2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

芦辺拓『時の審廷』(講談社)レビュー

時の審廷作者: 芦辺拓出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/09/26メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (5件) を見る 作者のトリックメーカーとしての意識と鋭利な社会批判が交合した作品は、『時』シリーズ前二作のほかにもあるけれども、…

「人生の余白を舞って黒ガラス鶴をまねたる白羽織かな」(「変調二人羽織」より)

「戻り川心中」「恋文」などで知られる直木賞作家の連城三紀彦(れんじょう・みきひこ、本名加藤甚吾〈かとう・じんご〉)さんが19日、胃がんのため名古屋市内の病院で死去した。65歳だった。葬儀は近親者で営んだ。 愛知県出身。早稲田大在学中から小説…

知念実希人『ブラッドライン』(新潮社)レビュー

ブラッドライン作者: 知念実希人出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2013/07/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 福ミス受賞後第一作は、大満足。冒頭のド迫力シーンで読み手をツカんで、後はいささかも予断を許さずに、サスペンスを持続させ…

高林さわ『バイリンガル』(光文社)レビュー

バイリンガル作者: 高林さわ出版社/メーカー: 光文社発売日: 2013/05/18メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 第5回福ミス受賞作。やや無骨な手付きを思わせるが、中盤あたりからドライブがかかり、サスペンス・スリラーとして満足できる。ミ…

小島正樹『永遠の殺人者  おんぶ探偵・城沢薫の手日記』(文藝春秋)レビュー

本日のエピグラフ 「(…)ほかにひどい体験をした場合、回避行動という症状が出る。その名のとおり事件の起きた場所や、事件を喚起させるものを、意識的に、あるいは無意識に避けようとするんだ。(…)」(p.141) 永遠の殺人者 おんぶ探偵・城沢薫の手日記作者: …

小林泰三『アリス殺し』(東京創元社)レビュー

アリス殺し (創元クライム・クラブ)作者: 小林泰三出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2013/09/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (29件) を見る 辻真先『アリスの国の殺人』がファース仕立ての大人の絵本だとすると、本作はブラック・ユーモア風味の…

大倉崇裕『白戸修の逃亡』(双葉社)レビュー

白戸修の逃亡作者: 大倉崇裕出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2013/09/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (5件) を見る んん、まさかこのシリーズ、まとめに入っているんじゃないんでしょうね、とうっすら危惧しつつ、巻き込まれ&他力…

太田忠司『ミステリなふたり a la carte』(東京創元社)レビュー

ミステリなふたり a la carte (創元クライム・クラブ)作者: 太田忠司出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2013/08/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る お久しぶりのシリーズ連作。インターバルが長い分、作り込まれている印象がある。密室…

有栖川有栖『菩提樹荘の殺人』(文藝春秋)レビュー

菩提樹荘の殺人作者: 有栖川有栖出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/08/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (11件) を見る 冒頭の話に顕著だけれども、探偵小説空間に社会性を浸潤させるアプローチが、いかにも自然なことのようになってきた。なん…

2013年9月版

ディーヴァーの新作長編が目前だというのに、短編集が読めていない。今月は、ちょい前の落穂拾い――というのには失礼に当たる面白さだった『KGB』。ハードボイルドやね。因果者やね。未だに亡霊はアメリカにも徘徊しているんやね。カミングの今年二作目の…

梓崎優『リバーサイド・チルドレン』(東京創元社)レビュー

リバーサイド・チルドレン (ミステリ・フロンティア)作者: 梓崎優出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2013/09/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (20件) を見る 作者に求められているのは、こんな感じなのか、と。物語は、殺人の動機に収斂していくが…

青崎有吾『水族館の殺人』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ 「頭はいいし、嘘はつかんし……こんな素敵な相棒は、他にいないよ」/(…)/「僕はあまり、信用できませんけど……」(pp.248‐249) 水族館の殺人作者: 青崎有吾出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2013/08/11メディア: 単行本この商品を含むブ…

雫井脩介『検察側の罪人』(文藝春秋)レビュー

検察側の罪人作者: 雫井脩介出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/09/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (12件) を見る 思い切った設定と展開で、社会派の枠組みを突破した感がある。物語自体のサスペンスは濃厚に演出されるものの、人物造型がやや…