北沢栄『官僚利権』(実業之日本社)レビュー

官僚利権

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前著『亡国予算』刊行の後、政権交代が起きたものの、「霞が関の裏帳簿」からは、思ったほど大判小判をザクザク掘り出せないまま、首相交代。で、新しい総理大臣はアッケラカンと、増税超党派で議論しましょー自民党の消費税10%アップ案参考にしましょーと、選挙前にのたまう始末。現総理と官房長官は、「国家戦略」の名のつく閣僚ポストにおられたはずだが、「本来なら、国家戦略室が予算の組み替えの基本方針と『新シーリング』を設けるべきだった」との著者の難詰を、どう聞くのか。一般会計・特別会計合わせて、200兆あまりの国家予算の総組み換えが、シーリングなしで出来るのか。…………前著より、図版を多用して、「官僚利権」の内実を、視覚にも訴えることがかなうように構成されている。特別会計独立行政法人公益法人→ファミリー会社と、天下り受け入れと随意契約(もしくは「一者応札」)のバーターで、巨額のカネが流れていく構造が放置されたまま、特会の「統廃合」改革が、自民党政権時代行われたが、この偽装改革の音頭をとったのは、「財政再建」論者として知られる財政学者だ。特会の「統廃合」とは、実はただ単に、それまでの「会計」を各会計の下位カテゴリーである「勘定」に振り替えただけだった。このような策略を立案し追認し目眩まされた者たちが、デフレ不況下の「増税」音頭を踊っているのだ。著者の主張は、「埋蔵金」は、特会ではストックで47兆、フローで39兆、独法・公益法人で12兆、この100兆円近くで「経済危機・国民生活支援」用の基金をつくり、さらにこの基金に日銀が50兆円規模の融資をして、経済対策用の速効性のある資金を確保するとともに、日銀に基金を監督・調整する権限を大きく持たせることにより、特会のカネの出入りや運用等に目を光らせ、以て融資を回収するというプランである。カネがだぶついている分の負担が減らされるように特会の構造改革はなされるべきだろうが、今はそれを活用すべきだろう。アメリカ・EU発の次の大不況に直ちに備えるべきだ。毎年10兆円の「不用額」が特会から出ているというのに、なぜ自らの手を縛り、国民の生活を締め上げることをするのか。