西澤保彦『夢は枯れ野をかけめぐる』(中央公論新社)レビュー

夢は枯れ野をかけめぐる

夢は枯れ野をかけめぐる



 “日常の謎”系の作品としても、そして作者のものとしても、異色作だろう。昨年の『収穫祭』のグロテスクなアッパーさと比べれば、本作はたおやかなダウナーさ、とでもいえばよいか。老い、といういかにもなテーマ設定に、作者が十全に小説世界を拡げているのにむしろ新鮮さを覚えた。堪能しました。