リック・シェンクマン『アメリカ人は嘆く われわれはどこまでバカか? 』(扶桑社)レビュー

アメリカ人は嘆く われわれはどこまでバカか?

アメリカ人は嘆く われわれはどこまでバカか?



 本書を読んでみて一番ショックだったのは、アメリカ人のバカさ加減、ではなく、 アメリカの政治的状況に日本も酷似している、というのでもなく、著者が嘆く“状況”が、われわれにとって、あまりにも凡庸な情景であった、ということで。ただ、本書でも触れられている通り、デモクラシーの進歩と発展、その輝かしい歴史において、しかし目をそらしてはいけない身もフタもない現実とは、それが闘争と血によって贖われたということよりも、数々の政治家・政治思想家に、民衆には政治なんてできないよね的なことを言われ続けたこと――それがシニカルな態度ではなく、知識人として極めて誠実な洞察によって懸念された――である。であるから、もしかしたら、大衆動員の技術が洗練されたことをもって、逆説的に民衆に“政治”の(タテマエ上の)決定権が委ねられたかもしれない――著者はそこまで言ってませんが。民衆全体の幸福と利益を、一部の特権的エリートが叶えるはずだった共産主義も人類の災厄であったことが判明して、おそらくは半永久的にデモクラシー=民主代議政体に「われわれ」は付き合っていくしかないわけです。著者は最後に、アメリカの結社的伝統の力強さに希望を見出し、それはそれで正解なわけですが、そしてわが国にも結社的存在がないわけではないのですが、結局、そこにアメリカほどの信頼的(信義的)意識があるかどうか、という問題になってくるんでしょう、生活互助会的意識はあるのでしょうが。