2012-01-01から1年間の記事一覧

2012年12月版

今年のシメはバルガス=リョサで決まり。呪術的世界に対する諦観的なニュアンスを感じ取ってしまうのは、深読みのしすぎかしらん。巻末の訳者解説は懇切だけれども、ゆえにややネタバレ気味なのでご注意を。ウィンズロウのは、今年の翻訳ミステリで一番楽しく…

増田悦佐『7日で知識がガラリと変わる 増田悦佐の経済教室』(晋遊舎)レビュー

7日で知識がガラリと変わる 増田悦佐の経済教室作者: 増田悦佐出版社/メーカー: 晋遊舎発売日: 2012/06/30メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (3件) を見る 新政権の採用する経済政策は、インフレ路線へと舵を切…

黒川博行『繚乱』(毎日新聞社)レビュー

繚乱作者: 黒川博行出版社/メーカー: 毎日新聞社発売日: 2012/11/15メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る まあ昨年末から下らない災難に見舞われた作者だったけれども、久しぶりの新作は憂さを晴らすような剛速球。『悪果』の続編は、完全なピ…

西澤保彦『モラトリアム・シアタ produced by腕貫探偵』(実業之日本社文庫)レビュー

本日のエピグラフ 「単なる妄想だと思い込みたい、すなわち実際の体験であるとは認めたくない、という深層心理が働いているとも考えられますが」(p.102) モラトリアム・シアターproduced by腕貫探偵 (実業之日本社文庫)作者: 西澤保彦出版社/メーカー: 実業…

長沢樹『夏服パースペクティヴ』(角川書店)レビュー

夏服パースペクティヴ (樋口真由“消失”シリーズ)作者: 長沢樹出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2012/11/01メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (23件) を見る ミステリアス8 アクロバット8 サスペンス8 ア…

アベノミクス? アベコベノミクス??

列島強靱化論―日本復活5カ年計画 (文春新書)作者: 藤井聡出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2011/05/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 16回この商品を含むブログ (13件) を見る 言わずもがなの元ネタ。 経済成長は不可能なのか - 少子化と財政難を克服…

大門剛明『父のひと粒、太陽のギフト』(幻冬舎)レビュー

父のひと粒、太陽のギフト作者: 大門剛明出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2012/11/09メディア: 単行本この商品を含むブログを見る コンスタントに新作を上梓し続ける作者が今回挑んだのが、農業問題。トピックスをひと通りサルベージして、ミステリーの雛型…

薬丸岳『逃走』(講談社)レビュー

逃走作者: 薬丸岳出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/10/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る アイリッシュ/ウールリッチ路線かと思いきや、やがて主人公をめぐる人間ドラマに焦点が絞られる。涙腺直撃的なナニワ節風の展開に危惧を抱き…

松島大輔『空洞化のウソ――日本企業の「現地化」戦略』(講談社現代新書)レビュー

空洞化のウソ――日本企業の「現地化」戦略 (講談社現代新書)作者: 松島大輔出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/07/18メディア: 新書購入: 1人 クリック: 17回この商品を含むブログ (10件) を見る 円高、貿易収支を超えた所得収支黒字、この二つが指し示す方…

七河迦南『空耳の森』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ 「『ゲド戦記』ならしっかり読んだんだけどな。(…)」/「相手の真の名前を知ることで支配することができるってやつですね。(…)」(「悲しみの子」p.125) 空耳の森 (ミステリ・フロンティア)作者: 七河迦南出版社/メーカー: 東京創元社発売日…

森福都『ご近所美術館』(東京創元社)レビュー

ご近所美術館 (創元クライム・クラブ)作者: 森福都出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2012/07/27メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (8件) を見る コージー系に分けられるのだろうけれども、各話バランスよくまとめられて、愉しめる。設…

小島正樹『祟り火の一族』(双葉社)レビュー

本日のエピグラフ 硫黄は昔、brimstoneと呼ばれていた。それを使ったfire and brimstoneという成句があり、「地獄の業火」と訳されている。(…)(pp.153−154) 祟り火の一族作者: 小島正樹出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2012/10/17メディア: 単行本 クリック:…

2012年11月版

読み終わって、虚心にああ面白かったと嘆ずることのできる作家って、ディーヴァーくらいしかいないんだよねえ。シリーズのターニング・ポイントを迎えた感がある。『首斬り人の娘』は近世南部ドイツを舞台にした歴史スリラー、ノリは重厚感とは一線を画した…

大山誠一郎『密室蒐集家』(原書房)レビュー

本日のエピグラフ 「それは、解かれたのが、いかにして密室が作られたかの謎であり、なぜ密室が作られたかの謎は依然として残っていたからです。密室に関する謎がある限り、私は現れます。(…)」(「理由ありの密室」p.202) 密室蒐集家 (ミステリー・リーグ)作…

樋口有介『猿の悲しみ』(中央公論新社)レビュー

猿の悲しみ作者: 樋口有介出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2012/09/24メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (7件) を見る 身もフタもないタイトルなんだけれども、この作者だと味が出てくる、というか。アウトロー調査員である女主人公…

有栖川有栖『江神二郎の洞察』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ 「最後は悪魔の証明の前に膝を屈するのが避けられないとして、ぎりぎりまで論理的な推理を積み上げようとする作品をどう評価しますか?」/「最高やないか。素晴らしく人間的で、詩的や」(「除夜を歩く」p.350) 江神二郎の洞察 (創元クライ…

増田悦佐『世界は深淵をのぞきこみ、日本は屹立する』(東洋経済新報社)レビュー

世界は深淵をのぞきこみ、日本は屹立する作者: 増田悦佐出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2012/04/27メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 10回この商品を含むブログ (2件) を見る ケインジアンとリフレ論と反増税が一方の極とすれば、もう一方は反ケ…

青崎有吾『体育館の殺人』(東京創元社)レビュー

体育館の殺人作者: 青崎有吾出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2012/10/11メディア: 単行本 クリック: 24回この商品を含むブログ (31件) を見る ミステリアス8 アクロバット9 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション8 トータル39 今年の鮎哲賞…

横山秀夫『64(ロクヨン)』(文藝春秋)レビュー

64(ロクヨン)作者: 横山秀夫出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2012/10/01メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 75回この商品を含むブログ (121件) を見る いやあ、待った甲斐がありました、というよりほかはなく。のっけから横山節が唸るうなる。警察内外の…

宮部みゆき『ソロモンの偽証 第I部・第II部・第III部』(新潮社)レビュー

ソロモンの偽証 第I部 事件作者: 宮部みゆき出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/08/23メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 43回この商品を含むブログ (113件) を見るソロモンの偽証 第II部 決意作者: 宮部みゆき出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/09/2…

初野晴『カマラとアマラの丘』(講談社)レビュー

本日のエピグラフ 動物にも人間と同じように、心や魂があった。/しかし動物に心や魂があると、人間にとって都合が悪くなる。(「星々の審判」p.246) カマラとアマラの丘作者: 初野晴出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/09/27メディア: 単行本(ソフトカバ…

鳥飼否宇『妄想女刑事』(角川書店)レビュー

妄想女刑事作者: 鳥飼否宇出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2012/09/26メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (7件) を見る ミステリアス8 アクロバット9 サスペンス7 アレゴリカル7 インプレッション8 ト…

東野圭吾『禁断の魔術 ガリレオ8』(文藝春秋)レビュー

禁断の魔術―ガリレオ〈8〉作者: 東野圭吾出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2012/10/01メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 15回この商品を含むブログ (61件) を見る というわけで、湯川はアメリカへ行ってしまうのでした。しばしのお別れなんですが、いろ…

河合莞爾『デッドマン』(角川書店)レビュー

デッドマン作者: 河合莞爾出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2012/09/25メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (14件) を見る 今年の横溝賞もう一作は、モチーフを『占星術』にかりているけれども、内容はややオ…

菅原和也『さあ、地獄へ堕ちよう』(角川書店)レビュー

さあ、地獄へ堕ちよう作者: 菅原和也出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2012/09/25メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (8件) を見る 今年度横溝賞受賞の一作は、読者の怖いもの見たさの興味をかきたててくれる…

芦辺拓『スチームオペラ (蒸気都市探偵譚)』(東京創元社)レビュー

スチームオペラ (蒸気都市探偵譚)作者: 芦辺拓出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2012/09/21メディア: 単行本 クリック: 16回この商品を含むブログ (20件) を見る うはは、面白いオモシロイ。SFプロパーがどう思おうが、芦辺印の金太郎飴を求めるひとに…

山田彩人『幽霊もしらない』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ 『あんた、話の分母を大きくすることで自分を正当化するのはやめなさい』(p.227) 幽霊もしらない作者: 山田彩人出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2012/09/21メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (7件) を見る ミステリ…

2012年10月版

ピースの三部作第二弾は、アンチ・クライムノベルと銘打たれる。法はどこだ。無法な世界では、一体何が葬り去られるのか――。ボルトンのはスペシャリストものの醍醐味を堪能。いやほんとにヘビづくしで、ごちそうさま、って感じです。トゥローのは、なんとも…

東川篤哉『魔法使いは完全犯罪の夢を見るか? 』(文藝春秋)レビュー

魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?作者: 東川篤哉出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2012/09/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 8回この商品を含むブログ (18件) を見る ライト・ミステリ路線。ハメを外す匙加減もよいと思います。M男がまっとうな恋愛…

似鳥鶏『戦力外捜査官 姫デカ・海月千波』(河出書房新社)レビュー

戦力外捜査官 姫デカ・海月千波作者: 似鳥鶏出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2012/09/11メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (11件) を見る 警察小説のパロディと思いきや、そういうことでしたか、と。小説が上手いんだから、ヘンにデ…