」と述べている。「つまり農村が完全に絶滅したところで…

筒井康隆『聖痕』(新潮社)レビュー

聖痕作者: 筒井康隆出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2013/05/31メディア: 単行本この商品を含むブログ (13件) を見る 要するに、去勢小説なワケです。日本の現代史と主人公を重ね合わせる意図は露骨だけれども、3・11から逆算して、ゆるやかな終末的観想…

折原一『グランドマンション』(光文社)レビュー

グランドマンション作者: 折原一出版社/メーカー: 光文社発売日: 2013/05/18メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る この大ベテランが、最近またアグレッシブになっている気がする。本作は、紛れもなく近年のベストで、本格からホラーからブラッ…

江國香織『はだかんぼうたち』(角川書店)レビュー

はだかんぼうたち作者: 江國香織出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2013/03/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (13件) を見る “物語”の内容だけ見てみれば、ストーリーラインを追うのを強いる構成になっているかと思いき…

石持浅海『わたしたちが少女と呼ばれていた頃』(祥伝社ノン・ノベル)レビュー

わたしたちが少女と呼ばれていた頃 (碓氷優佳シリーズ)作者: 石持浅海出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2013/05/16メディア: 新書この商品を含むブログ (12件) を見る 外見はラノベ仕様、と思わせておいて、内容は作者の逆説のアクロバットが唸るうなる。もは…

2013年上半期本格ミステリベスト5

2013年上半期(2012年11月〜2013年4月)は、結構な感じでタマが揃いました。ベテランと新鋭、ちょうどバランスがとれた格好。でも、いちばんキタのは、中町信のブレイクだったり(他の作品も売れてほしいなあ)。 犯罪ホロスコープII 三人の女神の問題 (カッ…

松本寛大『妖精の墓標』(講談社ノベルス)レビュー

本日のエピグラフ 「妖精というのは一種の幻覚なのでしょうか」/「幻覚といえば幻覚、夢といえば夢なんでしょうが、そうした単純なものでもありません。もっと実在感があるし……」(p.44) 妖精の墓標 (講談社ノベルス)作者: 松本寛大出版社/メーカー: 講談社…

深津十一『「童石」をめぐる奇妙な物語』(宝島社)レビュー

「童石」をめぐる奇妙な物語 (『このミス』大賞シリーズ)作者: 深津十一出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2013/03/11メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 今年のこのミス大賞の優秀作はイケる、という評判があるみたいなので。文章センスは抜群。平易…

北山猛邦『人魚姫 探偵グリムの手稿』(徳間書店)レビュー

人魚姫 探偵グリムの手稿作者: 北山猛邦出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2013/03/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (13件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル8 インプレッション7 トータル38 もうちょっとディテ…

2013年6月版

『シスブラ』は、思いのほか軽妙な文体がイノチの作品。単なるノワール系ロード・ノベルではなく、アウト・ロー、法‐外なものたちの抱える滑稽さと悲哀に焦点が絞られ、まとまりがいいのだ。われらがホームズもまた、法‐外な者だったことを改めて教えてくれ…