射逆裕二『殺してしまえば判らない』『情けは人の死を招く』(角川書店)レビュー

殺してしまえば判らない

殺してしまえば判らない


 
ミステリアス7 
クロバット8 
サスペンス7 
アレゴリカル7 
インプレッション7 
トータル36  


情けは人の死を招く

情けは人の死を招く


 
ミステリアス7 
クロバット7 
サスペンス7 
アレゴリカル7 
インプレッション8 
トータル36  


 女装趣味の名探偵がヤメ検という設定のシリーズ、ワタクシ的には好感触です。――拡げた大風呂敷を、きっちりと折り畳むというより、数片に裁断してその四隅を合わす、といった風なので、肩透かしを喰らう人はいるとは思うのだけれども、もしかしたら、西澤保彦の作風(とくにタックシリーズね)を道標にしているのかも。――基本的にはファースで、軽妙な筆致と適度にデフォルメされているキャラクターたちは、読んでいて楽しいけれども、特に『情けは人の死を招く』に出てくるマド様は、ステロタイプではあろうが、とてもかっこいいです。準レギュ希望。…………“化粧”というのは、“女”がかろうじて“存在”の痕跡を残せる手段。“化粧”の向こう側には、ミステリアスな領域が広がっている――だから、“女装”する<名探偵>は、もっとも<謎>に対して臨場していると言えなくもないわけで。(次回の「僕は死体にけつまづく」って、以前の横溝賞の選考会で、「下品」と評された作品ですか? 読みたい読みたい)
 それにしても、『殺してしまえば判らない』におけるかなり人を喰ったトリック(同様のアイデアのものは過去にいくらかあるけれども)とその欺瞞の方法は、あきらかにバカミススピリット横溢。霞流一鳥飼否宇等、横溝賞出身者にはなぜかこの傾向が――みんな服部まゆみの後輩なのに。