2018-01-01から1年間の記事一覧

石持浅海『崖の上で踊る』(PHP研究所)レビュー

崖の上で踊る作者: 石持浅海出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2018/10/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 作者が執拗に描き続けるインナーサークルを、古典的な政治図式である敵/味方のロジックに蹂躙させてみせた怪作。謎解きが消去…

川澄浩平『探偵は教室にいない』(東京創元社)レビュー

探偵は教室にいない作者: 川澄浩平出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/10/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 前回のゾンビ小説が大ウケしたあとの今回なもんだから、マトモなだけじゃインパクト弱状態なところへ、中坊の日常の謎っ…

大倉崇裕『死神刑事』(幻冬舎)レビュー

死神刑事作者: 大倉崇裕出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2018/09/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る 面白く読める。設定の印象の強さとは裏腹に、個々の物語の展開はバラエティに富んでいて、作者の面目躍如といったところだが、器用に話…

似鳥 鶏『叙述トリック短編集』(講談社)レビュー

叙述トリック短編集作者: 似鳥鶏,石黒正数出版社/メーカー: 講談社発売日: 2018/09/20メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (4件) を見る ネタが過去の某怪作とややかぶったけれども、ただ作者のアイロニカルな作風をさらにアイロニカルに…

我孫子武丸『凜の弦音』(光文社)レビュー

凜の弦音作者: 我孫子武丸出版社/メーカー: 光文社発売日: 2018/10/17メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る おお、こういうものも描くのね、と新鮮な感じ。日常の謎系の結構に成長小説がごく自然に絡まっているので、弓道に詳…

島田荘司『鳥居の密室  世界にただひとりのサンタクロース 』(新潮社)レビュー

鳥居の密室: 世界にただひとりのサンタクロース作者: 島田荘司出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2018/08/31メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 今年の御大からのクリスマスストーリーは、密室事件として帰結した、この社会の片隅の善意の行く…

道尾秀介『スケルトン・キー』(KADOKAWA)レビュー

スケルトン・キー作者: 道尾秀介出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2018/07/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 作者の作品群の中では、もっとも伊坂幸太郎的な小説世界に、寓話的に接近した印象。従来の作者の小説の手ざわりは活きている…

大山誠一郎『アリバイ崩し承ります』(実業之日本社)レビュー

アリバイ崩し承ります作者: 大山誠一郎出版社/メーカー: 実業之日本社発売日: 2018/09/07メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る 上質の推理コント集。アリバイ崩しテーマで全編統一しているが、バリエーションの拡がりには限界…

松嶋智左 『虚の聖域 梓凪子の調査報告書 』(講談社)レビュー

虚の聖域 梓凪子の調査報告書作者: 松嶋智左出版社/メーカー: 講談社発売日: 2018/05/17メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 今年の福ミス受賞作は快作だ(イヤな話だけれども)。PI小説のオーソドキシーに則って手堅く仕上げている印象が…

大倉崇裕『琴乃木山荘の不思議事件簿』(山と渓谷社)レビュー

琴乃木山荘の不思議事件簿作者: 大倉崇裕出版社/メーカー: 山と渓谷社発売日: 2018/06/16メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る 福家警部補が不完全燃焼気味だったのが、こっちで意外にも本格スピリットを満喫。山岳ミステリ短…

倉知淳『ドッペルゲンガーの銃』(文藝春秋)レビュー

ドッペルゲンガーの銃作者: 倉知淳出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2018/09/13メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 同じ版元の前の名探偵キャラ片桐大三郎と比べると、かえってインパクトが小さい、と思えるのは、やっぱり印象が薄いからか…

市川憂人『グラスバードは還らない』(東京創元社)レビュー

グラスバードは還らない作者: 市川憂人出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/09/12メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る やや狷介な雰囲気を漂わせる作風だが、重層的な構成の意表を突く展開、畳み掛けるような逆転劇が、息を吞むほどの出…

柄刀一『ミダスの河 名探偵・浅見光彦VS.天才・天地龍之介』(祥伝社)レビュー

ミダスの河 名探偵・浅見光彦VS.天才・天地龍之介作者: 柄刀一出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2018/07/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 内田康夫流伝奇ミステリの要諦は、コケおどしはタイトルだけというふうに思っているので、オーソ…

『新潮45 2018年10月号 』 (新潮社)レビュー

新潮45 2018年10月号出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2018/09/18メディア: 雑誌この商品を含むブログ (4件) を見る 廃刊じゃなかった休刊決まってご愁傷様。まあ呆れたっていうかね。品位に欠けたエッセーを掲載せざるを得ないほど、汲々としていたっていう…

芦辺拓『帝都探偵大戦 』(東京創元社)レビュー

帝都探偵大戦 (創元クライム・クラブ)作者: 芦辺拓出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/08/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 論創ミステリ叢書のユーザーへのボーナスみたいなコンセプトだなあ。でも、いたずらに長いもんにならな…

大倉崇裕『福家警部補の考察』(東京創元社)レビュー

福家警部補の考察 (創元クライム・クラブ)作者: 大倉崇裕出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/05/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る シリーズ第五弾でもコロンボオマージュの空気感は相変わらずだが、どうにもワキ役が冴えないね。…

深木章子『消えた断章 』(光文社)レビュー

消えた断章作者: 深木章子出版社/メーカー: 光文社発売日: 2018/03/15メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る 退職刑事&仁木兄妹的な設定で、ロスマク的テーマにアプローチしたような凝った物語だが、本格ミステリ的プロットは…

三津田信三『碆霊の如き祀るもの 』(原書房)レビュー

碆霊の如き祀るもの (ミステリー・リーグ)作者: 三津田信三出版社/メーカー: 原書房発売日: 2018/06/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 三年ぶりのシリーズ新作もまた、何ともいかがわしい設定が目を見張る。読者の鼻っ面を取って引きず…

中山七里『悪徳の輪舞曲』(講談社)レビュー

悪徳の輪舞曲作者: 中山七里出版社/メーカー: 講談社発売日: 2018/03/15メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 御子柴サーガもここまでくれば、完結編も間近という感じがするけれども。己の断ち切ったつもりの絆という名の因縁が、悪意を孕むか…

折原一『ポストカプセル』(光文社)レビュー

ポストカプセル作者: 折原一出版社/メーカー: 光文社発売日: 2018/06/19メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る ポストカプセルというイイ話系のものを、毒壺に放り込んでいたずらに撹拌させれば、こんなハナシが出来上がる。物語は、ほとんどブ…

鳥飼 否宇『隠蔽人類』(光文社)レビュー

隠蔽人類作者: 鳥飼否宇出版社/メーカー: 光文社発売日: 2018/04/19メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る まあ人類学的バカミスなんですが。登場人物がバンバン容赦なく殺されるので、気前いいなあ、と思ったら、オチがドバー…

道尾秀介『風神の手』(朝日新聞出版)レビュー

風神の手作者: 道尾秀介出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2018/01/04メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る ミステリー的興味よりも、作者の物語作家としての構築性を堪能するつもりで読んだ方が、期待を裏切られないと思う。語り口は悠揚…

芦沢央『火のないところに煙は』(新潮社)レビュー

火のないところに煙は作者: 芦沢央出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2018/06/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 怪談噺をミステリ的額縁で飾る構成は、三津田信三の作風を想起させるが、心理サスペンスの味わいを全話抜かりなく施している…

原 りょう『それまでの明日』(早川書房)レビュー

それまでの明日作者: 原りょう出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/02/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (15件) を見る なんだか今になってもなお、作者にはチャンドラーの亡霊がつきまとっているのだなあ、とPR文をみて切なくなった。寡作なだ…

近藤史恵『わたしの本の空白は 』(角川春樹事務所)レビュー

わたしの本の空白は作者: 近藤史恵出版社/メーカー: 角川春樹事務所発売日: 2018/05/11メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (4件) を見る 記憶喪失モノの定番のストーリー展開を、ラブストーリーに重ね合わせるところまでは多くの書き手が…

小林泰三『ドロシイ殺し』(東京創元社)レビュー

ドロシイ殺し (創元クライム・クラブ)作者: 小林泰三出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/04/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る もうここまでくると、作者の目論見が奈辺にあるのか、凡人にはわかりにくくなるわけで。SFミステリ…

下村敦史『黙過』(徳間書店)レビュー

黙過 (文芸書)作者: 下村敦史出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2018/04/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 貪欲なまでに作風の幅を拡げて、快進撃を続ける作者だが、本作もメディカル・サスペンスの意欲的な力作で、本業の医師たちが数…

連城三紀彦『悲体 』(幻戯書房)レビュー

悲体作者: 連城三紀彦出版社/メーカー: 幻戯書房発売日: 2018/03/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る 懇切丁寧な巻末解説とセットで、作品の輪郭が浮かび上がってくる。作者におけるミステリアスなものの淵源が、父と母の間の一筋縄ではい…

林 泰広『分かったで済むなら、名探偵はいらない 』(光文社)レビュー

分かったで済むなら、名探偵はいらない作者: 林泰広出版社/メーカー: 光文社発売日: 2017/12/14メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (3件) を見る 東川篤哉、石持浅海と同期の作者の、まあとにかく再デビューとでもいうべき作品。 凝らし…

『宇宙よりも遠い場所』(KADOKAWA メディアファクトリー)レビュー

宇宙よりも遠い場所 1(イベントチケット優先販売申券) [Blu-ray]出版社/メーカー: KADOKAWA メディアファクトリー発売日: 2018/03/28メディア: Blu-rayこの商品を含むブログ (17件) を見る このアニメは今年を代表する傑作だ、という評価が固まってきている…