2016-01-01から1年間の記事一覧

貫井徳郎『壁の男』(文藝春秋)レビュー

壁の男作者: 貫井徳郎出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2016/10/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る うん、藤沢周平だね。でも、オイラは、あえてハードボイルドと呼びたいぞ。魂がソウルが、男のリリシズムを穿っているぞ。でもまあ、ピ…

芦沢央『許されようとは思いません』(新潮社)レビュー

許されようとは思いません作者: 芦沢央出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2016/06/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見る 今年のベストテンで高評価を得た短編集。出てすぐ読んだから、てっきりもう取り上げたもんだと思っていたが、まだだっ…

深木章子『猫には推理がよく似合う 』(KADOKAWA)レビュー

猫には推理がよく似合う作者: 深木章子出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2016/09/02メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 技巧派の作者の濃やかさと大胆不敵さを味わえるが、まあなんともチャーミングな感じに仕上げたものである。…

中山七里『作家刑事毒島』(幻冬舎)レビュー

作家刑事毒島作者: 中山七里出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2016/08/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る この作者は、もっとコミカルなものを書いているかと思ったが、実はそれほどでもなかったか。たぶん、話の展開やキャラクターの造型…

北村薫『遠い唇』(KADOKAWA)レビュー

遠い唇作者: 北村薫出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2016/09/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る “名探偵”巫弓彦が再び読める一編を掉尾に、作者の語り口が、ユーモアやリリシズムに違和感なく変位していく諸相を鑑みることのできる短編…

浅野里沙子 『藍の雨』(ポプラ社)レビュー

藍の雨作者: 浅野里沙子出版社/メーカー: ポプラ社発売日: 2016/08/10メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 時代小説をメインフィールドとしてきた作者が、単著として現代に時間を移したコレクター・ミステリーの連作集。濃やかな筆遣いで、収集家た…

柴田よしき『青光の街(ブルーライト・タウン) 』(早川書房)レビュー

青光の街(ブルーライト・タウン) (ハヤカワ・ミステリワールド)作者: 柴田よしき出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/10/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 作者のものを久しぶりに読んだが、いやあよかったね。やっぱり底力がある。…

岡田秀文『月輪(がちりん)先生の犯罪捜査学教室』(光文社)レビュー

月輪(がちりん)先生の犯罪捜査学教室作者: 岡田秀文出版社/メーカー: 光文社発売日: 2016/09/15メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る シリーズの新作は、こういうアプローチできましたか。趣向を凝らしてる得意げな雰囲気でなく、むしろ恬淡と…

市川憂人『ジェリーフィッシュは凍らない』(東京創元社)レビュー

ジェリーフィッシュは凍らない作者: 市川憂人出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2016/10/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (12件) を見る 今年の鮎川賞は快作。新本格の原点回帰だね(分かる人だけ)。冒頭の素材工学的言及から恐る恐る紐解いてい…

下村敦史『失踪者』(講談社)レビュー

失踪者作者: 下村敦史出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/09/14メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 前作に引き続いて、山岳ミステリながら、フィジカルな要素のなかに心理的アプローチがミステリ的核心を占める。本作が山岳小説ファンの意…

七河迦南『わたしの隣の王国』(新潮社)レビュー

わたしの隣の王国作者: 七河迦南出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2016/09/21メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (6件) を見る 作者の4年ぶりの新作は、作者自身が愉しんで筆を進めた感がある。テーマパークで起きた変事の密室事件の推移…

三津田信三『黒面の狐 』(文藝春秋)レビュー

黒面の狐作者: 三津田信三出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2016/09/13メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 作者の新シリーズか、今までの本のなかで出てきたキャラのスピンアウトか判断つかないが、作者のミステリ的アプローチの濃密さを堪…

佐藤究『QJKJQ』(講談社)レビュー

QJKJQ作者: 佐藤究出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/08/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る 本年の乱歩賞はよかったよー。純文学畑からの越境組ということもあって、妙な自意識を見せつけられるのではないかと思いきや、ギミック構築…

綾辻行人『深泥丘奇談・続々』( KADOKAWA)レビュー

深泥丘奇談・続々 (幽BOOKS)作者: 綾辻行人出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2016/08/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る このシリーズ5年ぶりの作品集だが、一区切りだそうで、ちょい寂しい。だけれども、この連作の長所だが…

我孫子武丸『裁く眼』(文藝春秋)レビュー

裁く眼作者: 我孫子武丸出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2016/08/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 異色の法廷ミステリーで、裁判進行の描写が必要最小限に留められているのがいい。裁判もののコクを求める読者には物足りないかもしれ…

鯨統一郎『女子大生桜川東子の推理 ベルサイユの秘密』(光文社)レビュー

女子大生桜川東子の推理 ベルサイユの秘密作者: 鯨統一郎出版社/メーカー: 光文社発売日: 2016/08/17メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る このシリーズにはついつい手が出てしまうなあ。今回はヅカっすか。でも、脱線の仕方…

鏑木蓮『炎罪』(講談社)レビュー

炎罪作者: 鏑木蓮出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/05/25メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 作者のデビュー十周年記念作というPRだが、読み応えはある。作者の作風から、サスペンス・スリラーといってもこういう味付けにな…

谺健二『ケムール・ミステリー 』(原書房)レビュー

ケムール・ミステリー (ミステリー・リーグ)作者: 谺健二出版社/メーカー: 原書房発売日: 2016/03/25メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る お久しぶりの作者の作品。奇想系ファボにとっては、十分愉しめる。実在の特撮アーティストの遺した幻…

小林泰三『クララ殺し』(東京創元社)レビュー

クララ殺し (創元クライム・クラブ)作者: 小林泰三出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2016/06/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見る 前作がああいう感じであるだけに、本作はこういう感じかな、と思ったりするわけだが、そうであるだけに…

近藤史恵『スティグマータ 』(新潮社)レビュー

スティグマータ作者: 近藤史恵出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2016/06/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る シリーズの新作だが、フィジカルなニュアンスはこの作者独特の手触りで、透明感を湛える一種シュールな領域へ昇華されていて、心…

呉 勝浩『蜃気楼の犬』(講談社)レビュー

蜃気楼の犬作者: 呉勝浩出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/05/31メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 刑事小説の連作短編集だが、冒頭の話と、まとめの話がサスペンスフルでよろしい。ただ、作者にとって、警察小説的行き方が、…

道尾秀介『スタフ staph』(文藝春秋)レビュー

スタフ staph作者: 道尾秀介出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2016/07/13メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 作者の得意とする群像劇だが、今回の手触りは前作のような湿った感じはせず、やや楽しく読めるか。皮をむくように真相が詳らかに…

松本英哉『僕のアバターが斬殺ったのか』(光文社)レビュー

僕のアバターが斬殺ったのか作者: 松本英哉出版社/メーカー: 光文社発売日: 2016/05/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 今年の福ミス優秀作。SNSゲームによる仮想と現実の二重空間で起きた殺人と、その探偵行の顛末。主人公…

菅原和也『ブラッド・アンド・チョコレート 』(東京創元社)レビュー

ブラッド・アンド・チョコレート (ミステリ・フロンティア)作者: 菅原和也出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2016/04/21メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 作者の前作までの作風と比べると、見慣れた本格ミステリ感が漂いとっつきやすいが、後半…

柄谷行人『憲法の無意識』 (岩波新書) レビュー

憲法の無意識 (岩波新書)作者: 柄谷行人出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2016/04/21メディア: 新書この商品を含むブログ (13件) を見る 柄谷さんの本を久しぶりに読んだけれども、おおむね当たっていると思うんですよ。精神分析的アプローチは、巨視的な政…

大倉崇裕『スーツアクター探偵の事件簿 』(河出書房新社)レビュー

スーツアクター探偵の事件簿作者: 大倉崇裕出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2016/06/17メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 作者に思い入れがあるような題材だと、物語の緩急自在さとか語り口の軽快さとかキャラの立ち上がり方など、小…

近藤史恵『モップの精は旅に出る』(実業之日本社)レビュー

モップの精は旅に出る作者: 近藤史恵出版社/メーカー: 実業之日本社発売日: 2016/04/15メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (3件) を見る シリーズ最終作ということだが、足掛け二十年近くやってたのか。作者の出世作でもないし、梨園もの…

島田荘司『屋上の道化たち 』(講談社)レビュー

屋上の道化たち作者: 島田荘司出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/04/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 記念すべきシリーズ50作目は、島田印の奇想本格というより、落語家島田亭の滑稽噺大独演会とでも言い表したい内容。ファース的…

菅野完『日本会議の研究』 (扶桑社新書) レビュー

日本会議の研究 (扶桑社新書)作者: 菅野完出版社/メーカー: 扶桑社発売日: 2016/04/30メディア: 新書この商品を含むブログ (53件) を見る 参議院選挙まえに、読んでおきたい本だよねえ。日本会議という宗教右派と右派系各種団体のアソシエーションが、現政権…

長沢樹『St.ルーピーズ』(祥伝社)レビュー

St.ルーピーズ作者: 長沢樹出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2016/05/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 作者がこういう傾向の小説を書きたかったのは、わかるような気がする。作風のベクトルにミステリの結構が違和感がなく、ユカイに読…