2010-01-01から1年間の記事一覧

2010年下半期本格ミステリベスト5

今年もやっぱり、下半期2010年5月〜10月に力作が集中しました。こういうのを、あまり構造的なことにされても…………。今年度は、新人の意欲作が、本格フィールドを救った感がある。 ボディ・メッセージ作者: 安萬純一出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2010/1…

柄刀一『天才・龍之介がゆく! 人質ゲーム、オセロ式』(祥伝社ノン・ノベル)レビュー

本日のエピグラフ 状況と情報の変化に添って、何度か反転した龍之介の推理。(p.5) 人質ゲーム、オセロ式 (天才・龍之介がゆく!)作者: 柄刀一出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2010/10/29メディア: 新書この商品を含むブログ (4件) を見る ミステリアス10 …

江國香織『抱擁、あるいはライスには塩を』(集英社)レビュー

抱擁、あるいはライスには塩を作者: 江國香織出版社/メーカー: 集英社発売日: 2010/11/05メディア: ハードカバー購入: 3人 クリック: 79回この商品を含むブログ (52件) を見る 小説のテーマは、束縛と自由。“家族”がその外部である“社会”とは対立する規範を…

倉阪鬼一郎『新世界崩壊』 (講談社ノベルス)レビュー

新世界崩壊 (講談社ノベルス)作者: 倉阪鬼一郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/09/07メディア: 新書 クリック: 12回この商品を含むブログ (14件) を見る 今年度のシメは、新本格を崩壊させるほどのギミックが炸裂する本作を。って、いいすぎ。でも、新…

海堂尊『アリアドネの弾丸』(宝島社)レビュー

アリアドネの弾丸作者: 海堂尊出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2010/09/10メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 79回この商品を含むブログ (97件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス8 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル39 ワタ…

野崎六助『日本探偵小説論』(水声社)レビュー

日本探偵小説論作者: 野崎六助出版社/メーカー: 水声社発売日: 2010/10メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (3件) を見る 日本近代文学史、日本探偵小説史を脱構築する試み。この一連の論述での賭け金はなにか。それは、都市的「群集」の中…

飛鳥部勝則『黒と愛』(早川書房)レビュー

本日のエピグラフ 「和洋折衷の日本城郭なんて想像もつかない」/「建築にフリークがあるとしたら、まさにあれだよ」(p.21) 黒と愛 (ハヤカワ・ミステリワールド)作者: 飛鳥部勝則,笹井一個出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2010/09/22メディア: 単行本購入…

小島正樹『四月の橋』(講談社ノベルズ)レビュー

四月の橋 (講談社ノベルス)作者: 小島正樹出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/09/07メディア: 新書 クリック: 12回この商品を含むブログ (6件) を見る いいですね。こういう作品をも書けるっていうのは、作者の確かな力量を読者に改めて示すもの。犯罪の因…

湊かなえ『往復書簡』(幻冬舎)レビュー

往復書簡作者: 湊かなえ出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2010/09/21メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 43回この商品を含むブログ (76件) を見る ちょい紛らわしい各タイトルのせいで、最終話の最後まで、この純粋短編集を、連作長編かと思ったです。だけ…

長岡弘樹『線の波紋』(小学館)レビュー

線の波紋作者: 長岡弘樹出版社/メーカー: 小学館発売日: 2010/09/29メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (4件) を見る 連作短編集に新趣向。ひとつの幼女誘拐事件に、付随したいくつかのミステリー。作者の堅実な筆致は、小説の立体的構成に…

内田樹『武道的思考』(筑摩選書)レビュー

武道的思考 (筑摩選書)作者: 内田樹出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2010/10/15メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 44回この商品を含むブログ (28件) を見る 記念すべき筑摩選書シリーズの劈頭を飾るのは、内田樹の武道論集。フランス現代思想がわが国に…

本城雅人『W(ダブル)』(徳間書店)レビュー

W (ダブル)作者: 本城雅人出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2010/09/16メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 3回この商品を含むブログを見る ディテールのリアリティが、スポーツ紙記者出身の作者ならではと思わせる。アメリカの競馬界の内幕と日本の競馬…

近藤史恵『あなたに贈るX(キス)』(理論社)レビュー

あなたに贈るキス (ミステリーYA!)作者: 近藤史恵,今日マチ子出版社/メーカー: 理論社発売日: 2010/07/28メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 15回この商品を含むブログ (24件) を見る ジュブナイル向けロマンティックな設定かと思いきや、残酷で少し甘美な…

牧薩次『郷愁という名の密室』(小学館)レビュー

郷愁という名の密室作者: 牧薩次出版社/メーカー: 小学館発売日: 2010/10/26メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (9件) を見る あとがき(辻真先のほうの)に、凄みを感じますね。こういう苛烈な経験があるひとが、戦後のサブカルを支えたんで…

蓮見恭子『女騎手』(角川書店)レビュー

女騎手作者: 蓮見恭子出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2010/09/25メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (2件) を見る 面白かったです。登場人物の描きわけや話運びは堂に入っていて、クライマックスに向けての…

中山七里『おやすみラフマニノフ』(宝島社)レビュー

本日のエピグラフ それってガチガチの運命論じゃないだろうか――でも、選ばれる人間はいずれ選ばれる、という言葉は不思議に腑に落ちた。(p.183) おやすみラフマニノフ (『このミス』大賞シリーズ)作者: 中山七里出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2010/10/12メ…

笹本稜平『白日夢 素行捜査官2』(光文社)レビュー

白日夢 素行調査官2作者: 笹本稜平出版社/メーカー: 光文社発売日: 2010/10/25メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (4件) を見る シリーズ第二作目も快作。覚醒剤の不法取引にからむ警察腐敗を剔出すべく、前作の組織内アウトローチームが、…

西澤保彦『幻視時代』(中央公論新社)レビュー

本日のエピグラフ 「(…)『境界線』ってずばり、ミツコがどこでどうやってミツオという男に変わり、そしてまた女に戻るのか、その境目ってことでしょ」(p.84) 幻視時代作者: 西澤保彦出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2010/10メディア: 単行本 クリック:…

伊岡瞬『明日の雨は。』(角川書店)レビュー

明日の雨は。作者: 伊岡瞬出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2010/10/20メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (6件) を見る 推協賞候補作の第一話「ミスファイア」よりも、その次の「柔らかい甲羅」のほうが出来…

北國浩二『サニーサイド・スーサイド』(原書房)レビュー

サニーサイド・スーサイド作者: 北國浩二出版社/メーカー: 原書房発売日: 2010/09/22メディア: 単行本 クリック: 17回この商品を含むブログ (9件) を見る 『リバース』とは打って変わって、純然な青春小説。って、ネタがネタだけに、ミステリー的興味で引っ…

月原渉『太陽が死んだ夜』(東京創元社)レビュー

太陽が死んだ夜作者: 月原渉出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2010/10/09メディア: 単行本 クリック: 11回この商品を含むブログ (14件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス8 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル39 歴史ミステリ…

安萬純一『ボディ・メッセージ』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ 「この事件の犯人は兄弟なんだろうか?」/「どうしてそう思うんだ」/「出てくる人間が、全部兄弟だからさ」(p.181より) ボディ・メッセージ作者: 安萬純一出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2010/10/09メディア: 単行本購入: 1人 クリ…

安東能明『撃てない警官』(新潮社)レビュー

撃てない警官作者: 安東能明出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2010/10メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (3件) を見る 警察内部の不祥事のツケを払わされた管理部門の警部が、“現場”に飛ばされて遭遇した事件を描く連作短編集。主人公が、…

東野圭吾『白銀ジャック』(実業之日本社文庫)レビュー

白銀ジャック (実業之日本社文庫)作者: 東野圭吾出版社/メーカー: 実業之日本社発売日: 2010/10/05メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 62回この商品を含むブログ (119件) を見る 快作。こういう作品が、バカ売れしてくれるのは、実によろしいことです。サス…

近藤史恵『砂漠の悪魔』(講談社)レビュー

砂漠の悪魔作者: 近藤史恵出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/09/30メディア: 単行本 クリック: 36回この商品を含むブログ (18件) を見る こういうかたちの成長小説、ビルドゥングス・ロマンもあるのだなあ、感心。冒頭が、心理サスペンスを思わせるものだ…

貫井徳郎『灰色の虹』(新潮社)レビュー

灰色の虹作者: 貫井徳郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2010/10メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 14回この商品を含むブログ (15件) を見る 復讐者を追う刑事は、かつて恋人を暴漢たちに、少額の金銭を奪うために顔を叩き潰されて殺された過去を持つ。そ…

深水黎一郎 『ジークフリートの剣』(講談社)レビュー

本日のエピグラフ (…)つまり彼女の目指した世界の浄化とは、単なる象徴的な意味ではなく、恐ろしいほど具体的な刷新行為だったのです。これが僕の解釈です。(P193より) ジークフリートの剣作者: 深水黎一郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/09/30メ…

大門剛明『告解者』(中央公論新社)レビュー

告解者作者: 大門剛明出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2010/09メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (2件) を見る まー『悪の教典』読んだあとにこの作品をひもとけば、人間観がまるで異次元世界ほどの落差があることに、思わずめまい…

山口雅也『キッド・ピストルズの醜態』(光文社)レビュー

本日のエピグラフ 「は、あ?殺人鵞鳥(マーダーグース)? あの、マザーグースの童謡どおりの残忍な見立て殺人をして悦に入ってたイカレポンチ?」(「三人の災厄の息子の冒険」P213より) キッド・ピストルズの醜態作者: 山口雅也出版社/メーカー: 光文…

麻耶雄嵩『隻眼の少女』(文藝春秋)レビュー

本日のエピグラフ 要するに静馬はまんまと騙されたわけだ。だが不快感はなかった。むしろ幼い頃からの修練により、御陵みかげとして後天的に会得しなければならない厳しさと業の深さを感じた。(P347より) 隻眼の少女作者: 麻耶雄嵩出版社/メーカー: 文藝…