ポール・クルーグマン『格差はつくられた』(早川書房)レビュー

格差はつくられた―保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略

格差はつくられた―保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略



 クルーグマンせんせい怒りのリアルバウト、VS「保守派ムーブメント」。「金ぴか」の時代から、ニューディールの「大圧縮」の時代へ、そして再び「金ぴか」の時代へ――ニューディールの現代版となりうる、国民皆保険制度の成立を拒むものは、人種差別的意識であると、身も蓋もないことをいう。アメリカにおける人種構成と社会階層構成の一致が、国家による富の再分配を批判する“正義”を借りて、レイシズムの欲望を満足させる、その社会的素地となる。階層の「大圧縮」は、政治的効果だったが、冷戦期の受動的革命とまた位置づけられる。ならば、再「金ぴか」が、“革命”そのものと見ても、まあ間違いないわけで、となると、わが国をはじめとするグローバルな大拡大は、再「金ぴか」のアメリカを横目にした受動的革命なのかしらん。