鈴木淑夫『円と日本経済の実力』(岩波ブックレット)レビュー



 小沢旧自由党のもとで衆議院議員を務めて、再びエコノミストに復帰した著者の新刊。僅々70ページの小冊子だけれども、これからの経済政策の一方の軸が簡潔に示されているという点で、一読されたい。というのも、本書の結論が、早い話、「利上げ」せよ、ということで、橋本構造改革路線からの一連の経済政策の総括と、現今の経済情勢の認識に用いられるロジックは、この結論を支持するに過不足ないものだろう。ということは、本書の認識に異論があれば、「ゼロ金利」政策の正当性を顧みるのに絶好の材料にもなりうる。円安誘導の外需頼みで内需が冷え込んだままでよいのか。「利上げ」による“非効率”企業の淘汰は、未だ冷え込んだままの家計消費をさらに悪化させないか。とにかく論点は絞られているので、どちらの方向に舵を取るべきなのか、じゅうぶん吟味して、以て政策リテラシーを涵養したいものだ。*1

*1:余談だけれども、日銀総裁空席が決まったその日に、株価が反転上昇したのは、痛烈な皮肉以外の何物でもない。あたしゃ大笑いしましたけど。対外的には、総裁空席といった事態よりも、財務省に踊らされたニュースのバカ騒ぎのほうが、“国益”を損ねたのでは。どう見たって人材不足って印象を与えているとしか思えないのですが。