本格ミステリベスト10「MY BEST RANKING」投票のワタクシめのコメント



 というわけで、年末各ベストテンが出そろいましたね。そっちのネタの前に、昨年と今年の本ミスのネット投票の内容を公開します。やっぱり、ベストテンなんかの投票内容は、きちんと曝しておかないと、なんか闇討ちしたみたいで、いやだし。昨年のネット投票って、公開してませんよね? 原書房さん、どうしたのかしらん。投票を公開するのしないので、クレーム付けてきた方がいらっしゃるのかなあ。
   

2009

1位:『芝浜謎噺』愛川晶
2位:『ペガサスと一角獣薬局』柄刀一
3位:『君の望む死に方』石持浅海
4位:『黄昏たゆたい美術館』柄刀一
5位:『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』詠坂雄二

コメント
 『芝浜謎噺』は愛川さんの本格的な本格への復帰を寿いで。落語ミステリというより、きちんと芸術ミステリとして評価すべきでしょう。
 『ペガサスと一角獣薬局』『黄昏たゆたい美術館』と、柄刀さんのは、二作挙げさせていただきました。柄刀さんのアモルファスな知的志向性は、小説としても本格ミステリとしても、その結構に対して、両刃の剣になってしまうことが多々あるのですが、今年の柄刀さんはよかった。推理文壇は、いい加減に柄刀さんに賞を与えるべきです。
 『君の望む死に方』は、石持さんの冒険ぶりに一票。今年もいろいろな試みを実践されて、頼もしかった。
 『遠海事件』は、奇妙な読後感がある。本格のフォーマットが小説的効果に資するのかどうか、作者が信じているや否や判然としないけれども、文章に妙に冴えているところが見受けられる。物語のトーンの暗さというより、小説のセンスに惹かれた。

2008

1位:『リベルタスの寓話』島田荘司
2位:『首鳴き鬼の島』石崎幸二
3位:『人柱はミイラと出会う』石持浅海
4位:『密室殺人ゲーム王手飛車取り』歌野晶午
5位:『百万のマルコ』柳広司

コメント
 絶対評価ということでなく、肩入れしたい順番に、順位をふりました。
『リベルタスの寓話』は、「民族主義者」の内面がRPGキャラ的に描かれるところに、作者ならではの批評性を感じる。やっぱりこの人は、“現在”という位相に、最も鋭く対峙していると思う。
『首鳴き鬼の島』は、「DNA」を探偵小説的ガジェットに変貌させたということで画期をなすもので、まだまだ<本格>はイノベーティブに振る舞えますね。
 年度内に短編集を三冊刊行した石持浅海は、本年のMVP。そのそれぞれが趣向が全く違うのもスゴイのですが、そのうち、異世界本格の枠組みのなかでも、一編一編毛色を違えている『人柱はミイラと出会う』を推します。
『密室殺人ゲーム王手飛車取り』はポスト劇場型犯罪の類型を描いたものとして。
『百万のマルコ』は、本年のコストパフォーマンス賞。