二階堂黎人『智天使(ケルビム)の不思議』(光文社)レビュー

智天使(ケルビム)の不思議

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トータル38


 『容疑者Xの献身』と事件の設定が似せてあるのは、“本格”としての『X』肯定論者への批判的位置付けを明確にしたもの。評論家一般へのあてこすりはご愛敬。サプライズも決まっている。欺瞞装置としての手記の部分は、本編の章立てとは明確に独立させた構成がよかったと思うけれども、なにより問題は、作者が拘泥している怪奇趣味が、黒幕の悪女っぽさに深みを与えるのを阻害している点かも。