2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ジョセフ・E・スティグリッツ『世界を不幸にするアメリカの戦争経済』(徳間書店)レビュー

世界を不幸にするアメリカの戦争経済 イラク戦費3兆ドルの衝撃作者: ジョセフ・E・スティグリッツ,リンダ・ビルムズ,楡井浩一出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2008/05/17メディア: ハードカバー購入: 3人 クリック: 26回この商品を含むブログ (36件) を見る…

吉永南央『誘う森』(東京創元社)レビュー

[rakuten:book:12983850:detail] 作者のデビュー作『紅雲町ものがたり』を読めば、創元側が日常の謎系目当てで原稿依頼したのがわかる(冗談)。たおやかな文章で、妻の自死の真相を追う男の探偵行を綴るが、コアとなるネタは、どちらかといえば、とんでもない…

竹内真『シチュエーションパズルの攻防』(東京創元社)

シチュエーションパズルの攻防―珊瑚朗先生無頼控 (創元クライム・クラブ)作者: 竹内真出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2008/06メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (15件) を見る 安楽椅子探偵に対する意識的なアプローチは、ミステリの…

ポール・クルーグマン『格差はつくられた』(早川書房)レビュー

格差はつくられた―保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略作者: ポールクルーグマン,Paul Krugman,三上義一出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2008/06/01メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 176回この商品を含むブログ (65件) を見る クルーグマ…

東浩紀 北田暁大・編『思想地図 vol.1』(NHKブックス)レビュー

NHKブックス別巻 思想地図 vol.1 特集・日本作者: 東浩紀,北田暁大出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2008/04/25メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 30人 クリック: 1,047回この商品を含むブログ (161件) を見る 『批評空間』の蹉跌を念頭においたものと…

石持浅海『耳をふさいで夜を走る』(徳間書店)レビュー

耳をふさいで夜を走る作者: 石持浅海出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2008/06/17メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 36回この商品を含むブログ (41件) を見る 右派シュミット的政治意識をサイコ・スリラーの範型を用いて揶揄した感じの小説。ニーチェと…

矢作俊彦『傷だらけの天使 魔都に天使のハンマーを』(講談社)レビュー

傷だらけの天使 魔都に天使のハンマーを作者: 矢作俊彦出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/06/20メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 52回この商品を含むブログ (28件) を見る マンハッタン・オプがめでたく復刊したと思ったら、往年のTVシリーズまでも…

“不可視”なものの政治学

本田由紀の最新コラム集『軋む社会』は、そのタイトルが、現在の閉塞状況をよく表している。なぜ「軋む」のか。それは、「家族‐教育‐仕事という三つの社会領域間の循環関係の破綻」が原因である。要するに、わが国における労働力の再生産のメカニズムが、ネ…

岸田るり子『めぐり会い』(徳間書店)レビュー

めぐり会い作者: 岸田るり子出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2008/05/16メディア: ハードカバー購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (6件) を見る ミステリアスな要素を媒介に、真正面から描いた恋愛小説。うーん、タネ明かしのときに肩透かしを…

原武史『滝山コミューン 一九七四』(講談社)レビュー

本日のエピグラフ (…)「団塊の世代」に当たる片山とは異なり、三浦は集団主義の怖さを身をもって知っていた。/(…)もし三浦の世代がこのような戦時体制下の体験を片山の世代に正しく伝えることに成功していたら、「滝山コミューン」はなかったかもしれない。…

我孫子武丸『警視庁特捜班ドットジェイピー 』(光文社) レビュー

警視庁特捜班ドットジェイピー作者: 我孫子武丸出版社/メーカー: 光文社発売日: 2008/06/20メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 2人 クリック: 15回この商品を含むブログ (25件) を見る おもちろい。喜国画伯が完全漫画化してくれると、なおいい。文体的…

北森鴻『なぜ絵版師に頼まなかったのか』(光文社)レビュー

なぜ絵版師に頼まなかったのか作者: 北森鴻出版社/メーカー: 光文社発売日: 2008/05/22メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 3回この商品を含むブログ (18件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス7 アレゴリカル8 インプレッション8 …

“逆接”の逆説の「民主主義」

大澤真幸の近刊『逆接の民主主義』は、直接的には六年前に刊行された『文明の内なる衝突』の続編と見立ててよいものと思われる。『文明の内なる衝突』の結論は「赦し」だったが、『逆接の民主主義』の結論は「愛」である。この両者の差異は、の範囲の拡張の…

2008年上半期本格ミステリベスト5

毎度毎度のことながら、読み残し多々あれど、いつの間にやら七夕さま直前、2007年11月〜2008年4月の傑作秀作を、夏休み前にチェック。今年度の上半期は、ある意味野心的な試みが目立ちました。君の望む死に方 (ノン・ノベル)作者: 石持浅海出版社/メーカー: …

大倉崇裕『聖域』(東京創元社)レビュー

[rakuten:book:12905170:detail] フィジカルなアプローチが、心理的な詮索と絡み合うのは定石として、サスペンスをあくまでミステリアスなファクターで堅持させたのは、見事。冒険小説の方向ではなくて、こちらの方向で、続けて物してほしいものです。

深水黎一郎『エコール・ド・パリ殺人事件』(講談社ノベルズ)レビュー

本日のエピグラフ 「(…)その証拠に欧米と違って日本では、画家が死ぬとその絵は一気に下がるのが普通です。(…)」(P190より) エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ (講談社ノベルス)作者: 深水黎一郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008…

桐野夏生『東京島』(新潮社)レビュー

東京島作者: 桐野夏生出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/05メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 132回この商品を含むブログ (168件) を見る サバイバル小説と、“社会”が生成される現場へと遡行するモチベーションが交錯して、先行する名作たちとは、また…