2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

北森鴻ミステリ私的ベスト5

北森さんは、90年代半ばからの日本ミステリのトレンドを引き受けて、そのうえでご自身の小説家としての資質の趣くところに、“物語”の素材を求めていらしたように、一読者としては感じます。近年は、ますます小説家として独自の世界を追求しようとする姿勢…

北森鴻『うさぎ幻化行』(東京創元社)レビュー

うさぎ幻化行 (創元クライム・クラブ)作者: 北森鴻出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2010/02/24メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (9件) を見る 短編連作式の長編で、作者がこの形式に、まだ新たな展開を抱いていたのか、それ…

北森鴻『暁英  贋説・鹿鳴館』(徳間書店)レビュー

暁英 贋説・鹿鳴館作者: 北森鴻出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2010/04/16メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (3件) を見る 絶筆未完の作品が、まさしく読者への挑戦になった。作者の目論見は、半ばまで読み取れる、はず。異文化の人為…

帝国崩壊の、いよいよ始まり

1、いよいよだな、と思う。アメリカの時代が終わる。普天間問題で、鳩山が「抑止力」について不勉強だったというような白々しい弁明を、さも現実知らずのように大マスコミは書きたてているけれども、それもまた白々しい。アメリカ側のゴリ押しは、対日管理…

芦辺拓『綺想宮殺人事件』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ 「唯一の正しい解答か、そうでないかというだけのことです。可能性の一つなどとは言ってほしくもありませんよ――(…)」(P251より) 綺想宮殺人事件作者: 芦辺拓出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2010/04/28メディア: 単行本購入: 2人 …

福田和代『オーディンの鴉』(朝日新聞出版)レビュー

オーディンの鴉作者: 福田和代出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2010/04/07メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 186回この商品を含むブログ (20件) を見る なかなか苦い幕切れを迎える謀略小説。ネット・ファシズムとの戦いの格率を奈辺に設定するかを…

伽古屋圭市『パチプロ・コード』(宝島社)レビュー

パチプロ・コード作者: 伽古屋圭市出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2010/02/05メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (3件) を見る 暗号が面白い。話運びが手練れていて、中だるみなく、アンダーグラウンドの小競り合いを楽しませてくれる。生…

寵物先生『虚擬街頭漂流記』(文藝春秋)レビュー

虚擬街頭漂流記作者: 寵物先生,玉田誠出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2010/04メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 31回この商品を含むブログ (36件) を見る 満足満足。なによりも話運びの上手さが際立って、一般読者にもとっつきやすいのではないか。売…

ジョセフ・E・スティグリッツ 『フリーフォール  グローバル経済はどこまで落ちるのか』(徳間書店)レビュー

フリーフォール グローバル経済はどこまで落ちるのか作者: ジョセフ・E・スティグリッツ,楡井浩一,峯村利哉出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2010/02/19メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 72回この商品を含むブログ (14件) を見る スティグリッツせんせ…

坂東眞砂子『ブギウギ』(角川書店)レビュー

ブギウギ作者: 坂東眞砂子出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2010/03/27メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 26回この商品を含むブログ (4件) を見る 女たちが戦史にどうかかわるか、かかわれるかという明確な意識のもとに構築…

叶紙器『伽羅の橋 』(光文社)レビュー

本日のエピグラフ それでも生きて笑っている。自分一人で生きてきたわけではないと、よく知っているから。(P463より) 伽羅の橋作者: 叶紙器出版社/メーカー: 光文社発売日: 2010/03/19メディア: 単行本 クリック: 25回この商品を含むブログ (11件) を見…

篠田真由美『緑金書房午睡譚』(講談社)レビュー

緑金書房午睡譚作者: 篠田真由美出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/04/21メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 1人 クリック: 9回この商品を含むブログ (13件) を見る 安心して物語世界に身をゆだねられる。良質なファンタジーを物するのは、成長小説を…

井上夢人『魔法使いの弟子たち』(講談社)レビュー

魔法使いの弟子たち作者: 井上夢人出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/04/02メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 46回この商品を含むブログ (34件) を見る パンデミックに超能力。読み手が先入観を抱きやすいテーマも、鬼才の手にかかれば、安易な予断を…

大倉崇裕『白戸修の狼狽』(双葉社)レビュー

白戸修の狼狽作者: 大倉崇裕出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2010/04/06メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 14回この商品を含むブログ (13件) を見る ユーモアミステリと括られるだろうけれども、サスペンスを基調としたプロットづくりの冴えに目を見張る…

我孫子武丸『さよならのためだけに』(徳間書店)レビュー

さよならのためだけに作者: 我孫子武丸出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2010/03/18メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 12回この商品を含むブログ (16件) を見る 物語の設定だけみればファースっぽくて、タイトルがつりあってるのかな、と思うけれども、…

赤星香一郎『赤い蟷螂』(講談社ノベルス)レビュー

赤い蟷螂 (講談社ノベルス)作者: 赤星香一郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/01/08メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (4件) を見る ホラー作家としては、グロテスクさを前面に押し出したものではなくて、サ…

白河三兎『プールの底に眠る』 (講談社ノベルス)レビュー

プールの底に眠る (講談社ノベルス)作者: 白河三兎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/12/08メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 56回この商品を含むブログ (29件) を見る 文体と、話の進め方の安定感がよいだけに、ギミックのこけおどし性が際立つ結果に…

篠田節子『スターバト・マーテル』(光文社)レビュー

スターバト・マーテル作者: 篠田節子出版社/メーカー: 光文社発売日: 2010/02/19メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (7件) を見る 毛色の違った二編を合わせた本だけれども、現実の酷薄さというか浮世のしがらみというか、そういうリアリテ…

真梨幸子『更年期少女』(幻冬舎)レビュー

更年期少女作者: 真梨幸子出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2010/03メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 44回この商品を含むブログ (14件) を見る 最後まで読者を翻弄してくれる快作というか怪作。個々の不幸の料理の仕方と、クライマックスの破局へと持って…

オレ的新書大賞2010

新書大賞〈2010〉作者: 中央公論編集部出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2010/02/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (6件) を見る 本屋大賞も発表されたあとで、今更この企画に便乗するのはちょっと間の抜けた感じですが…