2009年下半期本格ミステリベスト5

 今年はやっぱり、下半期2009年5月〜2009年10月に力作が集中しました。年末に向けて、さらにいいものが出てますし。今年はベストテンをくさしましたが、『本ミス』はある程度ナイスな結果が出て満足。こうでなくっちゃ。

密室殺人ゲーム2.0 (講談社ノベルス ウC-)

密室殺人ゲーム2.0 (講談社ノベルス ウC-)



第1位:歌野晶午『密室殺人ゲーム2.0 』
 おめでとうございます。ネタの量的攻勢=構成のみにより点数を稼いだわけでは、必ずしもないと思います。しかし、『バトル・ロワイアル』が出たときには現在の状況を指し示す寓話だとか何とか物々しい論評が出たのに、本作に対しては、こんな話の続編をよく書けました(書きました)的なモノしか出てこないのは、何なんでしょうかね。

神国崩壊―探偵府と四つの綺譚 (ミステリー・リーグ)

神国崩壊―探偵府と四つの綺譚 (ミステリー・リーグ)



第2位:獅子宮敏彦『神国崩壊―探偵府と四つの綺譚』
 野崎六助島田荘司の『眩暈』の長文解説で、本格ミステリーが権力の行使する「奇想」を告発しうる可能性に言及していたけれども、本作はその射程内に十分収まるもの。探偵小説が“歴史”のロマンに係われるのは、“正史”の闇を透かし見んとする意志が、「夜の夢こそまこと」の精神に通じたものであるときなのだろう。


うまや怪談 (神田紅梅亭寄席物帳) (ミステリー・リーグ)

うまや怪談 (神田紅梅亭寄席物帳) (ミステリー・リーグ)



第3位:愛川晶『うまや怪談  神田紅梅亭寄席物帳』
 この「神田紅梅亭寄席物帳」は、三津田信三の刀城言耶ものと並ぶ、現在の本格の屈指のシリーズと断言してかまわないと思う。縛りのきつさは相当なものでしょう。こういう作品を、真の芸術ミステリというんですよ。




第4位:藤木稟『バチカン奇跡調査官 Truth2 サタンの裁き 』
 柳『ダブルジョーカー』、西澤『身代わり』と同点だけれども、なぜか世評からは無視されているので、あえてベストに入れた。柄刀のとバッティングしているのが気に入られないのかもしれないけれども、高質な作品であることは確かである。読み逃すことなかれ。


錯誤配置 アジア本格リーグ1

錯誤配置 アジア本格リーグ1



番外:藍シャウ『錯誤配置  アジア本格リーグ1』
 ついにアジアからの本格タイフーン到来。本作の冒頭にはゾクゾクしましたよ。本作の“本格”としての出来を超えるものは日本に数あれど、この冒頭の異様さを描ける“本格”作家たちが、今現在どれくらいいるか。ともあれ、“本格”をめぐる“状況”は面白くなってきている、と思いたい。