2015-01-01から1年間の記事一覧

2015年下半期本格ミステリベスト5

2015年下半期(2015年5月〜10月)に刊行されたものから。順位付けナシです。 交換殺人はいかが? じいじと樹来(じゅらい)とミステリー作者: 深木章子出版社/メーカー: 光文社発売日: 2015/06/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (6…

法月綸太郎『怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関』(講談社)レビュー

怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関作者: 法月綸太郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/07/09メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (9件) を見る ノリリンは、こういう方向性でしばらくいくの? SF的ガジェットで、作者の何がはぐらか…

井上真偽『その可能性はすでに考えた』(講談社ノベルズ)レビュー

その可能性はすでに考えた (講談社ノベルス)作者: 井上真偽出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/09/10メディア: 新書この商品を含むブログ (15件) を見る 本格ミステリ界隈では評判がよく、実際面白い。だが、本来は、もっと面白くなるはずではないか。スノ…

深緑野分『戦場のコックたち』(東京創元社)レビュー

戦場のコックたち作者: 深緑野分出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2015/08/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (28件) を見る 今年のベストテンで高評価を得た力作で、連作短編系ミステリーの袋小路を、全面的に暴力性が覆う世界に埋め込むことで、…

2015年10月版

クイーンの「外典」は、やっぱり密室トリックとその手がかりの出し方が面白かった。当時の味といえばそうなのだが、現在の日本の若手作家が、同じ原案を差し出されたら、どうカタチにするか、想像するのも一興。ルメートルの第一次大戦トラウマ小説は、近代…

初野晴『惑星カロン』(KADOKAWA)レビュー

惑星カロン作者: 初野晴出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2015/09/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (12件) を見る アニメ化の決まったこのシリーズだけれども、実は作者にとってまだ大団円に向けて遅延させたい意識があるのかな、とも。作…

島田荘司『新しい十五匹のネズミのフライ ジョン・H・ワトソンの冒険 』(新潮社)レビュー

新しい十五匹のネズミのフライ: ジョン・H・ワトソンの冒険作者: 島田荘司出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2015/09/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る パスティーシュというより、島田印の19世紀英国小説が、小説をストレートに目指し…

有栖川有栖『鍵の掛かった男』(幻冬舎)レビュー

鍵の掛かった男作者: 有栖川有栖出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2015/10/08メディア: 単行本この商品を含むブログ (14件) を見る 作者があとがきで滲ませているのは、新境地であることを自認する、ということだろう。作者は、ロジカルな作風を維持しながら…

倉知淳『片桐大三郎とXYZの悲劇』(文藝春秋)レビュー

片桐大三郎とXYZの悲劇作者: 倉知淳出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2015/09/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る どうもこの作者が、ユーモラスな作風にもかかわらず、狷介な印象を受けてしまうのは、やっぱり寡作なのがいけないのかし…

大山誠一郎『赤い博物館』(文藝春秋)レビュー

赤い博物館作者: 大山誠一郎出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2015/09/19メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 警察小説の型を借りて本格ミステリを書く場合、作中で扱われている警察機構自体に何らかのギミックを仕掛けないと、納まりが悪く…

2015年9月版

『その罪』は、ドラマ作りの確かさでぐいぐい読ませる。訴求力を持たせるような物語の構築性が、鼻白むという人もいるだろうが、小説としての厚みを獲得したことも確かなことだ。同じ法廷ものでも『弁血』は破れかぶれ感がとっても心地いい(笑)。設定が設定…

河合莞爾『救済のゲーム』(新潮社)レビュー

救済のゲーム作者: 河合莞爾出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2015/06/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 推薦文を寄せているのが本格プロパーの人ではないので、本格ファンには訴求していないのかもしれないが、物語性と構築性を兼ね備え…

深木章子『ミネルヴァの報復』(原書房)レビュー

ミネルヴァの報復 (ミステリー・リーグ)作者: 深木章子出版社/メーカー: 原書房発売日: 2015/08/17メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 作者の新キャラクターの第二弾だが、予断を許さぬ展開がサスペンスを醸し出すとともに、重層的なギミッ…

深木章子『交換殺人はいかが? じいじと樹来(じゅらい)とミステリー』(光文社)レビュー

交換殺人はいかが? じいじと樹来(じゅらい)とミステリー作者: 深木章子出版社/メーカー: 光文社発売日: 2015/06/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (6件) を見る いやー、何というか、このホンモノ感。“本格”を読んだって感じさせ…

呉勝浩『道徳の時間』(講談社)レビュー

道徳の時間作者: 呉勝浩出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/08/05メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 今年の乱歩賞は、選評を見る限り低調なようだったが、受賞作である本作は、個人的には満足する方。おそらくは、ミステリーとしてユニー…

2015年8月版

レンデルもジェイムズの後を追うように………。邦訳の新刊は二十年ほど前の作品だが、ディスコミュニカティブな事態をシニカルに眺める意識は、たとえばハイスミス的な状況に翻弄される主体の変成ぶりを興趣に据えるのとは、確かに相容れないと思わせる。やっぱ…

薬丸岳『アノニマス・コール』(KADOKAWA)レビュー

アノニマス・コール作者: 薬丸岳出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2015/06/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る ストレートなサスペンスだが、設定はちょっとややこしい。トリッキーな演出を施して、クライマックスのカタルシス…

米澤穂信『王とサーカス』(東京創元社)レビュー

王とサーカス作者: 米澤穂信出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2015/07/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (40件) を見る 作者にとってのターニング・ポイントが、前年の短編集『満願』に結果的になったのは、自身にとって幸福な事態であったと思う…

下村敦史『生還者』(講談社)レビュー

生還者作者: 下村敦史出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/07/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (13件) を見る 山岳ミステリはツボではないので、どんなもんかと探るように読み始めたが、いやきっちりとミステリとしての構築性を堪能できて大満足。…

2015年7月版

『エンジェル』読んだ。いやあ、いろんなもん詰め込んだぶん、ながかったねえ(笑)。ソフィスティケートされているようではぐらかされたり、間延びしている感じが心地よくなったり、読んでるうちに作者の妙なノリにハマることが、読者が救われる道かね。アク…

藤崎翔『私情対談』(KADOKAWA)レビュー

私情対談作者: 藤崎翔出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2015/06/27メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 横溝賞受賞後第一作は、期待に応えたと思う。対談記事と連作短編形式の合わせ技は、予断を許さぬサスペンスを十分醸成している。ブラ…

深水黎一郎『ミステリー・アリーナ』(原書房)レビュー

ミステリー・アリーナ (ミステリー・リーグ)作者: 深水黎一郎出版社/メーカー: 原書房発売日: 2015/06/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (11件) を見る なんか、ミステリーの“作者”が、自分以外のあらゆるアクターに対して、悪態をついているような小…

天祢涼『謎解き広報課』(幻冬舎)レビュー

謎解き広報課作者: 天祢涼出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2015/05/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 連作形式のお仕事系ミステリーだが、作者に対する期待値には応えてくれる。幻想系とも漆原シリーズのようなファースとも、それとはき…

神谷一心『たとえ、世界に背いても』(講談社)レビュー

たとえ、世界に背いても作者: 神谷一心出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/05/13メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る 今年の福ミスも一定の満足感を得られた。カタストロフィ・サスペンスとでもいうべきか、それとも、史上…

中山七里『ヒポクラテスの誓い』(祥伝社)レビュー

ヒポクラテスの誓い作者: 中山七里出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2015/05/14メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る たとえば柄刀一の知的好奇心がアモルファスな破天荒さを感じさせるのに対して、この作者の知的興味は対象に接する深度から措…

2015年6月版

ウォルターズのはたしかに力作で、読み応えはあるのだけれども、ワタクシ的には今一つノレなかった面があり。作者の主題的意識とこちらの期待感がすれ違ったのだろう。『夏沈』は、いかにも向こうのリーダーズ・クラスが食いつきそうな内容だなあ、という印…

2015年上半期本格ミステリベスト5

2015年上半期(2014年11月〜2015年4月)のベストは順不同で下の三作で、看板に偽りアリ。何というか、いよいよ日本の本格シーンもターニングポイントに入ってきたのかな、と。というわけだからではないですが、私的な事情で、ブログ更新の頻度が著しく下が…

彩藤アザミ『サナキの森』(新潮社)レビュー

サナキの森作者: 彩藤アザミ出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2015/01/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル38 新潮ミステリー大賞初回の受賞作は…

小島正樹『浜中刑事の妄想と檄運』(南雲堂)レビュー

浜中刑事の妄想と檄運 (本格ミステリー・ワールド・スペシャル)作者: 小島正樹出版社/メーカー: 南雲堂発売日: 2015/04/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る ミステリアス8 アクロバット9 サスペンス8 アレゴリカル7 インプレッション…

沢村浩輔『北半球の南十字星』 (東京創元社)レビュー

北半球の南十字星 (ミステリ・フロンティア)作者: 沢村浩輔出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2015/01/29メディア: 単行本この商品を含むブログを見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス8 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル39 デビュ…