小池真理子『存在の美しい哀しみ』(文藝春秋)レビュー

存在の美しい哀しみ

存在の美しい哀しみ



 久しぶりに読んだ小池作品だったけれども、悲哀の提示の仕方の自然さはもとより、様々な関係性を、淡々としながらも優しく扱う手付きが、読み手に余計な忖度をさせぬほど巧みで、小説家ってのはいつまでも洗練されていくものなのだなあ、と感慨ひとしきり。家族という主題に、時代の宿命性を絡ませて、奥深い小説空間を構築した。