佐々木譲『警官の紋章』(角川春樹事務所)レビュー

警官の紋章

警官の紋章



 道警シリーズ第三弾は、洞爺湖サミット警備を背景に、拳銃を持って失踪した警官の追跡と、警察官僚の暗い欲望が交錯する。物語を駆動させるモラリッシュな側面が空まわっていないのは、「紋章」という言葉に象徴されるように、職責という問題意識を、個々の人間性の次元にまで、その錨を下ろしているからだろう。