本城雅人『嗤うエース』(幻冬舎)レビュー

嗤うエース

嗤うエース



前作『スカウト・デイズ』は、カリスマ・スカウトマンの造型が劇画的で、球界のウラ話を下敷きにしたと思われる興味深い小説にもかかわらず、今ひとつのれなかったが、本作は快作。八百長野球にかかわった天才投手の存在感もさることながら、彼を追う刑事と元チームメイトの記者、それに野球賭博を仕切るヤクザの脇役三者の陰影もくっきり浮かびあがり、また天才投手の家族のドラマもしっかり埋め込んで、小説に持ち重りを与えている。人間ドラマとサスペンスが分かちがたく結びついて、ページを繰る手がもどかしいほどの面白さ。